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主人公の登場シーン

それは攻略対象たちが校庭に揃ったときに起きた。

何もない空間から、人と思われる手や足、胴体、最後に顔が現れゆっくりと地面にそれは舞い降りてきた。

その人物の肩までつかないくらいの長さの黒髪は、舞い降りたときに受けた風で僅かに揺れていた。

瞳は閉じられており、以前見せて貰ったこのあるセーラー服を着用している。

あれはゲームの初めで主人公が着用していた制服だ。



もっと光が発生した所から幻想的に出てくるのかと思ったら、何もない空間から手足が出てくるとは思っていなかったな。

ゲームではきっと、もっとまともな演出で登場しているに違いない。


それにしても間に合って良かった。

あと少しで主人公の登場シーンらしきものに出くわすことなく入学式を迎える所だった。

別にそのまま迎えても良かったが、やはり気になったので来てしまった。

建物の影に隠れながら、その様子を伺うことにした。



「え、え、ええええ?! 何か降ってきた?!」



「うるさい、見れば分かる」



雀炎の声がした後に鬱陶しそうな龍流の声が聞こえ、その後に何故か。



「え、ちょっとこの子、腹部に怪我してるわ」



蘭の慌てた声が聞こえた。

え、主人公――明って登場したときに怪我なんてしてたのか。

何の怪我だろう。

怪我なんて幼馴染話していなかったけど。



「止血と回復するから離れて」



蘭はそう言うなり、主人公の腹部に手を当てた。

次の瞬間、明るい光がその部分に当たりプチプチという音とバチバチという音が交互に聞こえてきた。

何やっているんだろう、それにこの音は一体何だ。



「あれ、蘭だ。 いつの間に回復術なんて使えるようになったの。 凄いじゃん」



そこへフラフラとした足取りで玉房が近づいてきてはしゃがみ込み、その部分をじっと見始めた。



「これも修行のおかげよ。 それより久しぶりね、玉房。 何も変わったように見えないけど?」



「酷いな、これでもあの頃よりかは強くなって帰ってきたつもりなのに。 蘭がこれだけ成長して帰ってきたとなると雀炎も負けていられないね」



「お、オレだってちゃんと成長して帰ってきたよ!」



「あんなに驚いた声を出しておいてよく言う」



「何だと?!」



「はいはい、病人の前で騒がない。 蘭、どうだ? 塞がりそうか?」



攻略対象たちの会話に蘭が混じっている会話なのだが、テンポがよろしいことで。

鵜羽に関しては皆のお兄ちゃんみたいに感じられる。

雀炎と龍流は兄弟で、玉房がその友達のような立ち位置か。



「もう大丈夫よ、塞がったわ。 あとは目を覚ますだけなんだけど」



そう言いながら蘭が顔を覗き込むと、明の瞼が僅かに動き始めた。

どうやらそろそろ目を覚ますようだ。



「ん……あ、あれ私……」



「起きた!」



「一々大きい声を出すな、頭に響く」



明は視線を彷徨わせ、大きな声を上げた雀炎と頭を押さえている龍流の姿を見て目を見開いた。



「え、雀炎と龍流?! どういうこと? これって現実? それに私、さっき死んだはずなのに何で」



ん?

何だか明の反応がおかしいな。

何で初めて会う人物のはずなのに、雀炎と龍流の名前を知ってる?

それに『さっき死んだはずなのに』とはどういうことだ。

まるで私のように一度死んだかのようなセリフだ。

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