退院後
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退院時に出迎えてくれたのは母親だけであった。
まだ荷重をかけすぎたり無理な運動は控えるような指示は出ているが、日常生活での動きはある程度出来るようになっていた。
母親は心配そうな顔で私を見ていたが、私自身の頭の中は涼音たちに何かが起きたのではないのかということばかり浮かんでいた。
退院から2日目に学園に行くと、涼音は変わらぬ姿でいた。
その事にほっとしつつ、近寄って行く。
「明」
「あ、翠! ごめんね、面会も出迎えにも行けなくて」
「いや、大丈夫だけど何かあったのか?」
見たところ顔色も悪くないというか前より良くなっている気はするし、表情も明るくなったように見える。
「実はね、探し物がようやく2日前に見つけたの」
「え?! どこにあったんだ?」
「今まで探していた所だよ」
話している場所が昇降口のため特定できるワードを使わずに会話している。
そのため正確かは分からないが、恐らく本があったのは書庫。
「誰が見つけたんだ?」
「鵜羽君だよ」
どこでも役に立つな、鵜羽。
できる人は何をさせてもできる男のようだ。
「それからバタバタしてて、ごめんね。その前もいつからだったか忘れたけど、玉房君がいきなり探す人と探索する人の二手に分かれて進めていくって言い出して、それからは分担制になったから探すところが増えちゃって面会にも行けなくなっちゃったんだ」
「それは大丈夫だ。それより詳細は後ででも良いが教えてくれないか?」
「勿論!」
どうやら玉房は1人で突っ走ることはやめたようだ。
それは良かったのだが、こんなにも涼音が晴れやかな表情なのが気になる。
「なぁ、何か良いことあったか?」
「え? 分かる?」
「分かる」
分かっちゃうかぁ、と呟きながら涼音が両頬を染める姿に何となく嫌な予感がした。