58 異国からの来訪者
俺と火憐はダンジョン攻略部隊へ参加する為に、集合場所として指定されているグラウンドに向かった。
そのグラウンドが一望できる位置に立った時……何よりも感じたことがあるんだ。
それは、集まった人数が思ったより少ないって事と、集まった人達の性別・年齢がバラバラだって事……中には外国人までいたんだ。
まぁ……当たり前だよな。
危険と言われているダンジョンを、攻略しろって言ってるんだから。
ここに集まっている人達は、相当な変人か?………はたまた大きな志を持っているか?……自暴自棄になっているか?……これらの内のどれかだろう。
火憐は大きな志を持っている人に分類されるんだろうけど、俺は……何だろうな。
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ダンジョン攻略部隊の参加希望者はグラウンドの中央に集められているようだった。
緑色の軍服を着た自衛官数十人も、その周辺に立っている。
その方向に向かって、俺と火憐は歩いていた。人だけではなく戦車も何台か見える為、ダンジョン攻略部隊に関する集まり……と言う事はすぐに分かるからな。
「なぁ火憐。あの人達もダンジョン攻略部隊に参加するのかな?」
「そうなんじゃない?……じゃないと、高校のグラウンドにいる意味が分からないわ」
「はは。それもそうだな」
「でも……」
「ん?どうした?」
「どうやって選考するのかな〜と思ってね」
「ここに来たら、ダンジョン攻略に参加ってわけじゃないのか!」
「当たり前でしょ!選考、に参加するだけよ」
「選考か〜」
「当たり前でしょ!あんな危険な場所に、選考もせず突入させたら死人が出るわ」
「なるほど……それで、火憐はその選考が心配だと?」
「そうなの。もし、戦闘形式の選考だったら……私、今、戦えないし」
火憐は、そう言うと悲しげに下を向いた。以前ダンジョン内で負った傷が癒えてないのだ。
今も松葉杖をついて、やっと歩いている状態……そんな彼女を見ていると、悪いけどダンジョン攻略なんて、暫くは無理だと思う。
こんな体じゃ……化け物との戦闘なんてもたないよって。
そう思うと、俺は無意識に火憐の頭に手を乗せて微笑んだんだ。
「俺が、自衛隊の人みたいに、みんなを助けるからさ……火憐は暫く休んでいてくれ」
「うん…ありがと。でも、いつも助けられっぱなしだからさ……前にダンジョンで戦った時も」
「それはお互い様だよ。ダンジョンで戦ってる時にさ…火憐だけは、最後まで俺と戦ってくれた。―――あの優しさに、俺は救われたんだ」
「ななな…なんか照れるわね。っていうかダンジョンで化け物と戦った時は、私と蓮しかいなかったじゃない?」
「あぁ……そうだったね」
「――ん?―あっ!早く受付しなきゃ!!」
「受付?」
「ほら!戦車の前にテーブルがあるでしょ!多分あれよ!」
「分かった!!行ってくるよ」
「行ってらっしゃい!傷が治ったら私も参加するんだから
ね」
「ははは。それまでゆっくり傷を癒してくれ」
「分かったわ!また明日、ダンジョン攻略部隊の事を聞かせなさいよ」
「分かってるって」
俺は火憐と目を合わせた後、戦車前に走り出した。確かに受付のようだ。
戦車前のテーブルの上には何かを記入するような紙が置いてあった。
よし!これでひとまずダンジョン攻略部隊には、応募できそうだ。
さっき火憐にあんな事、言っちゃったし……頑張るか。
そんなふうに考えながら、俺はテーブルの近くにいた自衛官に話しかけた。
でも、俺以外に受付をしたかった人がいるらしい。
自衛官への質問が、ちょうどハモってしまった。
「あの!ダンジョン攻略部隊に応募したいんですけど!」
「ここが受付なのかしら?」
「「あっ!……」」
俺とした事が、周りを確認せずに質問をしてしまった。
謝ろうとハモってしまった声の方を向くと、そこには綺麗な外国人の女性がいた。
俺と同じくらいか少し高い目線だったので、170cmはある……のかな?
まぁそんな事どうでもいい、綺麗だったんだ。外国人特有のスラリとしたスタイル……俺は、謝るよりも湧き上がってくる疑問を抑えられなかった。
「あなたも、ダンジョン攻略部隊に応募するんですか?」
「そうデース!蒲生・グリーシャと言いマース!よろしくデース!!!」
ボブカットをした淡い青色の髪……透き通った白い肌……金色の目……。
日本人離れしたスタイルの女性は、俺を見つめながら元気に質問に答えてくれた。
でも、この時は思いもしなかったんだ。
まさか、この人と組んでダンジョンに突入する事になるなんて……
この人が、日本好きすぎてロシアから来た変人だったなんて……




