戻れない
あれこれ考えながらスリーマンセルの組み合わせが発表されるのを待っていると、いつの間にか側に玉房が居て驚く。
「これからは座学じゃなくて任務みたいなのに取り組むんだよね」
何気なく隣に立ち、何気なく話しかけてくる。
まるで涼音が居た立ち位置に立つかのように。
もしかして負い目を関してそうしているのだろうか。
もしそうならそんなことする必要などないのに。
「…なぁ、玉房」
「ん?」
「無理してここに居なくて良いんだぞ。昔のように鵜羽と一緒に居て良い」
私がそう言うと何故か驚かれたようにも目を見開き、何度か瞬きを繰り返した後に目を細めた。
「……罪悪感がないわけじゃないし、俺が明さんの変わりになろうなんて考えちゃいないけど、何かね。ここに居なきゃいけない気がして」
何故そんな気がするのかは玉房は分かっていないようだ。
居たいなら居ても良いが、私と居てもつまらないだろうに。
「そうか。でも、戻りたければいつでも戻ると良い」
私はそう言いながら、担任が壁に貼ろうとしている組分けを見ようと壁に視線を向けた。
そんな私を玉房は横目で見てから壁へ視線を戻した。
「………戻れないよ」
小さくそう呟かれたのを私は聞き取れなかったかのように振る舞い貼られた表の中で自分の名前が何処にあるのかを探し始めた。