宝具
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「真央が亡くなってからは良いことがなかったかな。気持ち的には生きてるような死んでるような感じだったし。あっちの世界で死んでここに来たときは何が起きたのかは分からないし、よく分からない力を使い始めるしでもう何が何だか分からないことだらけだったけど、久しぶりに真央には会えたし、大好きだった玉房とも会えてイベントを生で味わるし今は最高に幸せよ」
「そうか…」
前の世界では今のような幸せはなかったのか。
颯太と一緒に居られてあのときはあのときで幸せだったと言うかと思っていたのに。
まぁ、今が幸せだと言うのならそれはそれで良いのか。
「突然どうしたの? そんなこと聞いてくるなんて」
「涼音が楽しそうだったからつい聞いてみたくなった」
ふふ、変なのと言いながら笑っている涼音と共に教室へ入ると、雀炎や犬縁からはお祝いなのかよく分からない励ましの言葉を貰い、蘭には素っ気ない態度を取られた。
後者に関してはいつも通りなので特に気にならないが、雀炎のこれからが大変だけど頑張ろうな、とはどういうことだろうか。
その後の犬縁の苦笑いも気になる。
何に対しての笑みなのだろうか。
玉房の姿はまだ教室内になく、鵜羽は少し遅れてやってきた。
「お、退院おめでとう。こっちもバタバタしてて面会に行けなくて悪かったな」
「いや、大丈夫だ。それより後で少し話を聞きたいのだが良いか?」
「あぁ」
それから暫くして玉房が現れたが、あの時と何ら代わり映えのない姿に何故かホッとした。
それにあの時より傷が薄くなっているようにも見える。
玉房は私の存在に気付いているのか気付いていても敢えて触れないのか分からないが、何の反応も示さなかった。
思えば、入院前からこんな態度だったかもしれない。
それならあまり気にしない方が良いか、と思い意識を別に向けることとした。
この後の事を考えるとしよう。
まず、力についてだが、もし使うとしてもこの怪我が治ってからでないと身体を壊してしまうだろう。
なので、今出来るのは現状把握と今後自分が出来ることをいかに探し出すかということ。
呑気なことを言ってられない状況かもしれないが、まずはそれからやっていこう。
気だけ急いでも意味などないのだから。
その日の放課後、皆が何やらバラバラと動き出し何処かへ向かい始めた頃、鵜羽と私は2人だけで雀炎の家の書庫へ向かった。
本当は涼音からも話を聞くつもりだったが、鵜羽が分かっている情報を全て伝えてくれるというので、涼音とは教室で別れた。
入室許可を得て中に入り、鵜羽は迷うことなくとある棚へと向かい一冊の本を手に私の元へと戻ってきた。
何も背表紙には書かれておらず、深緑色のカバーがついている薄汚れた本だった。
「この中に宝具のことが書かれていた」
中身としては、人間と神とが共存するために作られた宝具ひとつひとつの説明と五ヶ所に置かれた理由。
それを置くことでどういったことがもたらされ、それらがなくなるとどうなってしまうのかが書かれていたという。




