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幽霊屋敷なんて呼ばないで

作者: This is おぎっち

 初投稿作品になります。

 今回は短編小説です。長編小説の方はただいま調整中なので、お待ち頂ければと思います。


 まずはこの作品で、僕の表現に触れて頂ければと思います。


 どうぞお楽しみください。

「うぅ〜やっぱ噂通りのとこだな〜」


「薄気味悪いね」


「何お前、ビビってんの?」


「ん!んなわけねぇだろ!」


 また今日も人が来た。


 若い男女の集団って、なんで面白半分でここに来るんだろう。


「ここらじゃ有名な幽霊屋敷だからな〜、必ず出るんだって!ゆ・う・れ・い!」


「やめてよ健二くぅん」


 あらあら、女の子ったら男の子の腕に寄り添っちゃって。男の子ニヤニヤ隠しきれてないわよ〜。


「あー!そこイチャイチャするなー!離れろー!」


 キャハキャハと若い声は静かなこの場所にはよく響くのよ。


 男女の集団は雑に板を退けて家の中に入ってくる。


 玄関から入ってよね。


 彼らは土足で家の中を懐中電灯で照らし、気色悪いと一言。


「なんか、奥で音してね?あ!なんか動いてね?」


 1人の男の子が誰もいないキッチンを照らしてそう言った。よく居るのよね、自分見えてますよアピールする子。


「え?うそ!本当……かも!やだ〜怖〜い」


 何よ本当かもって。私なら真後ろにいるのに。


「いやいや、ほんとだって!マジ!見てみ?あっち!」


 あーあー近い近い距離が近いわよ。社会人になってそれやったらセクハラよ?


