緊張感の無さ
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左目の部分だけに渦のような模様が描かれたお面を被った術者を見て雀炎と犬縁は息を呑んだように見えた。
もしかして誰が術者か分かったのだろうか。
「……あのお面ってさ、龍流の一族だよな?」
「だな」
恐る恐る言う雀炎に犬縁は重々しく頷いた。
私は知らなかったが、龍流と交流があるこの2人だからこそ分かったのだろう。
まさか身近にいた人物の一族だったとは。
もしかして龍流は気付いていたのだろうか。
「何故かは分からないが、とりあえず逃がさないように捕まえるか」
犬縁はそういうと肩を回し始め、印を結び始めた。
それを見た術者は何を思ったのか右手をこちらに翳し始める。
「よっし、オレも戦うぞ!」
そう言って駈け出そうとする雀炎に先ほどの鳥が嘴で襟足を掴んだ。
「お腹空いたよ!」
「うげぇあ?!」
思い切り首が締まり仰け反った雀炎だったが、次の瞬間、進もうとしていた所に大きな鎌のようなものが突き刺さっていた。
あのまま突き進んでいたら鎌の餌食になる所であった。
「お菓子は?!」
「この戦いが終わったらあげるってば!」
1人一匹は呑気にそんな会話をしているが、現状そんなゆとりのある状態ではない。
そもそも鎌に気付いているのかさえ危うい。
私は戦力にならないので2人の後ろで見守っていることしかできないので、戦力になれるはずの雀炎たちのやり取りにやきもきする。
「おい、遊んでないでどうにかしろ」
「遊んでないってば!ぐっちゃん頼むから今はもう少し頑張ってくれよ」
「仕方ないなぁ…お菓子2倍ね」
そう言うと鳥は急上昇し、術者に向かって再度炎を向けたがやはり意味がない。
まるでその場には実在しないかのようにすり抜ける。
術師は鳥に向かって手を掲げようとして、シロがその手に噛み付いた。
そのことにより術者の動きが止まったように見えた。
そこに犬縁が呪文のような言葉と共に頑丈な糸のようなもので術者をその場に縫い付けた。
「お、やった!」
「いや、まだだ」
雀炎と同じように喜んでいると、犬縁は印を結びながら眉間に皺を寄せている。
「……掴んでる感覚がねぇ」
「え?あんなに縫い留めるのに?」
ここにいるのは実態ではないということなのだろう。
一体本体はどこにいるというのだ。
そう思って周りを見渡そうと首を横へ向けた瞬間、何かに体を左側へ引き寄せられた。




