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まわりまわって  作者: 菅マイク
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一章-6 背に腹はかえられず

 湖にいた漁師達は皆引き上げており、街の喧騒も次第に小さくなってきた。赤い水面は美しいが、見ていてもあまり心は晴れやかにならなかった。

 この時の俺の格好を見たら、人は笑うだろう。Tシャツの肩のあたりを石で引き裂いた、手製のタンクトップ。その上から、カーディガンの袖を首に巻きつけてマントのように飾りつけた。ジーパンも七部丈まで石で無理矢理引き裂いて、股側に一本長い切り込みをいれ、先がふくらむようにした。

 布を石で裂くのは重労働で、体力を非常に消耗してしまった。空腹もあり、立っているだけでも辛い。ただ、裾のほつれ具合などのボロボロに見せるクオリティは最高で、これなら溶け込める自信があった。

 服の加工をしながら考えていた作戦を、念入りに確認する。加熱せず食べられる果実や野菜を狙う。盗ったものは背中とジーパンの隙間に挟んで、カーディガンで隠す。ある程度の量が確保できたら、何食わぬ顔をして立ち去る。防犯システムもない、監視カメラだってないのだ、決して難しいことではない。

 もう少しマシなやり方はあったはずだった。これを現実として捉えるなら住民の一人くらいはスマホを持っているはずだ。自分の持っているスマホを見せつけて、相手のスマホを出させてネット翻訳すればよかった。だがこのときすでに、空腹で正常な判断は出来なくなっていた。

 なんでもいいから、早く何か口にしたかった。


「ふー、行くぞ」


 意味もなく、ボクサーのように2回跳ねてみてから街へ向かう。

 街にはまだ活気があった。昼には気づけなかったが、松明が街中に設置されており、大通りを明るく照らしていた。

 往来する人の数は減っているが、昼に来た頃よりあきらかに男の比率が高い。仕事が終わり食べ歩いているのかもしれない。やはり酒場のような場所には人が集まっている。バレないように、できる限り人混みを避け裏路地に入る。そこは全く人がいないわけでもなく、立ち小便をしている人や飲みすぎたのか寝ている人もいる。松明の明かりがほぼ入らないため、ここを照らす光は夕日だけだ。あまり長居しない方がいいと思い、足早に裏路地をぬけ、少し歩いたところで露店を見つけた。

 露店の近くで人が散らばって談笑しているため、死角をつくるのが困難に見えた。まだその時ではない。逃走経路を考えるため街中をぐるぐる歩き回っていると、気づけば松明の近くだけが明るい状態にまで、日は落ち込んでしまっていた。

 松明がない裏路地でも、まだギリギリ地面は見える。逃走経路も確認した。やるなら今だ。そう思い露店に近づくと、すでに片付けが始まっているのが見えた。ほとんどの露店は売り切れで店仕舞いをしていたが、一部の露店には果実やカブ、芋類もまだ並んでいた。

 ぐるぐると音を立てて、盗れ!と腹が言う。

 やろうと思えばやれるが、人が少なすぎて確実にバレる。走って逃げ切れる体力はない。

 この日は諦めるしかなかった。

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