攻略対象2人目との遭遇
閲覧、ブックマークを誠にありがとうございます。
本日はここまでの更新ですが、明日も更新致しますのでよろしくお願いいたします。
それから数日後に2人とは離れ離れとなり、私は様々な出来事を乗り越え10年の月日が経った。
様々な出来事というのは、ここでは長くなるため割愛するが後々絶対に出てくるのでそのときに話させて欲しい。
そして、今、私の目の前には。
【清進学園】
と書かれた門がある。
ここがゲームの物語が始まる舞台であり、終わる場所でもある。
別名『神様になる者が通う学びの場』
見た目は昔ながらの建物で、古びた建物が3つ並んでいる。
確か明は入学式当日、急に校内に現れた所を攻略対象と呼ばれる5人が見つける所からスタートするらしい。
それがいつ起こるイベントか分からないので、とりあえず私はノロノロと校内を歩き、周りが楽し気にしている所を避けながら進みクラス表がある場所へと向かった。
クラス表は職員室前の壁に貼られているらしいのだが、職員室の場所が分からないので、人の流れに沿うように歩き始めた所、中庭にまだ幼い柴犬がいるのが見えた。
小熊のような顔に丸まった尻尾。
円らな瞳で中庭を彷徨っているように見える。
まさか、迷い込んだのか。
上履きのままだが見過ごすこともできず中庭を歩き、その犬に近付くと私の周りをウロウロし始めた。
「お前、飼い主どこだ?」
しゃがみ込んで話しかけてみると、犬は動きを止め私を見上げてきた。
「犬縁さま、寝てるの」
犬が喋った。
思わず目が点になってしまったが、ここはゲームの中だ。
何が起きても可笑しくないだろう。
それよりも『犬縁』さまと言ったか。
その名前は幼馴染から聞いたことがある。
基本面倒くさいのが苦手だけど、面倒見がよくて頼りになる男って言ってた。
「もうすぐ入学式なのに、突いても起きないの」
そう言いながら草むらに顔を突っ込み、何かを懸命に引っ張ろうと頑張っているのが見えるのだが、何分対象物が大きく引っ張れていない。
どれどれと覗いてみると、紫の髪を高い位置で一つにまとめた青年が自分の腕を枕にして寝ていた。
あのアヒル口、幼馴染が言っていた『犬縁』で間違いない。
「マロじゃダメなの。 ジャンボじゃないと」
マロ?
ジャンボ?
何だそれはと思いながら犬を見れば、今にも泣きそうな顔をしている。
これは代わりに叩き起こすなりした方が良さそうだ。
しゃがみ込みとりあえず肩を叩いてみるも、起きない。
こうなったら次の手をと思っていたら閉じていた目が開いた。
「何かマロが泣いてる気配がしてみりゃ、あんた誰だ」
「………私は翆、そこの犬が困ってるようだったからお前を起こそうとしただけだ」
犬縁さま!と言って抱き着く犬--マロに犬縁は眉を下げ、片手でマロを抱き抱え立ち上がった。
地面で寝ていたから制服が砂だらけであるのだが、気にならないのだろうか。
「悪かったな、助かったわ。 オレの名前は『犬縁』。 犬を司る一族の者だ。 めんどくさいことは嫌いだが、何かあったら言ってくれ。 今度礼はする。 じゃあな」
そう言って去って行ったが、どう見ても職員室の方へは行っていないのだがどこに行く気なのだろうか。
まぁ、気にしても仕方ない。
さっさとクラス表を見てクラスへ向かうことにしよう。