挑発
「さてと、2人のおかげで隙が出来たことだし蘭。2人の手当てをお願いできるかい?」
突然玉房がそう言うと、蘭の後ろに先ほどまで奥にいた2人が壁に寄りかかった状態で横たわっていた。
いつの間に瞬間移動させたんだ、玉房の野郎。
もしかして、探ろうと思えば簡単に探せたんじゃないのかこの男のこと。
そう思って横にいる玉房を見れば何故か微笑まれた。
何だ、そのすがすがしいほどの笑みは。
「なあに、翆。何か言いたそうだね」
「何でもねぇ」
どうせ聞いた所で素直に答えてくれないだろうから聞いても無駄だろう。
そうこうしている間に蘭は2人に駆け寄り治療を開始している。
涼音も駆け寄り、倒れそうになっている2人を支えていた。
私も行こうとすれば何故か玉房に止められた。
「はい、翆は俺から離れないでくれるかな」
「は?」
「あのね、今危ないの翆だからね。髪の毛だけで力をつけたってあの男は言ってんの。次は本体を手に入れたいと思うのが突然でしょ?」
「人を物みたいに言うな」
「だって事実なんだもん」
男がだもん、とか言うな、と言おうとしたとき、建物がガタガタと大きく揺れ始めた。
「さて、私の力を皆さんに見て貰い認めてもらいましょうじゃないですか。ついでに始末してあげますよ龍流」
そう言うと男は笑いながら姿を消した。
「姿を消しやがったか。姿が見えないってのが厄介だよな」
めんどくさい、と犬縁はそう言いながら先ほどと同じように印を結び始めた。
またあの男を追う為の印かと思いきや、蘭と鵜羽、影蛇を囲うようにシールドを張ったようだ。
「このままだと建物が壊れそうだね。外に出たいけど、出してくれるか分からないし、このまま蘭たちを移動させるのも大変だし参ったね」
「参ってるならもう少し参ったような感じで言えよ」
龍流にそう言われても玉房は笑っているだけで、困った様子がない。
「それよりほら、俺ってば守りたくもない翠を守らないといけないから、その他のことは皆でよろしく頼むよ」
「おい」
誰が守れと言ったと言いたかったのだが、次の瞬間あらゆる処から鎌が現れ各々が避け、私はまたもや玉房に抱えられていた。
「あぁ、折角翆の力を手に入れたのに姿を消すことと鎌を振りまわることしかできないとか可哀想だよね…これじゃあ、いつまで経っても龍流に叶うわけないよね」
まるで挑発するかのように玉房がそう言えば、建物の屋根が吹き飛び、壁にひびが入った。
「玉房さん。めんどくさいんで挑発しないでください」
「えぇ、事実なのに?」
そう言った次の瞬間。




