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第1話 これが私の初登校

イオリ・モノル侯爵令嬢に決闘を申し込んだ時より前。


私が編入が決定してから初めて学園に来た時まで時間を戻します。


* * *


記念すべき登校初日、私はわくわくしていました。都は大部分が我が庭ですが、部外者以外立ち入り禁止である学園はまだ勢力圏内ではなかったのです。そのため、学内の敷地に入ったのは編入試験を含めて二度目でした。敷地は女子部と男子部に分かれていて、それぞれ本校舎があり、女子部の方にはもう使われていない旧校舎があります。

教師に誘導されて構内を歩いている途中、中庭のところで少し待っていてくれと言われました。

環境観察のためきょろきょろとしながらあっちへこっちへ視線を動かしていると、中庭の木の上に人がいるのが見えました。上流階級ばかりが通っているとされている学園で、このような奇行に走る学生がいるとは考えがたいのですが……。


気になったので木の下まで近づいてみると、にゃーにゃ―言っている女子学生がいました。

猫ではありません。人間です。

しかし彼女は頭部になぜかネコ科の耳、頬には細い三本の髭が生えていました。


近づく私に気が付いたのか彼女(?)は、間違いなくこちらに向かってにゃーにゃー言い始めます。

その奇怪な光景には思わず瞬きをしてどうしたらよいのか分かりません。


一旦状況を整理しましょう。


・彼女の外見は猫のようになっている

・彼女は登った木にしがみついている

・こちらに対して助けを求めるようににゃーにゃ―言っている


木から降りられなくなった子猫ムーブですね。


「もしかして降りられないんですか?それとも趣味ですか?」


彼女はさらににゃーにゃ―と強く言っています。

面倒臭いのでとりあえず下ろそうと思ったとき、ずるっと女子学生が降ってきました。とっさに得意の風魔法で支えようとしますが、なぜか効果がありません。同様により咄嗟によけられなかった私へとそのまま彼女は激突し、それで終わりかと思いきや彼女の質量攻撃は私をもってしても凄まじく、その場に大穴があいたのでした。


「ど、どうなってるんですか……?」


降ってきた少女はどうみても細すぎず太すぎず、といった体格です。

現に私は彼女の下敷きとなっていますが、通常の人の重さしか感じられません。


騒ぎを聞きつけたのか、わらわらと人が集まってきました。


「たいへん、中庭に大穴ができてるわ」


「またあの方の仕業かしら」


「これは比較的軽微な被害じゃない?」


「穴に落ちてるのはあの方と……下敷きになっている子は誰?」


などなど、学生たちが喋っているのが聞こえます。


猫耳ひげ付き謎の女子学生がスッと私の上から退きます。


顔をしっかり見ようとするといつの間にか猫耳ひげはなくなっており、その顔は特徴があるようなないような、とにかく印象に残りずらく、このまま人ごみに紛れたらどこにいるのか分からなくなる、そういった相貌でした。


「あなたは一体……」


私が彼女に話しかけた時に、中年女性の声が響き渡ります。


「また何の騒ぎですか⁉」


私が穴から這い出てくると、


「あなたは編入生の……」


そう言って、何かを探すように周囲を見渡します。その中年女性は私を途中まで誘導してくれた方とは別の教師のようでした。


「そうですか、彼女の被害にあってしまったのですね。」


「彼女?」


気が付くと、私を下敷きにした女子学生はどこにも居なくなっていました。

私に気が付かれずに気配を消して去るとは、なかなかの腕の者のようです。

来るべき権力掌握のためには乗り越えていかなくてはなりません。


「キーラさん、大丈夫ですか?一旦医務室へまいりましょう。私は学年主任のセリーヌと申します」


私が思考をめぐらせていると、学年主任と名乗ったセリーヌ先生は心配そうに声をかけてきました。

私は一見かわいい系守ってあげたい感じの美少女なので、心配されるのも無理はありません。


「いえ、私は問題ございません。無傷です」


しかし私はいずれ力、知、権力を手に入れる女。この程度ではびくともしないのです。

私の自信満々な顔にセリーヌ先生は、


「そ、そうですか……」


と若干引き気味に答えたのでした。


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