45 Lv.と技
今、俺と鮫島が高校の教室で戦闘を行なっている。いや、俺の体を使って、ダンフォールさんと鮫島が戦っている……と言った方が正しいか。
俺は見ていただけだ。 ―――ダンフォールさんと、鮫島との戦いを。
俺にはまだ、力の加減が出来ないからな。鮫島を殺しかねないんだ。だから、ダンフォールさんに代わってもらったのに……
結局、鮫島を殺すつもりじゃないか。
【…ALL CHANGE……】
【………発動いたします……】
【…HPの値を、物理・魔法攻撃に……それぞれ100万ずつ移動させます】
俺は、目の前に現れる表示に驚いた。
物理と魔法攻撃値に100万ずつ移動するなんて、鮫島が即死するレベルじゃないか。
さっき鮫島から挑発されて、頭にくるのは分かるけどさ。殺すまでは、いかないんじゃないのかな……いや!そもそも最初から、いつもは優しい口調のダンフォールさんが、鮫島に対しては強い口調だった。
異世界で、『王』と因縁があったのかもしれない。鮫島の装備している『愚王シリーズ』を身に付けた人物とも戦ったって言ってたし………
でも今はそんな事関係ない。鮫島は卑怯者で、虐めっ子で、すぐ人を馬鹿にする愚かな奴だけど……クラスメイトである事は、確かなんだ。
単純に人を殺したくない……って理由もあるけどな。
俺は無視するダンフォールさんに向かって、訴え続けたよ。
―――落ち着いてくれって
(ダンフォールさん!そんなに攻撃値を高めたら……鮫島が、死んじゃいますよ!!)
(少年よ…黙って見とれ!)
やっと反応をしてくれたダンフォールさん。でも、やっぱり俺には、彼の行動を止められるだけの力は無い。
俺は人を殺してしまうのか……そう思った時、遂に機械音が進行を始めた。
〈プレイヤー『蓮』の攻撃、『奴隷の邪気』が発動されましたので実行します〉
奴隷の邪気?……俺は、機械の音声を聞いて驚いた。
俺に『技』なんて無かったはずなんだけど。『物理攻撃』のコマンドを押しても、その先は無かった。
なんで、ダンフォールさんは技が使えるんだ?…
(ダンフォールさん……『技』ってどうすれば使えるんですか?)
(あぁ、これか。お主もLv.を上げれば使えるようになるんじゃ)
(Lv.って…前に神猫を倒しても、Lv.が上がらなかったんですが……)
(神猫程度じゃあ。上がらんよ)
(え…でも、神猫ってダンジョンのボスですよね?……)
(そうじゃな。でもな少年よ。不幸な事に『奴隷』という職業がLv.を上げる為には、通常の職業の100倍程度の経験値が必要なんじゃよ……)
(なんで、そんな……)
(元々、奴隷は戦闘で期待なんかされておらんからな。そういう仕様になっとるんじゃろう)
(………………)
(そう落ち込むな。少年よ……Lv.9999のダンフォール様が、『技』を今から見せてやるからの)
(………………)
ダンフォールさんの力強い言葉には、安心感さえ覚える……そりゃ俺だって『技』を見てみたいよ。
でもさ、鮫島が死ぬかもしれないんだ。
そう思いながら、目を閉じて深呼吸をした。自分を冷静にする為にね……
そして、呼吸を整えてからゆっくりと目を開けると、言葉を失ったよ。
目の前にあったんだ。
―――ダンフォールさんのステータスが
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●基本ステータス
・名前…ブレイン・ダンフォール
・性別…男
・年齢…100歳
●能力ステータス
・Lv.9999
・職業→『奴隷』
・魔法攻撃→『1000000』
・物理攻撃→『1000000』
・魔法防御→『10』
・物理防御→『10』
・知力→『1』
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