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82反撃の狼煙



 強敵リリアンとの戦闘で次々と仲間がやられていく状況で幼馴染である氷華が来てくれた。

 氷華はリリアンに力負けしているが、リリアンに攻撃する事が出来ている。

 という事は、力のある俺と攻撃を当てる事の出来る氷華、俺達が協力すれば倒せるはずだ。

 そう。あの方法を使えば――。



 ▪️◇▪️◇▪️◇▪️



 氷華がリリアンに怯えている。

 地下鉄構内の床に体を倒した彼女は自身の頭を右手で押さえながら、リリアンを恐怖の目で見つめていた。


「な……なんなのよ、あなたの力は」


 震える声を抑えながら氷華は絞り出す。

 その目はまるで死神を見るような絶望に満ちていた。俺がこれまで生活してきた中で初めて見る瞳だ。

 まずい、早く助けに行かないと……。俺はこれまでリリアンと戦ってきて分かっている。

 あの化け物は相手が死ぬまで攻撃してくるんだ。

 だから、氷華に攻撃が当たらなかったという事は。


「あなた呼ばわりはないんじゃないの? 私にはリリアンって名前があるのよ」


 少女のように微笑むリリアン。

 彼女は人差し指を唇において、自らを可愛く見せようとしているようだ。

 死神のような力に幼女のような外見。それらのアンバランスさは不気味な違和感を漂わせる。


「ふふ。そんなに怯えなくていいのに」


 リリアンはクスッと微笑むと氷華の首元に右手を伸ばした。

 ゆっくり……ゆっくりと……ヘビがネズミを喰らうような醜い目つきで。

 対する氷華は恐怖で動けていない。その瞳にはリリアンの手が映る、絶望の死神の指が。


「氷華! 目を覚ませ!!」

【ドゴッ……】


 俺は、めいいっぱい床を蹴り上げて氷華の元へと向かった。限界までステータスを上げた俺だ。

 地下鉄の床はそれに耐えられずに穴が空くが、なんとか一蹴りで氷華の元までたどり着いた。


「蓮!?」

「一旦、離れるぞ」

「う、うん」


 リリアンに触れる事の出来ない俺は、氷華を抱きかかえて移動する事にしたんだ。

 氷華の奴、びっくりしていたよ。

 これまで散々氷華の方が上だったのに、まさか俺が氷華を助ける時が来るなんてな。

 思いもしなかった。



 距離を取るために後ろに下がった際に俺はそんな事を考えていた。

 視線をリリアンに移すと彼女は未だにニヤついている。いつでも俺達を仕留める事が出来る、そんな余裕さえ感じさせる。


「また、逃げるの? お兄ちゃんは強いけど、私に触れられないからね、ふふふ」

「何がおかしいんだ、もうさっきまでの俺とは違うぞ」

「ははは! お兄ちゃんてば、あたまおかしくなったのかな。何も変わってないじゃん……」

「いや、今の俺には氷華がいる」

「え? どういう事……蓮」


 抱きかかえた氷華は、不思議そうな顔をして俺を見つめている。

 それもそうだ。こんな事普通はしないからな。



 俺が氷華を見て笑っていると、リリアンはしびれを切らしたようだ。

 加速してこちらに向かってきた。


「もういいや。お兄ちゃんもお姉ちゃんも死んで」


 リリアンの本気の蹴りが俺達を襲う。でも、もうこの攻撃は効かないんだ。

 なぜなら――。



【ガキィン!!!】



 鉄と鉄がぶつかり合うような鈍い音が響く。

 リリアンの蹴りは止められたのだ。その足の先には氷華の剣があった。

 では氷華1人で止めたのか?という疑問が起きるだろう。

 この答えは否。

 俺は思ったんだ。

 俺に(キング)用の装備は装着できない、専用の装備はその職業を待つプレイヤーが装備して初めて効力を発揮する。

 なら……。


「なぜ、私の蹴りを受け止められる!?」


 驚きを表すリリアン。

 それとは対照的に氷華は穏やかな表情で俺を見つめていたよ。


「なるほどね。蓮が力を貸してくれるって意味だったんだ」


 氷華は自身の剣の柄部分を眺めてそう言った。

 その視線の先には俺の手がある。そう、俺の作戦というのは氷華の装備した剣に俺の力を加えるって事だ。

 つまり、二人羽織ってところかな。

 俺は氷華の顔を見てニコッとした表情を見せた後に、リリアンの方を向いて決意をあらわにした。


「氷華……ここからが反撃だ」


 と――。

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