異世界での戦い
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辿り着いた場所はさっきまでいた所と大して風景は変わらないのだが、何だこの重苦しい空気は。
建物は壊れ、その周りにはいくつもの建物が並んでいるがさっきまで話し声などが聞こえていたのに全く聞こえてこない。
あの時と同様に他の人たちが存在しない空間なのだろう。
「なぁなぁ、龍流の父ちゃんて何か視えてたりすんの?」
「は? いきなり何だ」
当たりを見渡しながら雀炎が何となく思いついたように言った。
「だってさ、翆の髪のことことかよく知ってたよな」
「あぁ、あれか。視ようと思えば視れる、ただ実際に見えるものだけな」
「なるほど!すげぇ!」
つまり、見えない外鬼という人物は見ることができなかったというわけか。
「んなくだらねぇこと言ってないで構えとけ。 そろそろ出てくるぞ」
龍流は一点を睨みつけ、戦闘態勢に入る。
同様に犬縁も構え始めた。
どうやらお出ましのようなのだが、全く気配が分からないので彼らが構えている方角にいるのだろうなぁくらいにしか思えない。
そこに涼音も無事でいるのだろうか。
もし何かあったらあの男、絶対に許さない。
「あれ?折角出て行ったのに戻ってきたんですね。まぁ、あっちで暴れるよりこっちで暴れた方が邪魔者がはいらなくて都合が良いんですがね」
崩れた建物の瓦礫の隙間から外鬼は出ていたが、そこに涼音の姿はない。
一体どこへやったのだ。
「明を返せ!ついでにお前も捕まれ!」
「おい、雀炎。見えてねんだからいちいち前に出るな」
外鬼をまっすぐ指さすのと言いたいことを言ってくれるのはありがたいが、犬縁の言うように前に出過ぎない方が良い。
いつ見えない鎌が飛んでくるか分からないのだから。
「話してどうこうできる相手じゃねぇだろ。捕まえて吐かせるまでだ」
龍流はそう言うなり龍を腕から出し、印を結んだ。
「龍流さま、奴を捕まえればよろしいですか」
「あぁ。話せるレベルであればどんな状態でも構わない、生け捕りにしてくれ」
「仰せのままに」
龍は急上昇し、姿を消したかと思えば外鬼の頭上に降り立った。
次の瞬間、ぽつぽつという雨のようなものが頬に当たり始めたかと思うと大粒の雨が降り始め雷まで鳴り始めた。
轟音の音と共に落とされる雷は外鬼だけを狙って落ち続けているが、実態に当たっていないように見える。
もしかしてここにいるのは実態じゃないのか。
「実体じゃねぇな。ここはオレと雀炎で何とかしますで龍流と玉房さんは実体と明を辿ってください」
「え、大丈夫なの?犬縁」
「まぁ、何とか。死にはしませんので大丈夫ですって」
マロを抱きかかえた犬縁は何か策でもあるのかそう言うと、マロの額を人差し指でトンっと押した。
「『許可』してやるよ、マロ。ジャンボになって好きなだけ暴れて来い。あいつの動きはオレが止めてやるから」
次の瞬間、子犬だったマロが5m以上あるのではないかと思うほど大きな姿に変化した。
「やったぁ。久しぶりにこの姿になれたよ。好きなだけ暴れるぞぉ」
その姿でいつもの可愛らしい声が大きな口から聞こえてくるのが絵面と合わないのだが、周りが真剣な表情でそれを見ているので、下手に突っ込みを入れられる雰囲気ではない。
「あれ、マロがジャンボになってる?!それじゃあオレも、ぐっちゃん!お菓子倍にしてあげるから大暴れしてきて!」
肩に乗っけていた鳥にそういうも首を横に向け、嫌だと言い出した。
「疲れたから嫌だ」
「そこを何とか!友達も連れ去られて大変なんだってば。助けるためにも頼むよ!」
「お菓子10倍くれなきゃやだ」
「お菓子バイキング連れてってやるから!」
「仕方ないなぁ」
雀炎の鳥も巨大化し、龍流の龍が落としている雷と重ね合わせるように炎を口からは出し羽ばたいている翼で風を起こし始めた。
ここまでに龍と巨大犬と巨大鳥が現れているのだが、どんな話なんだこれは。
本当に元は乙女ゲームなのかと言いたい。
どこにもそんな要素はうかがえない。
「さて、ここで見てても仕方ないしここは犬縁と雀炎に任せて先を急ごうか」
そうだ、ゆっくりしている時間はない。
少しでも早く本体の確保と涼音を探し出さなければ。




