41 虐めっ子と虐められっ子
投稿遅れました…ort
目の前に見えるのは、【DO】と【NO】というアルファベット。
これは、鮫島との戦闘―――vs Playerの選択を意味している。
プレイヤー同士が戦える事自体、衝撃的なのに……まさか、鮫島が相手なんてな。運命の巡り合わせとは恐ろしいものだと思ったよ。
奴隷vs王様、虐められっ子vs虐めっ子……この戦いは、どちらの意味を持つ戦いなのか分からない。
ただ一つ共通点がある。それは。互いが相容れない存在だという事だ。
俺は迷わず、【DO】を選択した。―――雄叫びをあげながら。
「さぁ……戦いの始まりだ!」
「ノリがいいじゃねえかぁ」
俺の挑発に、鮫島が乗る。互いのボルテージがMAXに近づいた……ちょうどその時に、機械音が戦いの火蓋を切ったのだ。
〈プレイヤー『鮫島』vsプレイヤー『蓮』の戦闘を開始いたします〉
久しぶりに聞くこの音は、ダンジョンでなくとも響くらしい。
しかしこの機械音が、聞こえているのは参加プレイヤーのみのようである。クラスメイト達は、まじまじと俺たちを見つめているだけで何も騒がない。
もし、機械音が突然聞こえたのなら、この反応は有り得ないだろう。
まぁ、そんな事はどうでもいい。俺が注目すべきは目の前にいる鮫島のみ……王のみ、なのだから。
鮫島の表情を見てみると、ニヤついた口元が悪魔を連想させる。王様の表情には思えない。
いや、王様というものは本来、悪魔みたいな性質が必要なのかもしれない。人を人とは思わない精神……それが無ければ務まらないのかもな。
俺は一度、鮫島の目を見つめた後に画面の表示を見た。
どうやら鮫島が先攻らしい。俺の目の前には、何も表示されていない。
鮫島の選択を待つ間、暇だったので、近くにいる火憐に話しかけた。でも…話しかけるんじゃなかったかな。
彼女、すごく怒ってたんだよ。なんで勝負を受けたんだって、机を手で叩きながらね。
「蓮!なんで、勝負なんか引き受けたのよ」
「鮫島と一度、戦ってみたかったんだ」
「さっきの装備ステータス見た?昨日、戦った神猫と同じくらい危険な状況じゃん!」
「大丈夫だって……俺あの時、神猫を倒したでしょ」
「そうだけどさ……心配よ…」
「まぁ、見ててって」
「だって!よく分からないのよ。なんで蓮が、あの時勝てたのかが」
「そういや、言ってなかったっけ?」
「何をよ」
「俺のスキルさ」
「聞いてないわ……便利なスキルでも持ってるの?」
「あぁ、すごい便利なスキルを持ってる」
「だから、安心しろってことね」
「そういう事!鮫島との戦闘が終わったら、詳しく説明するからさ」
「しょうがないわね」
「ありがと……」
俺は、火憐に微笑んでから、鮫島の方向へとゆっくりと顔を向けた。鮫島はさっきからニヤけたままだ。よほど自分の攻撃に自信があるのだろう。
でも、そういえば……鮫島は、俺のHPが無限だって事を知ってたよな。俺は一瞬、不安を覚えた。
なぜ、そんなに余裕そうな表情を見せているんだ。HPが無限に近いだけで、攻撃力も防御力も無いという所から、余裕が生まれているんだろうか。
いや……鮫島は、確実に勝てる奴としか戦わない臆病者だ。何か理由があるのだろう。
俺は、頭の中で何度も鮫島の思考を読もうとしたが、結局ダメだった。
そんな俺に向かって、鮫島は声をかける。火憐を会話に巻き込みながら。
「奴隷〜。お前、松尾と仲良くなったんだな」
「急になんの話だよ…」
「いや……松尾をまた、苦しめちゃうな〜ってさ」
「……………」
「どういう意味よ!鮫島!!」
「そう慌てるなって松尾。あの後、生きて帰って来たって事はさぁ、奴隷がお前を助けたんだろ?」
「そうよ。1人で逃げ出した、あなたとは違ってね!」
「ふははは。奴隷は、お前にとっては王子様みたいなもんだなぁ」
「何がおかしいのよ……」
「そんな王子様を殺したら、お前がどんな顔をするかって、楽しみでさぁ!ははははは」
「鮫島ぁ!」
「落ち着いてよ火憐…俺は死なないし、負けないから」
「う……うん…」
「王子様は、かっこいいなぁ……『俺は死なないし、負けないから』…って!お前はバカか!お前は、死ぬし負けるんだよぉ」
鮫島が俺達を挑発した………その時だった。
〈プレイヤー『鮫島』のターンを開始いたします〉




