誰も来なくなった
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俯いた玉房の表情は見えないが、もしかして私が言いたいことを言い過ぎて怒ったのだろうか。
怒った所で謝るつもりはさらさらないが。
それにしてもこの力、まさか無限ではなく有限だったと初めて知った。
私の事を思って言ったのではないにしろ、貴重な情報を得ることが出来たのは良かった。
それを踏まえて今後どうしていくのか考えなければならないな。
にしても、玉房。
涼音たちは知らなかったみたいだが、単独行動をしていたとは思わなかった。
誰かこの傷に気が付かなかったのだろうか。
まぁ、顔をかなり近付けないと分からないような傷だったしな。
でも、傷が出来たということは敵と遭遇しているというわけだ。
この間のような嫌な気配を私は感じられないが、僅かでも玉房は感知していたのだろう。
いくら瞬殺できる敵とはいえ、敵が多ければ、戦う期間が長ければ疲れも出てきて隙も出来やすくなるもんだ。
どうして頭の良いはずの玉房がそれに気が付かない。
いや、気が付いたとしても1人で何とかしようと思ったのだろうな。
「……ねぇ、話はそれだけなら帰って良いかな?」
やっと話し出したかと思えば、こちらに表情を見せないまま立ち上がり、あっという間に扉の方へ行って出ていってしまった。
まだ私、良いとも悪いとも答えてないのに。
別にもう話すようなこともなかったので帰ってもらって良かったが。
それにしても最後の方まで握られていた手のひら、大きな切り傷が一筋出来ていた。
まるで何かに斬られたか、それとも何かを握って出来上がったものか。
どちらにせよ、これで皆に協力を仰いで貰えれば玉房の負担も減るし、事ももしかすると進むかもしれない。
それから私が退院するまで、玉房の姿を見ることはなかった。
それは他のメンバーも同様で、面会に比較的多く来ていた涼音すら来なくなってしまったのだった。




