怪しい気配
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書庫に向かう途中にそれは起きた。
「何だ、これは…」
四方八方から何やら嫌な気配がしたのだ。
涼音は何が起きたのか分からず、周りを見渡しているがこれは私にも分かる。
何だこの胸に広がる重苦しい気配は。
「龍流、蘭は東の方角の宝具を見てきてくれ。雀と犬縁は西にある神社へ。そこに宝具がある。鵜羽は東南の方角の宝具を、俺と明さんで南西の方角の宝具を見てこよう」
「え、でもそんなところ行ったら学校関係者とかにバレるんじゃ」
突然の玉房の言葉に雀炎がそう言えば、龍流が重苦しく呟いた。
「何言ってやがる。 他の奴の気配なんざねぇだろうが」
「は?」
言われてみれば、今までしていた気配がなくなっている。
一体何が起こっているというのだ。
それより玉房の指示に私が含まれていないのだが、嫌がらせか。
「とりあえず、俺は一人で行ってくるがくれぐれも皆で気を付けるんだぞ」
鵜羽がそう言うと、玉房が待ってと言った。
「影蛇君の気配が近くでしたんだ。 鵜羽は影蛇君と合流して行ってきてね」
あっちにいるからと、東南側を指差している。
何と雑な説明なんだ。
鵜羽は慣れているからなのか何も言わずにそちらへ向かってしまった。
それで良いのか鵜羽。
「さて、他の皆も行った行った」
玉房に促され、指示された方へ皆が動き始めた時に涼音から腕を引かれた。
「翠、私と来る?」
「いや、私は…」
2人とは行かない方が言いと言おうとすれば、涼音は玉房に呼ばれた。
「ほら、1人だと危ないから行くよ」
いや、私が隣に居るのですが見えていないんですかね、あの男には。
「え、でも翠が」
「翠は大丈夫でしょ。 ほら、急がないと」
仕方ない、私はあの既に宝具が盗まれたとされる場所へ行ってみよう。
皆が同じ方向に行く必要はないのだから。
私を気にしながら向かう涼音に手を振り、私は山へと進んで行く。
そこはこの間と同じように何もなく、誰かいるような気配もない。
そういえば壊されたとされる祠とは何処にあったのだろうと思い、近辺を探していると左頬に痛みを感じて触ってみると血が付いていた。
どうやら何かで切れたようだ。
でも、何か切れるようなものでもあったか、と振り返ってみるも何もない。
もしかして、見えない何かがここにいるのか。
だとしたらまずい。
どこから何が来るのか分からないじゃないか。
左右をいくら見てもやはり何もなく、そうしている間にも頬や腕が切れている。
明らかに何か居るのに何も出来ない。
察知能力のある玉房ならまだしも私はそんな能力はない。
これではただただ攻撃を受けるだけだ。
何か手はないかと思うも気だけが焦り、何も出てこない。
「ぐっ?!」
左肩に痛みが生じ、痛みに思わず顔をしかめる。
とりあえずここは退散するしかない。
そう思って足を踏み出したのに貧血からか、その場に倒れこみ意識を失くした。




