第8話 目指すは構内完全掌握
本日2話目の投稿です。
シエナさんの手紙を漁っているうちに時間は過ぎて、お昼になりました。
「あ~、おしゃべりしてたらお腹減っちゃったなー」
「カイネさん、目的はおしゃべりじゃありませんよ?」
このカイネさん、何かと噂やおしゃべりが好きみたいで、会話の実に6割は彼女の発言でした。よくしゃべるなあと思いましたが、その一方で情報収集の面から考えると有能な人材でもあります。
「じゃあ、そろそろお昼ご飯にしようか」
シエナさんがそう言うと、カイネさんはやったーと立ち上がりました。
休日のため普段よりかは空いている食堂でお昼ご飯を食べた後、カイネさんはお兄さんと連絡を取るべく、寮管理室に向かっていきました。寮管理室には魔法による連絡用端末があるためです。
余談ですが、大昔はもっと簡単に連絡を取る方法があったらしいのですが、幻素が妨害をしてしまうため、今はもう使えないという話を聞いたことがあります。魔法が使えるようになった代わりに消えてしまった技術の代表格ですね。
カイネさんを待つ間、私とシエナさんは一足先に寮の裏の花壇へ来ています。
「昨日はちゃんと聞けなかったんですが、手紙はどの辺においてあったんですか?」
「私が面倒を見てるところ……、ここに置いてあったの」
そう言ってシエナさんは、ある花が咲く一画を指さしました。おそらく異国の花なのでしょう。見たことのない種類です。
とはいえ、別段変わった点のない、普通の花壇。
「このあたりの花壇は日当たりが良くないから、園芸をやる子は皆表の花壇を使ってるの。たぶん、今ここを使ってるのは私だけじゃないかな」
「どうしてシエナさんはわざわざここの花壇を使っているんですか?」
「日光があまり当たらない方がいい品種とかもあるから、そういうのを試してみたくなって。せっかく誰も使ってないんだし、ちょうどいいかなって思ったんだ」
「なるほど」
ひとまず分かったこととしては、ここには人はあまり来ないらしいということ。大きな音さえ出さなければ、何かしていて気が付かれることはなさそうです。
しかし、私は編入してきて日が浅く、敷地内についてはまだまだ素人。いずれは学園敷地内に抜け穴がないかなどの探索を考えていたのですが、いまのところ自由に動ける休日は自己鍛錬を優先していたため、まだ行っていませんでした。
そういうわけで知識不足である私は、花壇の寮の裏がどのようになっているのか、調べることにしました。シエナさんなど、一般学生はすでにこの学園に何年か在籍しているため、先輩からひそかに受け継いでいる抜け穴なんかありそうですけど、そのあたりはどうなのでしょうか。
私がうんうん考えていると、シエナさんがぽつりとつぶやきました。
「手紙の人、どんな人だったんだろう」
「どんな人だったらいいと思いますか?」
私的には夜な夜な(夜かどうかは知らない)手紙をバレずに置いていくただの不法侵入者か、はたまたいたずら好きの女子学生か、という発想しかありません。
ただ、これはシエナさんの望む返答ではない。
よって、質問に質問を返すことで乗り切ります。
「園芸に興味持ってくれて、お手紙をくれたわけだし……、植物とか土の話をする友達になれる人だったらいいな」
「そうだといいですね」
「うん」
寮の裏は、日当たりはよくなく、そこまで広い空間ではありません。建物の外壁と敷地の仕切りに挟まれています。そして仕切りに沿って、レンガで囲われた花壇があります。隅の方には小さな物置がありました。
物置は何に使われているのか聞いてみたところ、掃除用具や園芸用品が入っているのだそう。
ちょうどよいので柄の長いスコップを拝借することにしました。
端の方から仕切りをこんこんと軽くスコップで叩いていき、もろい箇所がないか調べます。なぜ、わざわざスコップを使うのかといえば、仕切りに直接花壇が接していて、花壇の土を踏まずに仕切りの横に立つのは不可能だからです。もし仮に土を踏まずに腕を伸ばして仕切りを叩こうとしても、腕の長さは足りません。
初日に聞いたとおり、寮が丈夫に作られているだけあって、仕切りもすぐに壊せるようなものではなさそうです。仕切りの高さを考えると単純な身体能力だけでも乗り越えることは可能ですが、不審者対策のためか、上には有刺鉄線が張られています。このぶんだと、魔法を使うか使わないかにかかわらず、侵入対策は他にも色々としてそうです。
しれっとスコップで仕切りを叩き始めた私を見て、シエナさんは、
「えええっと、何してるの、キーラさん……?」
と、困惑しています。
「どこかもろい箇所がないか、抜け道になるところを探しています。侵にゅ、手紙を送った手口がつかめれば、文通のお相手の正体の手がかりになるかもしれませんから」
「寮は古い建物だから秘密の経路があるって噂はあるけど……」
ほう、秘密の経路。
「どこかに公式ではない外部との連絡通路があるってことですね?」
「ごめんなさい、私はそんな噂話は詳しくないから、良くわからない。でもカイネさんならもしかしたら」
そう私たちが話していると、
「おーい、お待たせ―!」
カイネさんがタイミングよくやってきました。
噂をすればなんとやら、ですね。