帰り道
犬縁はマロと共にノロノロと帰って行ったのだが、残されたメンバーというか何というか。
「ねぇ、鵜羽。明さんのこと寮まで送ってあげてよ。どうせ同じ方向に家あるんだし」
この男の発言のせいというか。
このままこの男の言う通りにしていたら、私とこの男の2人っきりでしばらく帰らなくてはいけなくなる。
そんな空間耐えられるわけがない。
「明は私が送って行くから大丈夫だ」
そう言って涼音の手を引いて進もうとすれば、邪魔するかのように立ちふさがる玉房。
こいつ、本当に颯太そっくりだな。
颯太と私はよく言い合いの喧嘩をしていた。
私が嫌がるようなことを颯太がするから口論になっていたのだ。
まぁ、颯太からしてみたらただのおちょくりに過ぎなかったのだろうが。
「何言ってんの。 この状況で女の子2人で帰るとか危ないでしょ。それに翆は何かあったときにその子を守れるの?」
「……守って見せるさ」
たとえ何があったとしても、この男と2人きりになるのだけは嫌だからな。
この力でどう守れるのか知らないけど、やれるだけのことはやってみせるさ。
「ふぅん…… 無理だと思うけどね、俺は」
「何でこう険悪なムードを作るかね… 分かった、俺が2人を送っていくからそれで良いだろ?」
「え、俺1人で帰れって鵜羽は言うの?! 酷くない、それ」
「お前は1人でも大丈夫だろ」
「嫌だよ、それなら皆と一緒に行く!」
この男、本当に面倒くさいな。
颯太も面倒くさかったが、この玉房も面倒くさい。
何故こんな男を好きになったと言うんだ、私。
「だそうだが、2人はそれで良いか?」
呆れながら言う鵜羽に涼音は笑いながら首を縦に振っていた。
「えぇ。 お2人とも仲が良いんですね」
「親友だからね、俺たち」
「腐れ縁の間違えだろ」
こうして4人で帰ることになったのは良いが、私は一言も話さずに彼らから一歩離れ、玉房と涼音が並んで歩く姿を見続けた。




