バックボーン・ボーイ
「あなたの名前は黒子。あなたの使命は主である私以外の支配人の抹殺。」
機械仕掛けの少年はそう名付けられた。
「マスター承知しました。」
黒子は青髪の少女に会釈をする。
「私は国境の防衛をしないといけないからあとは任せた。」
と言いながら少女は真っ黒い椅子に深々と座りボーっとしているようにしか見えない。
黒子は魔力を動力に動く高性能殺戮兵器である。機械仕掛けでありながら高度の知能と意思を持っている。黒子は嘘を見抜く能力はなかったが主たる少女が嘘をついているように思えた。
この国の国境は断崖絶壁で囲まれておりすぐさま隣国のものが侵入するとは思えない。ましては隣国はまだ発展途上の弱小国家である。
黒子は違和感を覚えながらも屋敷を後にし、目標となる国を目指し、進行を開始する。
この世界には12の国家が確認されており、それぞれにカケラをもった支配人がいる。支配人を倒せばその国は跡形もなく滅びる。
まず、肩慣らしに隣国のトゥルトゥクを襲撃することとした。
この国も特に広いわけではなく7日休まず歩けば端から端まで移動することができるがちょうど馬車が通りかかったので馬車に乗ることにする。馬車はそう大きくはなくせいぜい4人程度が乗れる大きさである。しかも屋根や椅子はなく、中にはこの国の住民たる影人が1人いるだけであった。
「あんた、見ない顔だな。」
影人は黒い体をくねらせながら話しかけてくる。
「俺は黒子、主の御使いだ。国境に向かってくれ。」
「あんたが例の。それはそれは。あんたにあえて光栄だよ。主様は全く人前に出で来ないからね。御使いさんに会えただけでも光栄だ。」
馬車は唸りながら国境に向けて走り出した。