「え?え?何も見えな〜い。怖いからやめてよ〜」


「なんか居たんだってマジで!!」


 本当に何か居たの?やめてよ怖いじゃないの。


 キャッキャウフフの為に、若い子は心霊スポットによく訪れるみたいだけど、やめといた方が良いのにな〜。何人か憑いてきてたみたいだけど、外で世間話してるみたいね。


 まあ、入って来れないからだろうけど。


「うわ、あそこ見て」


 1人の男の子が廊下へ続く扉横の棚上を照らした。


「家族写真じゃね?もしかしてここに住んでたやつ?」


「えぇ……きも〜い」


 ……。


「他の家具はボロボロなのに、この写真だけ妙に綺麗だな」


 男の子は木の額縁に入った写真を手に取って、他の3人に見やすい位置にかざした。


 それを見た瞬間、今まで一言も喋らなかった女の子が気まずそうに口を開いた。


「……えと、その……その写真……は……やめた方がいい……かも」


 言葉を探るように。丁寧に彼女はそう言った。


 私の顔色を気遣ってくれたのかな。


「怖がって……るし……戻してくれない……かな」


「あ?何知ったような口聞いてんだよ。お前が勝手に付いてきたんだろ?何怖がって俺らに指図してんだよ」


 多分、この関係上いじめられてるのかな。


「いや……ごめんなさい……」


 可哀想。


「気色悪い写真」


 家族写真を持つ男の子は、軽蔑した目でその写真を見下ろす。


 そいつは、そのまま額縁から手を離した。


 私だけ笑顔の家族写真は、螺旋を描いて床に吸い込まれ、弾んだ拍子にヒビ割れる。


 事情を知らなかった私だけ楽しそうに写った写真は、現実を見るように割れた。


「さすがにやばいんじゃね?」


「大丈夫だろ、噂だけの大したことない幽霊屋敷だったな」


 勝手に入り込んでおいて。


「まあ、何もなかったしな」


 誰かも知らない赤の他人が、大切な思い出のこの場所を……。


「ええ!さっき何か居るって言ってたじゃん」


「え?あ、そうだっけ?えっへへ」


「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」


「どこ向いて誰に謝ってんだよ気色悪いな」


「ね……ねぇ、2階で音しなかった?」





ーーーーーー


「今日からここが、新しい我が家だ」


 お父さんは無理な笑顔で私にそう言った。


 お母さんは相変わらず無口だけど、私にとっては大切な家族。この人達といることが何よりの幸せだった。


 町から遠く離れた山道の外れにあるこの一軒家は、やけに静かで、空気が澄んでいて、お気に入りの場所。


 学校にも行かなくていいって言われて、私は家族全員と一緒に居れることが嬉しくてたまらなかった。


 お父さんも会社には行かなくなったし、お母さんもずっと家にいる。


「今日は何して遊ぶ?」


「お部屋に戻って、寝ていなさい」


「えー、つまんないよぉ」


 でも、お父さんもお母さんも、私とは遊んでくれなかった。


 私が居ないところで、お父さんとお母さんはいつも怒鳴りあってる。それが怖いから、お部屋で寝るのが嫌いなのに。


 私の前だと、無理な笑顔をつくる。


 でも、私は幸せ。


 家族全員で居れるから。




 日に日に痩せこけていったお父さんは、動かなくなった。


 お母さんもずっと、お庭で寝てる。


 私も何故か、手足が動かない。だけど幸せ。


 ずっと一緒に居れるから。




 突然動けるようになった私は、お父さんとお母さんを私の隣に寝かせた。


 安心する。


 でも、誰?


 確かに寝かせたのはお父さんとお母さんだった。


 日が経つにつれて、誰だかわからなくなっていく。怖い。


 唯一お父さんとお母さんの顔が見れるのは、この写真だけ。


 みんな一緒に居る写真。


 私は幸せだった。家族全員で居るこの写真があったから。


ーーーーーー





「2階から音?気のせいだろ?」


「でもぉ〜したんだもん〜」


「見に行ってみる?」


「どうせ何も無いよ、それより、この写真気味悪すぎる」


「え、なんで?」


「わからないか?」


「うん、最初っから気色悪いじゃん」


「いや、違うんだよ」


「何が?」


「よく見てみろ」


「どこを?見てるってば」


「顔だよ、真ん中のこいつの顔」


「ん〜……あれ?こんなに真顔だったっけ?」


「いや、落とす前は笑顔だった」


「は?そ、それこそ気のせいだよ」


「そう思いたいけどさ……」


「あれぇ〜?あの女の子はぁ〜?どこ行っちゃったのぉ?」


「あいつ!どこにも居ねえ!先帰りやがった!」


「俺らももう帰るか」


「えぇ〜探さなくていいのぉ?」


「ビビって先帰ったんだろ?大丈夫だよ、帰ろうぜ」


「ちょっと怖かったな!そうでもなかったけどよ!」


「アレ?ちょっと待って」


「え?嘘ぉ……」


「俺ら入ってきたのって、1階だよな……」


「2階……上がってないよな」


「なんで外にあの子いるのぉ?」


「おい!!何先に帰ってんだよ!!上がってこいよ!!」


「……」


「おい!無視かよ!!」


「どこキョロキョロしてんのぉ?ねぇ、無視ぃ?」


「……」


「調子乗んなよてめえ!!」


「……」


「もしかして、聞こえてないんじゃね?」


「はぁ?この距離で?」


「聞こえてないにしても、不自然だって……俺らを捜してるみたいじゃん……」


「ねぇ〜階段降りれないぃ〜」


「は?降りれないって何?」


「降りれないんだってばぁ〜」


「降りれる……何これ……」


「でしょぉ〜?降りても降りても元の場所に戻ってくる感覚でしょぉ〜?」


「もしかして、俺ら閉じ込められた?」


「は?そんな事……」


「……」


「やべえぞ……俺ら……」


 ふふっ。


「……どうすんだよ」


「……マジ最悪、家帰りたいんだけど」


 何を言ってるのかしら。


 今日からここが、新しい我が家よ。


 背の高い子がお父さんで、髪の毛うねうねしてる子がお母さんで、背の小さい子は……そうだ!お兄ちゃんにしよう!


 動かない家族より、動く家族の方が幸せだもんね。


「……ねえ!!!何この写真!!!ねえ!!!」


「は!?俺ら!?この女の子さっきの家族写真の!!」


「……満面の笑み……だな」


 新しい家族、今日から何して遊ぶ?


「そうだ、追いかけっこしよ?」

この作品は、現在執筆中(未投稿)の作品の合間に筆(指)を走らせたものになります。


気分転換に、特に何も考えずにスラスラと書けたことを覚えています。


短編小説ということで、読者の皆様が想像しやすく、推測しやすいよう、あえて地の文は少なくしてあります。


読み終えた後に、読者の皆様それぞれが違う捉え方をして頂くのも短編小説の良さかと思います。


ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。


いつか投稿する長編小説か、またまた投稿されるであろう短編小説の方でお会いしましょう。

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