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59 奴隷と自信

 

 ダンジョン攻略部隊……俺は、自衛隊が募集している部隊に入ろうと受付に訪れた。



 火憐はケガが理由でもう帰ったけどね、それが良いのかもしれない。

 あんな危険な場所に、火憐を行かせるわけにはいかないから。



 そう決心を決めて俺は、受付の近くにいた自衛官に話しかけたんだ。

 その時だったよ。


 ――彼女に出会ったのは




 ■□■□




 彼女の名前は、蒲生(がもう)・グリーシャ……ロシア人らしい。

 この時は知らなかったけどね。



 いきなり、笑顔で自己紹介してきたからさ。出会いはよく覚えているんだ。




「私!グリーシャとイイマース!よろしくデース!」

「は……はぁ……」


「お兄さんもダンジョン攻略しに来たんデスカ?」

「………そうですね……」




 ものすごいハイテンションじゃないか……外国の人は、こんなんばっかなのか?……



 俺は、苦笑いをしながら応えたよ。早く受付を済ませなきゃならなかったしね。

 それにほら……俺達が話しかけた自衛官もこちらをジロジロと見ている。



 当たり前か、話しかけられたと思ったら違う人物と会話しているんだから。




「あの……グリーシャさん?」

「何デスカ?!!」


「早く受付しましょうよ!」

「Oh〜!!ジャパニーズはやっぱり真面目デスネ。私、生のジャパニーズを見るの初めてだからもっと会話したいデス!」



「生のジャパニーズって……そんなに日本語上手いなら、何回も日本に来てるんでしょ?」

「NO!!!日本語はアニメで学びました!!蒲生がもう、初来日デス☆――上司から、この部隊に参加すれば日本に滞在する金は出すと言われたのデス!」




 彼女はニッコリとした笑顔をし、ピースサインまでしてきた。

 本当に日本に来れて嬉しい……そんな感情が感じ取れる表情だ。



 彼女を見ているともう少し会話をしてもいいかなぁと思えてくるのだが、受付を早く済ませなければ……



 グリーシャさんには悪いけど俺は会話を中断して、先程からこちらを見ている自衛官に話しかけた。




「受付ってどうすれば良いんですか?」

「あぁ……君も応募者かね。この紙に名前と職業を書いてくれ」



「わかりました!!あと、もう一枚貰ってもいいですか?」

「友達と受けるのか?ほらよ、ペンも貸してやる。書き終わったら俺に渡してくれ。受付付近にいるからさ」



「ありがとうございます」




 俺は、自衛官に一礼すると急いで後ろを振り返ったよ。

 グリーシャさんとの会話を急に止めちゃったからね。



 そしたら案の定、彼女は悲しい目をしながら俺を見つめていた。




「ジャパニーズ……私の話、つまらなかったデスカ?」

「いや!そんな事ないですよ。それよりほら!応募用紙です」



「Oh……私、ジャパニーズやっぱり好きデス」

「あはは。お互い、選考頑張りましょうね!」



「頑張りマス!」

「あっ……書いたら俺が受付に出しときますよ。はいペン」



「ありがとうございマース!」




 彼女は、俺から紙とペンを受け取るとその場で急いで名前と職業を書いた。

 その紙をチラリと見ると、流石に字までは上手く書けないらしい。全てひらがなで書いてある。



 ん…なになに?……【職業】…まーしゃんと?………




「書けマシタ!!お願いしマス!」

「は…はい」




 彼女は、書き終わると元気よく俺に紙を渡してきた。



 けど……まーしゃんと、ってなんだっけ?




 俺は首を傾げながら自身の紙にも記入して、受付の自衛官の元へと向かった。



 そして紙を渡すとさ、応募者が少ない事もあって最初は感謝してくれるんだ。ありがとって。

 でも……自衛官は俺達の職業を見ると馬鹿にし始めたんだ。



「あの!書き終わりました」

「どうもありがとね。どれどれ【職業】商人(マーシャント)…と奴隷(スレイヴ)?……ふふ」



「どうしたんですか?どこか記入漏れでも……」

「いや。記入漏れじゃないんだけどさ。君達ほんとにいいの?死ぬよ?」



「はい?……」

「もうそろそろ発表されると思うんだけどさ。今からやるのは選考っていうより、実戦なんだよ」



「はぁ……」

「君はダンジョンに入った事が無さそうだから、分からないと思うけど、ダンジョンでは装備品が重要なんだ――だから今回は、早速ダンジョンに侵入してもらって装備品を探してもらう」



「自分達で、ですか?」

「もちろんさ。でも安心してくれ、こっちで応募者を3人1組の班に分けるからさ。――その為に職業を書いて貰ったんだ。戦力を均等にさせる為にね」



「………なら、大丈夫ですよ」

「何が大丈夫なんだ?君、奴隷(スレイヴ)なんだろ?」



「――俺は、ただの奴隷(スレイヴ)じゃありませんから」




 自衛官の疑念の瞳を、俺はジッと見つめていた。



 何でだろうな。自信が湧いてきたんだ……ダンジョンで神猫(ゴッド・キティ)を倒したのもあるけど、何よりも(キング)である鮫島に勝ったっていう事実。



 その事実が……俺の自信を支えていたんだ。







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