56 ダンジョンを目指す者達!
ダンフォールさんとの会談。
そこで、俺が知った事は化物達が街に現れるかもしれないって事だ。
化物達が街に出て人を襲う……そんな恐ろしい事が起きないように、俺はダンジョンへ再び挑戦する覚悟を決めた。
――自衛隊が募集している、ダンジョン攻略部隊に参加する事を。
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「では、さらばじゃ。少年よ」
ダンフォールさんの別れの言葉、それが終わると視界が白くぼやけてきた。
恐らく、俺はこの夢から醒めるんだろう。
そう思っていると目の前が真っ白になった。
そして、徐々に視界に色が戻ってくる。
いや、視界だけじゃない……体の感覚が戻ってきたみたいなんだ。右手から温もりを感じる。
さっきのぬるい紅茶なんかより、ずっと温かいものが俺の手を握っている……そんな気がした。
――意識が現実へと引き戻されていく。
「…ん……」
俺がゆっくり目を開けると、真っ白な天井が視界に入った。
どうやらここは教室じゃないみたいだ。
天井が見えるという事は、俺は仰向けになっていると言う事を意味している。
そう。俺はベッドに横たわっているのだ。
ボヤけている目を擦ってから俺は右を向いた。
右手の温もりの正体を確かめるために。
意識を完全に取り戻しても、やはりまだ暖かいんだ。
なんだろう?……誰が俺の手を握っているんだ?……
なんて疑問に思っていたんだ。
でもね。薄々気づいてはいたよ。誰が俺の手を握っているのか……
「やっぱり、お前か」
俺は思わず微笑んでしまった。
視線の先にいたのは、俺の手を握りながらスヤスヤと眠る火憐だったから。
「おーい……」
「スー……スー………」
俺が声をかけても気づかないし、握っている手を左右に動かしてもピクリともしない。
そんなスヤスヤと寝ている火憐を眺めていた。
「黙っていると綺麗なんだけどな……怒ると鬼みたいになるのに……」
「……わ…悪かったわね…」
「え?………」
「鬼みたいな顔で、悪かったわねぇえ!!」
俺はボソッと呟いたつもりだったのに。
どうやら彼女、最初から起きていたらしい。
俺をビックリさせようと寝たふりをしていたんだと。
「ごめん……火憐」
「全く……人の顔を鬼呼ばわりして」
「怒った時だけだから……」
「へぇ…じゃ、じゃあ。怒った時以外の顔は?」
「き……綺麗……かな?……」
「ふっ。まぁいいわ……保健室でこんなに寝て、頭が回ってないんでしょうし!」
言葉では許してくれているが、火憐は頰を膨らませながらそっぽを向いている。
どうやら、まだ少し怒っているようだ。
「俺、そんなに寝てた?」
「もう授業終わったわよ」
「結局、間に合わなかったか……」
「……ふふ………安心しなさい!!授業の内容は、私が教えてあげるわ」
落ち込んでいる俺を見た火憐の態度が変わった。
ニコニコしながら胸に手を当て、自信満々といった様子で話しかけてくる。
突然の彼女の変貌ぶりに、俺は驚いて言葉を発せなかった。
「……え………」
「遠慮しないで。明日にでも私の家にいらっしゃい!」
「ありがと。今日はなんかあるの?」
「えぇ、ちょっと用事がね……」
【ガララ……】
火憐との会話の途中……保健室の扉を開けて先生が入ってきた。
手にはバッグを持ち、白衣は着ていない。
どうやら、帰宅する途中に保健室へ寄ったらしい。
「おーい、お前ら〜。起きたならさっさと帰れよ。もうとっくに帰宅命令が出てるぞ」
「あっ。ごめんなさい先生!私達すぐに帰りますから」
「よし!気をつけて帰れよ」
そう言うと、先生は保健室を出て行った。
帰宅命令って何だろうか?また前みたいに早く帰れって事だと思うけど……
そう思って視線を窓に向けると、外はまだ明るい。昼過ぎくらいだろうか。
俺が外を眺めていると、何かを思い出したかのように火憐が話しかけてきた。
「あっ!そういえば蓮は行くの?」
「ん?……どこに?」
「ダンジョン攻略部隊の募集よ!!今日の午後、うちの高校のグラウンドで集合らしいの」
「今日の用事ってその事だったのか」
「その通りよ!で、どうする?行くの?」
「う〜ん。今すぐか……」
「行きましょうよ。自衛隊が私達を助けてくれたみたいに、私達も助ける側にまわるの」
「鮫島との戦闘で疲れが残ってるんだよな……」
「なにブツブツ言ってるのよ!!ほら!」
「え……ちょっ…」
火憐は俺の手を掴んで引っ張ってきた。
無理矢理にでも俺を連れて行くつもりなのだろう。
でも、まぁいいか。元々ダンジョン攻略部隊には応募するつもりだったんだ。
まさか、今日とは思わなかったけどね。
俺はすぐにベッドから出て、ダンジョン攻略部隊の集合場所……グラウンドへと向かった。




