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42 ジャッジメント

 


〈プレイヤー『鮫島』のターンを開始いたします〉



 機械音が、頭に響く。

 分かっているさ……どうせ、攻撃してくるんだろ?…鮫島は本気で俺を殺しにくると思うよ。その後は火憐も…


 ダンジョンから逃げ出した事を隠す為にな。どうせ、奴隷である俺や、魔道士の火憐の言葉を聞いたって誰も信用なんかしないのに……



 鮫島は俺達を消せば、過去を無かった事にできると思っているんじゃないのかな。

 全く……哀れな王様だ。過去を無かった事に、なんか出来ないのにさ。



 俺は鮫島に勝ったとしても、虐められた過去が無くなるなんて思わない。無くなるんじゃないんだ、乗り越えるんだよ!



 手を強く握りしめて、目を閉じる。



 スキル発動………




【…ALL CHANGE(オール・チェンジ)………】


【……発動します…】


【HP値を物理・魔法防御値にそれぞれ1000万ずつ移動させます……】




 念のためだ。いつもなら100万程度を移動させるだけだが、鮫島の悪魔のような表情を見ると、それだけでは不安になる。

 実際に今も、鮫島は俺の顔を見てニヤついていた。



「奴隷……お前は、なんで装備を持ってこなかったんだ?」

「装備は無い。ダンジョン内で探索をしなかったからな」


「ははは。探索しなかった……か。無駄足にならずに良かったなぁ」

「無駄足?……」


「本当に知らないみたいだな」

「……………」


「ダンジョンの横穴を探っていくとなぁ。色々な装備を見つけるんだけどよ、奴隷が装備できる武具は一個もなかったんだよ」

「何が言いたい?」


「要するにだ!奴隷には、装備できる武具は殆ど存在しないって事だよぉ」

「え…単純に、あのダンジョン内に無かっただけじゃ…」


「他の職業が、装備できる武具は大量に見つけたのにか?」

「………」



「可哀想になぁ。奴隷は能力だけじゃなくて、装備にも嫌われてるんだ!」



 鮫島は、自身の装備を俺に見せつけるように両手を前に出した。性格の悪い野郎だ。

 これでもか、と言うほど見せてくる。



 ―――でもな。



 装備なんか無くても、俺にはスキルや無限HPがあるんだよ。



 覚悟を決めた俺に対して、機械音が攻撃を告げた。



〈プレイヤー『鮫島』の攻撃、『王の裁定(ジャッジメント)』〉



 初めて聞く技だ。

 鮫島の方を見つめると、右手の掌を前に突き出して詠唱している。



「我は王なり……万物の運命を決め、命すらも自由に操る神である―――よって我は今、プレイヤー『蓮』の運命を決定した」



 鮫島が詠唱を始めると、手の周りが青く輝き出し【ゴゴゴ】という地響きが聞こえ始めた。

 俺の後方から聞こえる、その音は、地響きだけではなく【ギシギシ】といった木の軋む音が鳴っていた。



 なんだこの音は……俺は急いで振り向いたさ。何が出てきたんだろうって。

 最初は、どデカイ大砲やバリスタが出てきてると思ったんだ…でも、違った。

 鮫島は元々、俺に対してダメージを与えるつもりなんかなかったみたい……だって、俺の視線の先にあった物は。




 ―――巨大な首吊り台……だったんだから。





 驚いて声が出ない俺に、鮫島が笑いかけてきたよ。



「驚いているようだなぁ。これから何が起こるんだろって……どうせそんな事を考えてるんだろぉ?」

「……………」


「だんまりかよ。まぁいいさ、すぐに分かるからなぁ。機械音が説明をしてくれる」



 鮫島の言葉通り、すぐに機械音が説明をしてくれた。



〈『王の裁定(ジャッジメント)』が発動されましたので、『蓮』は『3ターン目』終了時にHPが0になります〉




 なんだよそれ?……そんなのアリかよ。

 一方的に、鮫島を倒せると思ったんだけどな。王の悪あがきってやつか……



 困惑する俺。そんな俺を見つめる鮫島の表情は、無邪気にほくそ笑んでいる。

 絶望している表情をもっと見せてくれ、と訴えるように。







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