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ちゃんとお礼を言うんだよ、と涼音には言われたが、言いたくない。

あんな戦地に一人だけ行ってこいと言われたも同然なのに、何故助けてくれてありがとうなんざ言わなきゃならない。

もともとそういう環境を作り出したのはあの男だろうが。



「翆さん、力入れすぎです」



しまった、今はリハビリ中だった。

リハビリのスタッフの人にそう言われ、左手の力を緩める。

あと少しで持っていた棒を砕けさせる所だった。


私はあの後、1週間の絶対安静を言い渡された。

その間に担任から、あの日起こった出来事を話してほしいと言われ分かる範囲で伝えた。

学校帰りに書庫に行っていたとは言えず、皆で帰ろうとしていたと言ったが特に怪しまれもしなかった。

離床を許され、部屋の中や外を歩けるようになり、リハビリも介入するようになって少し腕が動かせるようになった気がする。

もともと腕は折れていない。

その先の肩を深く斬られていたのだ。

まだ動かすのに不便さはあるが、利き手ではなかったのが幸いだった。

このままいけばあと少しで退院できるだろう。


涼音の話ではまだ、あの犯人や宝具は見つかっておらず、学園は自習続きのようだ。

本の捜索に関しては、私以外のメンバー勢揃いでやっているらしい。

それでも宝具に関して書かれた本は見つかっていないという。

もしかしてあの書庫にはないのだろうか。

あとあるとしたら学園の図書館くらいしか本が置いてある場所など知らない。

でも、そんな機密が書かれた本を学生が読める図書館などに置くだろうか。

置くわけないな。

読むことによって好奇心が煽られ、実物を見に行ったりイタズラされそうだ。



「はい、今日のリハビリはここまでです」



「ありがとう、ございました」



もう今日のリハビリは終わりか。

もう少し肩動かしてみるか、と腕を上げようとしたときに部屋のドアが開き、入ってきた人物と目が合った。



「あれ、リハビリ終わったと思って来たんだけど?」



何故お前がここにいる?!



「まぁいいや。 やぁ、翆。元気そうで何よりだよ」



「何しに来た…」



警戒心丸出しの私に対して玉房は気にしたようもなく、ベッドの横にある丸椅子に座り出す。

因みに面会は涼音、雀炎、犬縁、母親以外来ていないので、玉房がここに来たのはこれが初めてだったりする。

涼音に言われてお礼を言うべきかと一瞬頭を過ったが、薄気味悪い笑みを浮かべてそうな目を見て言うのを撤回した。

むしろ殴ってやりたい、この男の顔。

お礼?

そんなのしません、私はこの男を殴りたくて目を覚ましたんだよ。



「何って面会に決まってるでしょ?あぁ、まさか翆があんな奴に簡単に負けるとは思ってなかったなぁ」



「私には気配を追う能力なんざ持ってない」



「えぇ? 翠だったら見えようが見えなかろうが周りのもの全部ぶっ壊しそうじゃない?」



そんな土地全体を破壊するような真似誰がするか。

まさか翠ならそうするだろうからって単独行動させたとでも言うのか。



「……私はそんなことしない」



「みたいだね。暴れた跡も特になかったし、無様にやられたようにしか見えなかったかな」



無様に負けた、か。

確かにあれは何もできずにただただやられているだけだった。

それは認めたくないが認めよう。

この男に言われることは非常に気に食わないがな。



「ねぇ、翆。俺はね、あの時5か所から違和感を感じたんだよ。それも宝具のある方向すべてから」

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