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ライヤー・クライム
天野虹はどす黒い絶壁にたどり着く。黒子として通過した絶壁よりさらに禍々しいものとなっている。透視魔法過去視により、絶壁を読み取ろうとしたが頭痛がしたので途中で断念した。途方もない情報量であった。奴は黒妖精と名乗ったが本質的にはそれはごく一部に過ぎない。奴は願いのために何度も転生し、世界を転々としている。
何度も転生を行いやり直したが奴の願いは叶えられなかった。その代わり、その苦しみが魔力となり黒妖精の枠を超えた別の何かとなっていた。この世界の理が奴を抑え込んでいたがカケラを持つことで歯止めが利かなくなっていた。
天野虹は絶壁の闇に飲まれそうになる。後ずさりしながら破壊魔法素因子分解で絶壁を取り崩す。もう覚悟を決めていた。生半可な意思で抗える存在ではない。
もう、天野虹の視界を遮るものはなくなっていた。
目の前には数多の影人と奴が佇んでいた。