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74 ケルベロス無双

 

 ――【ALL CHANGE(オール・チェンジ)……発動します】



「…………………」

『ガルルルル!!!』



 ケルベロスの(うめ)き声が響く……地下鉄構内。

 そこで、俺はスキルを発動したんだ……こいつらを倒して、帝都駅のこの出入り口を制圧する為にね。




 ■□■□■□■□




『ガルルルルルル……』

「そんなに腹減ってるのか?」



 ……カッ……カッ……カッ………。



 目の前にいるケルベロス達は、よだれを垂らしながら俺にゆっくりと近づいてくる。

 まるで、獲物(えもの)に襲いかかろうとするライオンのようだ。



 でも……なぜだろう。

 恐怖心を全く感じないんだ……最初にダンジョンへ入った時とは全然違う。

 むしろ……この力を試してみたいとさえ思っている。



「さて……拝見させて貰おうか……」



 そんな俺は、拳を握りしめてケルベロスの動きを注視していた。



 まぁ……さっき、スキルで防御値に100万ずつ移動させたから、攻撃されても問題ないんだけどね。

 でも一応……相手のステータスは見ておくよ。



 そう思ってケルベロスを凝視した。

 すると出てきたよ、ステータスが……。

 まぁ……こんなものか、って感じだったけど。



―――――――――――――――――――――――

 ●ケルベロス   Lv.30

 ○HP…『70000』

 ○状態…『通常』

 ○殺人カウント…『103』


 地獄に潜む番犬。3つの頭はそれぞれ独立しており、その牙は鉄より硬く……獲物の肉を喰い千切る。

―――――――――――――――――――――――



『ガルルルルルル』

「なるほどね……」



 俺は1匹のステータスを見終わると、深く深呼吸をした。



 スーーー……ハーーー………。




 思ったんだ……。



 ――これならすぐに倒せるって。





「いくぞ!ケルベロス!!」



 ベコッ!!!



 床のタイルが(へこ)む程の力で、俺は床を蹴り上げた。

 そして、一蹴りで手前のケルベロスに近づくと……そのままかケルベロスの右端の頭を殴ったんだ。



 スキル発動………。



【……ALL CHANGE(オール・チェンジ)発動します】

【HPの値を……10万ずつ攻撃値へ移動します】



「ふっ!!……」



 空中で体を回転させ、さらにスピードの乗った右拳がケルベロスの横顔にめり込んでいく。

 メリッッ!!!………………。



 よし。入ったな。

 ……じゃあ…………そのまま最後まで………振り抜く!!



 ヒュッッ…………ドゴォォォォォン!。




 スピードの乗った拳はその勢いのまま、ケルベロスを体ごと壁まで吹き飛ばした。



 スタッ……。



「え?……こんなに飛ぶものなのか?……」

『ガ……ルル……ル……』



 パラッ……。



 叩きつけられた壁は大きく(へこ)み、ケルベロスはそのすぐそばで倒れていた。

 そして、徐々に姿形が薄くなっていく……。



 ん?……もしかして……?



 俺は、消えゆくケルベロスのステータスを確認したんだ。



「やっぱり……こんなものか……」



 HPが0になっている。



―――――――――――――――――――――――

 ●ケルベロス   Lv.30

 ○HP…『0』

 ○状態…『通常』

 ○殺人カウント…『103』


 地獄に潜む番犬。3つの頭はそれぞれ独立しており、その牙は鉄より硬く……獲物の肉を喰い千切る。

―――――――――――――――――――――――



 スゥゥゥゥゥ……。



 俺は、殴ったケルベロスが完全に消え去る事を確認すると、目を前に向けて他の個体を見つめた。



「まずは……一体目……」

『ガルルルル!!!!』



 仲間が倒されたからだろうか。

 ケルベロス達は毛を逆立てて、こちらを威嚇してきている。

 今にも、一斉に襲いかかってきそうだ。



「仲間が殺されて……怒ってるのか? でもなぁ……お前ら、人を殺しすぎだ」

『ガルルルル!!!!』



 自衛官を殺したのか? 一般人を殺したのか? それは分からない。

 でも、さっきのケルベロス(やつ)は100人以上も殺してやがった。



 こっちは分かるんだよ。

 ステータスにある『殺人カウント』って項目でな。



「お前らは……ここで倒す!」

『ガルルルル!!!!!』



 俺が足に力を入れて、またダッシュしようとしたその時だった。

 階段から変な音が聞こえてきたんだ。

 階段を駆け下りるような、騒々しい音が。




 コツコツコツコツ!!!!



 ん?……何だこの音?……。



 俺達が先ほど使った階段から聞こえる、大きな足音……何人かで急いで駆け下りているのだと思う。



 でも……一体誰が……。



 コツコツコツコツ!!!



