ここに現れた理由
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「ま、聞く前にこちらから答えるのが筋だよな。 俺の名前は鵜羽。 この学園に今日から通うただの生徒だ。隣にいるこの胡散臭い男が玉房。その隣にいるのが蘭。 そっちで犬抱えてるのが犬縁で、そこで口喧嘩していたのが、雀炎と龍流。どっちがどっちかは分かってるようだから特に説明しないが良いよな?」
「は、はい…」
涼音は大人しく頷いているが、その他の玉房や雀炎、龍流からの胡散臭くないだの、こいつと一緒に紹介するなやらブーイングが凄い。
鵜羽はそれらを聞き流し、続けるようだ。
「皆今日からこの学園に通う生徒で、これから入学式を迎えるところな訳なんだが、そこへ向かう途中で君が突然現れたというのがこちらの状況だ。 俺たちが聞きたいこととして、君は何者でどうしていきなり現れたのか、雀炎や龍流のことを何故知っているのか。 一応、玉房を『颯太』と呼んだ理由も合わせて聞いておこうか」
鵜羽が話している間も外野が騒がしく、声が聞こえにくかったのだが、こんな風に言っているように聞こえた。
彼らから離れてる所から除いているため、聞くにも限度があるな。
「えっと…私は、明、と申します。 私はさっきまで幼馴染みの颯太と一緒にもう一人の幼馴染みの命日に合わせてお墓参りに行こうとしていた所を見知らぬ人に背中から刺され、この世を去ったと思ったんです。そしたら何故かここに居たのが、私の今の状況です」
私のお墓参りに颯太と行く途中に刺されたのか。
一体誰が何のために刺したというのだ。
涼音は人に疎まれるような人物では決してない。
だとしたら無差別か。
どちらにせよ、許せるものではない。
「雀炎、さんと龍流、さんに関しては私がさっきまでいた所で2人をお見かけしたことがありましたので、思わず呼んでしまいました。玉房、さんを『颯太』と呼んだ理由は幼馴染みの『颯太』とあまりにもそっくりだったもので」
「ふぅん…ねぇ、龍流。 邪眼って使えたよね? 彼女が嘘言ってないか見てくれない?」
途中から頬杖をつきながら話を聞いていた玉房は、斜め後ろに立っていた龍流に声を掛けると、龍流は面倒そうな表情を浮かべた後に溜め息を吐き、手から小さな青い龍を出した。
「龍流様、どうされた?」
「悪いがこの女が本当のことを言っているのか確認してくれないか」
「私は蛇ほどの邪眼はありませぬが、よろしいですか?」
「かまわない、頼む」
「御意」
そう言うと青い龍は垂直に天へ向かって行ったかと思うと涼音の頭上をぐるぐる回り始めて、しばらくしてから龍流の元へと戻った。
その間ずっと涼音の顔面は青ざめており、見ていて可哀想なくらいだ。
涼音としては、雀炎と龍流の情報を濁したのがバレると思っているのだろう。
「龍流様、分かりました。 この者ですが、嘘はついておりません」
「そうか、ありがとう。 だ、そうだが?」
青い龍を手元に戻し、龍流は玉房へと声を掛ければ、玉房はうんうんと頷きながら立ち上がった。
「流石は龍流様。 これで彼女が嘘を言ってないことが分かったね」
「茶化すな。 というか、邪眼くらい玉房なら使えるだろう」
「ほら俺ってひ弱だから。 力使うと倒れちゃうからさ」
「嘘つけ」
玉房と龍流が話している間、涼音はホッとしたようだ。
同様に見てるこっちもホッと息を吐いた。
殺された後もこんな所で怖い思いをさせるなんて可哀想でならない。
「それじゃあ、君も何故ここに現れたのか分かっていないのか」
「はい」
鵜羽は腕を組ながら眉間に皺を寄せ、頭を悩ませ始めた。