ワン・ミクロン
新井卓は比較的な恵まれた家系の出身で幼少期から不自由なく過ごしていた。そして、本人にもそれなりの能力があり、望んだもののほとんどが叶った。望んだ成果、望んだ友人、望んだ恋人、ほぼ本人の望んだ通りであった。
しかし、元の世界ではわずかに気に食わないものがあった。自身より恵まれたものがあるということだ。それらと圧倒的な差がついていることに気付き元の世界を諦めた。
そして、偶然にもこの世界の支配人なることができたので、いずれはこの世界の戦争を勝ち抜きすべてを支配する手はずであった。
新井卓は開戦の前に過去を清算すべく黒妖精と結託して自分の過去を知る人間をこの世界に呼び寄せ全員を始末することとした。
その中の1人が天野虹である。新井卓はこの世界で得た権能生命創造の力で強力な生態兵器を生み出し葬る予定であった。
新井卓は即死級の猛毒を持つ巨大蠍を天野虹に差し向ける。高速に動く針が天野虹に突き立てられるがギリギリで躱される。それどころか天野虹に殴られた巨大蠍がバラバラに崩れさった。鋼鉄をはるかにしのぐ硬度の外骨格が脆くも崩れ去る姿を目の前にし、天野虹が新井卓にとってこの世界でわずかに気に食わないものになりえることを理解し驚嘆した。
「まさかお前に1ミクロンでも不快にさせられることがあるとは思わなかった。」