ベスト・セレクション
雨野虹はビルの一室から廊下出ると1体の合成獣に遭遇する。はじめ会った個体と比較すると両腕が発達しており、力には自信がありそうだ。
雨野虹は武器としてそのあたりに転がっていた棒切れを持ち構える。敵の速度に反応できるように強化魔法体感時間向上で100分の1秒を体感できるようになった。この真能は特に肉弾戦には貢献しないが寿命の消費がわずかなのでこの魔法を選んだ。
合成獣はその発達した両腕をこちらに向かって振り回してくる。
雨野虹は棒切れに魔力を込め勢いよく向かってくる拳を弾き返す。これらの行動は術師として魔力が固体に留まりやすいという性質を見抜いてのものであった。
目の前の人間が只者ではないことを悟った合成獣は大声で仲間を呼ぶ。
「こっからが難関ね。」
黒妖精はまるで試すような物言いである。今のところ味方ではあるようだが魔力を与えてくれる以外は助けてくれそうにない。
合成獣の数は圧倒的であったがここが建物の廊下ということもあって正面からくる敵をひたすら弾き返すだけで身を守れた。合成獣もさすがに力の差がわかってきたのか撤退していった。
「これで終わりか?」
雨野虹が安堵した瞬間、地響きがして柱や壁にヒビが入る。雨野虹さすがに危険に思い、近くの窓から外に出る。ただ、外に出るだけでは落ちてしまうので飛行魔法重力無視で空中を遊泳する。
外には建物より大きな合成獣の集合体がこの建物を押しつぶそうとしていた。
雨野虹はこれに対し、反射魔法因果応報を建物にかけると合成獣の集合体は四散し、崩れ落ちる。
「さすがは最適解の才能の持ち主ね。あなたを選んで正解だったみたい。」
黒妖精は感心したようであった。