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49 理想と現実

 


『現在・2ターン目前半、プレイヤー鮫島』

王の裁定(ジャッジメント)発動まで……後2ターン』



 俺は画面に表示される数字を見つめていた。その数字は、俺の余命宣告だ。



 鮫島にかけられた魔法…『王の裁定(ジャッジメント)』……この魔法のせいで、俺は3ターン目が終わればHPが0になるらしい。


 要するに死ぬって事だ。



 鮫島は俺の目の前でニヤニヤと顔を歪ませている。俺の力を、本当にイカサマだと信じているようだ。

 俺を指差して悪魔のように笑う。



「ふはは。攻撃値をイカサマしても、防御値まではイカサマできねぇだろ?最高の痛みを教えてやるよ」

「―――――――――」


「恐怖で言葉も出ねぇか……」

「―――違うよ――」


「じゃあ何だよ!またイカサマをしようってのか?」

「それも違う。俺は――呆れているんだよ――現実を受け入れられない鮫島君にね」


「また、意味分かんねえ事を言いやがって…」

「―――――――」



 俺、今どんな顔をしてるんだろうな。力の無いダラっとした表情かもしれない。

 鮫島の言い訳をする仕草を見て、俺、思ったんだ。




 ―――こんな奴に……虐められてきたのかって




 実際、鮫島と戦ってみて分かった事がある。

 鮫島は強くも何ともないんだ……精神が特に………。彼は、自分の理想の中でしか生きられない可哀想な奴なんだって、今初めて気づいたよ。


 これまで虐めてきた相手に敗北しそうな、そんな現実を受け入れられない鮫島。俺の事をイカサマ呼ばわりまでして……全く……意味分からない事を言ってるのはどっちだよ。



 俺は、冷ややかな視線で鮫島を見つめていた。いや、俺だけじゃない。クラスメイト達もだ、鮫島に対する目つきが変わっている。

 これまで雰囲気で鮫島の事を特別扱いしていた彼ら、彼女らにとって単なる恐怖の対象でしかないようだ。



 鮫島を称える声はもう無い。



 教室内の静けさがそれを物語る。本当に静かな空間…まるで戦闘など起こっていないかの様な……静寂。


 それを(さえぎ)るのは機械音。ゲームの進行を続ける。



〈プレイヤー鮫島の攻撃、『鉄の棺桶(アイアン・メイデン)』を発動します〉



 アイアン・メイデン………聞いた事がある。確か、中世ヨーロッパにおいて使われた拷問具。

 鉄の棺桶の内部に、無数の刃が備え付けられている………だっけな、確か。



 俺は何となくではあったが、これから何が起こるかを理解することが出来た。

 でも自然と冷静さを保っている。スキルで防御値を100万にしたからな。



 その冷静な目で鮫島を見ると、彼は興奮を抑えられない様だ。そんなに俺を串刺しにしたいんだろうか……悪魔の様な微笑みで語りかけてきた。



「ははははは。お前が悪いんだぞ?…痛みでショック死するなよ?」

「―――早くやれよ―」


「チッ!そういう態度が気に入らねぇんだよ!『鉄の棺桶(アイアン・メイデン)』!その不届き者を串刺しにしろ!!」



 鮫島が叫んだ。その瞬間―――大きな地響きと共に、鉄の棺桶が俺の背後に現れた。

 開かれた棺桶の内部には、無数の巨大な針が備え付けられている。ここに閉じ込められれば、身体中が穴だらけになる……そんな構造だ。



 そう思っていると、俺は鉄の棺桶に吸い込まれ、閉じ込められた。



【ガチャッ!!!】



 棺桶の閉まる音が教室内に響いた。鮫島の笑い声も響いている。あと………火憐の悲鳴も。

 俺は驚いたね。皆、俺が串刺しにされたって思い込んでるんだから……



【バキッバキッ!】



 俺は、棺桶の隙間を無理矢理こじ開けようとした。勿論、棺桶内の針は砕けて折れたよ。

 今の俺の皮膚は、鉄なんかじゃ貫けないから。



【バキッッ!】



 でも、力加減が難しいな。壊すつもりは無かったんだけど…鉄の棺桶を壊してしまった。

 ゆっくりと外に出ると、そこには驚きに満ちた鮫島の顔があったよ。



 流石の鮫島も気づいたみたいだ。俺に勝てないって……向こうからお願いしてきたよ。



 ―――もう戦いを止めないか?って。





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