眠れない夜
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颯太が私に頼み?
一体何を頼まれるのだと警戒していると、玉房が不機嫌丸出しで言った。
「却下。何で俺が頼んだのに碧に頼むの」
「何でもって言ったのはそっちだろ」
「こっちだって『俺たち以外のことで』って言ったろ?」
同じ顔が同じ口調で同じような不機嫌な顔をしているこの構図は一体。
鵜羽はもう口を挟むのも疲れたのか、死んだ目を彼らに向けている。
「なら何もない」
「えぇ、他にもあるでしょ。探し物を見つけて欲しいとかぁ」
「探してるものなんてない」
「えぇ、あるでしょ絶対」
またもや言い合いを始めた2人に、思わず欠伸が出てしまう。
先程まで緊張状態に入ったのがいっきに抜けたからか眠気が出てきたようだ。
鵜羽も壁に寄りかかりながら2人を見て欠伸をした。
この2人を他所に寝てしまおうか、と思っていると鵜羽が眠そうにしながら言った。
「なぁ、今日のところはここまでにして、明日起きてからまた話さないか?いつまでも話し声が聞こえていたら近所迷惑だろ」
「よし、それなら君、ここに泊めてくれ」
「は?!泊まるのかよ」
「こんな夜中に帰すのか君は」
「いやいやいや、図々しいにも程があるだろ」
「そうは言うが、君、彼女を夜空の下寝かせる気かい?」
「おい」
そんなときにだけ私を出すなと言いたかったのだが、颯太は何故か悩み始め、押し入れから夏掛布を取り出した。
「雑魚寝だぞ」
「いやぁ、君良い人だな!」
「調子の良い男だな、あんた」
「何か言ったか?」
「いや、何でも」
こうして颯太の家にお世話になることになったのだが、雑魚寝とはいえ男性3人の部屋に寝るのか。
気まずいが、この部屋しか寝れる部屋ないしな。
「ほら、碧はベッド使って良いぞ」
「あんたが言うな」
何故か玉房に言われ、ベッドに押し込まれた。
いや、部屋の主を追い出してベッドに寝るわけにはいないだろうと出ようとするも颯太に出なくて良いと言われてしまった。
「はぁ…シャワー浴びてくるから先寝ててくれ。部屋の中のものは触るなよ、絶対」
特に狐、と名指しをされたにも関わらず玉房は気にもとめず、渡された夏掛けを腹部に掛け床に座り込み寝る体制をとり始めていた。
それを呆れながら見つめ、颯太は着替えを持ってシャワーへ向かった。
「狐、これからどうする。本当に彼から困ってることを聞き出して対応するつもりか?」
玉房の隣に腰掛け、余った夏掛けを腹部に掛けた鵜羽がそう問いかける。
「聞き出すまでもないよ。一緒に居れば嫌でも分かるさ」
それだけ言うと完全に寝る体勢をとり始めたので鵜羽は何も言えなくなり、諦めてその横で寝ることにしたようだ。
私はこのまま呑気に寝るような気分ではなくなり、目が冴えてしまった。
いくら許可を得たからとはいえ、颯太の布団でぐぅすか寝れるほど強い心は持ち合わせていない。
向こうに帰ったらしっかり寝ようと心に決め、早く寝るためにもこの任務を出来るだけ早く終わらせなければと決意した。