「石黒大将!! ここは制圧できていないんですよ!」

「総員!!! 直ちに配置に付け!!」

「「イエッサー!!!!!」」



 カチャッ……カチャッ……カチャ……。



 階段から降りてきたのは、7人程の自衛官達……彼らは、突然階段前に現れると、横一列に並んで銃口をこちらに向けてきた。



「少年!! 体を床につけてください!!!」



 その一団の中心にいた人物が、俺に向かって警告してきたんだ。



 え?え?え?………何が起こってる?……なんで自衛官達が降りてきているんだ?

 それに、石黒大将には警告しないのか?



 突然の出来事……わけがわからなかったが、こちらに向けられた銃口を見て、思わず体を床に伏せてしまった。




「打てエエエエエ!!」



 パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ!!!!



 1人の自衛官がそう叫ぶと、横一列に並んだ自衛官達が一斉に射撃を開始したんだ。

 物凄い銃声が響き渡る……鼓膜が破れそうだ。



 銃弾の弾幕が俺の上を過ぎていく。

 これだけ鉛玉を食らわせれば、もしくは……なんて思っていたが、全然ダメだ。



 キンッキンッキンッキンッキンッキン。




 銃弾はケルベロスの皮膚を貫通せずに、全て弾かれてゆく。



 ダメか……そんな攻撃じゃ……ケルベロス達(こいつら)は倒せない。




「逃げろ自衛官!! そいつらは今、機嫌が悪いんだ!」

『ガルルルルルル!!!』



 カッカッカッカッカッカッカッカッ!!



 銃弾の弾幕を物ともせず、ケルベロス数匹が自衛官達の元に走り出した。

 このままだと、あの自衛官達は全員死ぬだろう。



 くそッ!!!……。



 俺は降り注ぐ銃弾の中で立ち上がり、そのままケルベロス達を追いかけたんだ。

 ……ん? 銃弾の中なのに大丈夫なのかって?……もちろん大丈夫だ。俺は今、防御値が100万なんだからな。



 全く問題ない……けど、流石に銃撃は止めて欲しかったな。

 皮膚が銃弾を(はじ)くけどさ。やっぱり怖いんだ。



 ……でも、自衛官達は俺以上に怖かったんだろう。

 銃弾の効かない化け物達が、襲いかかっているんだから。



 その恐怖は見ていて分かったよ。

 自衛官達は、前を見ているというより迫り来るケルベロスしか見てなかったんだ。

 当然、俺の事なんか見ちゃいない。



 まぁ……そんな事はどうでもいいか。

 とりあえず、自衛官達に向かうケルベロスを倒さないとな。




『ガルルルルッ!!!』



 そのケルベロスのうち1匹が、1人の自衛官に嚙みつこうと空中を舞った。



 パパパパパパパパパパパパ!

 キンッキンッキンッキンッキンッ!



 自衛官は必死にケルベロスを撃っている……が、無意味だ。



 このままじゃ追い付けねぇ。

 こうなったら……。



ALL CHANGE(オール・チェンジ)発動します】

【HPの値から1000万ずつ攻撃力へ移動します……】



 ボゴッ!!……。



 俺が蹴り上げた床には穴が空き……殴ったケルベロスは拳が触れた瞬間に消滅する。

 その要領で、走っているケルベロスを1匹ずつ消していく。



 ボゴッ!!……ボゴッ!!………



 突然現れる大きな穴……そして、穴が出来る(たび)に消えていくケルベロス。

 結局、俺のいるエリアは穴だらけになってしまった。



 でも、まぁいいだろう。

 まだ数匹ほどケルベロスは残っているが……自衛官達を襲おうとしていたケルベロスは全部消したんだ。



 まぁ……自衛官に飛びついたケルベロスは、ギリギリだったけどね。

 あともう少しで、牙が自衛官の顔に突き刺さりそうだった。



「打ち方やめ!!!」



 異変に気付いた自衛官が、やっと銃撃を止めてくれたんだ。

 いや、急に目の前に男子高校生が現れたんだからな。

 止めるのは当然か。




「どうなっているんだ……こんな穴あったか……」

「化け物どもが……消えてる?……」



 襲ってきたケルベロスが消え、辺りが穴だらけになっている事を確認して、言葉を失う自衛官達。

 そんな中で最初に言葉を発したのは、俺に向かって警告してきた人物だった。




「……きっ……君は、(キング)だったのか?」



 震える声……。

 まるで、救世主でも現れたかのような表情だ。



 でも、すまないな……俺は(キング)じゃない。

 そんな良い職業じゃないんだ。



 これから何回でも言われるだろう……この質問に、俺は笑顔で答えた。




「………いいえ……俺の職業は………」



 ――【奴隷(スレイヴ)】です。


 と。


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