ずっとここにいてくれるのか?
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颯太がシャワーから出てくるまで、心を無にすることで精いっぱいでその他のことなど考えられていなかった。
目が合うのが嫌で目だけは瞑っていたが、狸寝入りがバレるのではないかとヒヤヒヤする。
頼むから私は気にせず寝てくれ、と思いながらじっとしていると何故か足元のベッドが沈む。
あ、あれ、もしかしてこっちで寝るのか。
そうだよな、颯太のベッドだもんな。
いや、だからって同じベッドに寝るか普通。
「………」
私が内心動揺していることに気付いたのか気付いていないのか分からないが、颯太が何の前触れもなく私の頬に触れてきた。
「?!」
思わず驚いて目を開けてしまえば、私の顔を覗き込んでいた颯太と目が合った。
いつも見えていた目と髪で普段隠されている目が見え、マスクもつけていない。
前は一度としてしっかりと見たことがなかった素顔がそこにあった。
もともと女性に人気あったが、この素顔を知ったら余計に世の女性は喜びそうな顔だちをしていた。
「あぁ、ごめんね。君、本当に俺の知り合いにそっくりでつい」
ついで人の頬を触るのかこの男。
いくら顔や頭が良いからと言ってしていいことと悪いことがあるだろう。
「その左頬の傷といい、髪の長さといい、雰囲気といい何もかもそっくり。まるで真央が還って来たみたいだ」
嬉しそうな悲しそうな表情で言う颯太に私は何も言い返せなかった。
私が『真央』であるなどと言えるわけがないし、違うとも言えなかった。
何か言おうにも言えず、目を反らすことしかできない。
「昔、俺の友達で『真央』っていう女の子がいてね、その子が君にそっくりなんだ。馬鹿なのに明るくて天真爛漫で、目立ちたがり屋で寂しそうな女の子だった。
思春期を迎えたあたりから大人しくなったんだけど、ある日階段から落ちそうになった俺を助けようとして一緒に階段から落ちて亡くなってしまったんだ。その子のお墓がさっき俺が行っていた所だよ」
やはりあれは私のお墓だったのか。
あんな夜中にまで来なくても良いのに。
それなら早く帰ってしっかりと体を休ませて欲しい。
「なぁ、碧」
反らしていた瞳を元に戻せば思いのほか傍にあった顔に驚いて引こうとするも枕が邪魔してこれ以上引けない。
「俺が困っていることを伝えなければずっとここにいてくれるのか?」




