主人公の正体
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「ねぇ、犬縁さま。 この人嗅いだことのない匂いがするよ?」
いつの間にか足元にマロがおり、スカートやらセーラーの部分やらの匂いを嗅ぎまわっている。
すっかり忘れていたが、犬縁もその場にいた。
どこに居たのか分からなかったが、きっとさっきの様に陰に隠れて寝ていたに違いない。
「やめとけ、マロ。 めんどくさい予感がする」
マロを後ろから抱き上げ、頭を掻きながら後ろに下がる犬縁に雀炎が目を光らせた。
「あ、犬縁だ! マロ大きくなったな!」
「あ? あぁ…これでもまだまだ小さいがな」
よしよし、と犬縁に撫でられ腕の中に納まっているマロは笑っているように見える。
「雀炎に龍流。 犬縁って…」
その様子を見ていた明は、上体を起こして何やらぶつぶつ言い始めた。
「おい、雀炎。 そんな呑気なこと言ってる場合か。この女、何故だか知らないが俺とお前の名前を呼んだぞ」
「あ! そうだった! オレたち初めてのはずなのに何で名前知ってるんだ?!」
「えっ……」
明はあからさまにしまったという表情を見せた。
もしかしてこの明、私と同じ転生者の可能性が出てきたぞ。
「……この女、怪しすぎるだろ。 何もない空間から出てくるし」
「確かにな」
警戒心の強い龍流は完全に警戒し始め、それに同意を示すように鵜羽が頷いた。
あんな登場の仕方をした挙句、初めましてのタイミングで名前を呼んでしまったのは確かに不味かった。
もし本当に転生者だったとしたら、驚きすぎて思わず出てしまったのだと思えるが、それでも警戒心を高めるなという方が難しいだろう。
「あ、あの、私、その…」
顔面蒼白になりながら手を左右に振り始めた明は、近くで明を眺めていた玉房の姿を見た瞬間。
「そ、颯太?」
と言って目を見開いた。
その名前は幼馴染が好きだった男の名前だ。
まさか、その名前が出るということは。
「颯太? 俺の名前はどうやら知らないみたいだね」
しみじみと玉房は言っているが、私はそれどころではない。
あの明に転生した人物は私の幼馴染、涼音に違いない。
「そんな爽やかな名前なんて似合わないわね、玉房」
隣に並んで明の様子を観察していた蘭が呆れたようにそう言えば、明――に転生した涼音は口を両手で抑え始めた。
恐らく大好きだった玉房に会えて感激しているようだ。
「失礼だなぁ。 俺こんなに爽やか青年なのに」
「どこに爽やかさがあるのよ。 胡散臭さの間違えでしょう」
「何呑気にそこの2人も話してるんだ。 真面目に彼女から情報を聞き出した方が良いと俺は思うが?」
完全に鵜羽は呆れ果てた表情で玉房と蘭を見た後、涼音を見た。