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懐かしい笑顔

「翆さん、少し私とお話しませんか?」



にこやかに話す涼音に大人しく頷き、その後をついていけば中庭の影に出た。

こんな森林の多い場所、犬縁あたりが地面で寝て居そうだが今の所見当たらない。



「翆さんって山奥の一軒家に住まれてますよね? それでもって赤髪で青い瞳で周りから警戒されていて、とても明るく変人で有名。玉房が大好きで玉房が関わると更に凶変して、力の加減もつかずに周りに被害を加えだす始末。 明という女の子と玉房が良い関係になり始めると狂ったような人格が更に狂い始め学園を破滅へと向かわせる悪役令嬢」



「ま、まて。情報量が多すぎる」



涼音は後ろを振り返ったかと思えば、口を開いた。

開かれたと同時にノンブレスでいきなり翆の情報をベラベラと言われると誰が予想するだろう。

情報はありがたいがいきなりすぎて頭がついて行かない。

そんな中でも唯一分かったのは自分がなった翆という人物は主人公でもなくただのモブでもなく、まさかの悪役令嬢だったということだけだ。

そういえばこの感覚、懐かしいな。

昔の涼音のテンションが上がったときと似た状況だ。



「ふふ、だってわざとだもの。 久しぶりね、真央まお。10年ぶりかしら」



「え?」



今、久しぶりに昔の名前で呼ばれた気がするし、何かとんでもないことを言われた気もする。



「私が大切な幼馴染に気付かないわけないでしょう? 見た目がどれだけ変わっても私は真央だって気が付くんだから」



そう言った涼音の笑った顔が昔の鈴音の姿と重なって見えた気がした。

まさか本当に気付かれていたとは思わなかった。



「す、涼音…… もう怪我は大丈夫なのか? 刺した相手に思いたる人物かいないのか?」



「心配し過ぎよ。 私はもう大丈夫。 刺した相手は残念ながら分からなかったわ。それよりよく私が怪我していたことも刺されて死んだことも知ってるわね?」



「涼音が現れた所を隠れて見ていたときに聞いた」



「そうだったの。 確かにそんなシーンもあったわね」



「そんなシーン?」



涼音曰く、ゲームの中の翆も明の登場シーンを隠れた位置で盗み見ていたらしい。

その後は先ほどと同じように攻略対象と一緒にいたところへ学園長が訪れ、この学園への入学が決まりクラスへ行き自己紹介が開始され、翆が順番に回ってきたとき、学園長や攻略対象が隠していたことを暴露したらしい。

隠していたこと、それは明が≪人間≫であることである。

そこから攻略対象以外のクラスメイトからは力が倍増されることが判明されるまで避けられてしまったそう。

判明されてから、今までの態度が嘘だったかのように構い始めたとか。

それが面白くない翆は嘘か本当か分からない情報をまわし、明を孤立させようとするも攻略対象たちが庇い始め、皆、特に玉房が明を庇うため怒り狂った翆は力を暴走させ、学園事態を壊そうとし攻略対象に封印されたそう。



「真央が翆じゃそんなこと起きないだろうけどね」



「いや、でも、力の暴走は、その抑えられないというか」



そう、この翆が持っている力なのだが、物を破壊する力を持っていたりする。

他のキャラクターたちのような炎とか水とかそういったものでは全くない。

彼らはそれらを使いこなす修行に出るのがこの世界の普通らしいのだが、翆の場合、できるだけ力を使わない生活が修行となっていた。

最初は力に全くなれず、コップひとつ割らないのだって大変だった。

10年間過ごしているうちに何とか制御できるようにはなってきてはいるが、正直気を抜くと何が起こるか想像したくない。

そんな生活をしていたため、できるだけ人のいない空間で力の制御を行い、たまに人手の多い街に出ては制御できているのか確認をしていた。

その人手に関してだが、この赤髪、青い目を見ると皆が逃げて行くのだ。

何故逃げて行くのかというと、これに関しては前の翆のせいだったりする。

この翆、自分の気に食わないことがひとつあると力を使って物を破壊させ、皆を怯えさせるだけ怯えさせて最後には笑いながら立ち去って行く姿を周りの人たちはよく目撃していたらしい。

かと思えば、怖いものみたさに石を投げてくる子供がいたりと力の制御の為とはいえ人がいる所へ出ると大変な出来事ばかり起きていた。

主に前の翆のせいで。



「真央なら大丈夫だよ。 だって、真央は頑張り屋さんで本当は心優しい子だもの」



両手を掴まれ、下から覗き込むように微笑む涼音は姿が変わっても素敵なままだった。

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