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39 愚王のプライド

 


 ざわつく教室内。それを作り出したのは鮫島というヤンキーだ。蓮と火憐を見捨てて逃げ出した卑怯者……

 そんな彼がダンジョン内で化け物を打ち倒したとのたまわっているのだ。

 ちゃんちゃらおかしいではないか。



 蓮と火憐の表情は、怒りを通り越して呆れている。しかし、蓮の方は何か疑問に思ったようだ。机に頬杖をついている彼女に向かって質問をしている。



「火憐、どうして鮫島はあんなに自信を持っているんだ?昨日ダンジョンで全く歯がたたなかったじゃないか」

「私も最初はそう思ったんだけどね。『装備品』を手に入れたらしいわよ」


「氷華の鎧みたいなやつか…」

「そんな感じね。鮫島が装備していたのは鎧というより、王族が着ているような豪華なモノだったけど」


「戦闘用じゃないのかな?…」

「それは私にも分からないわね」



 2人して頭を(かし)げる。装備品について、全く知識が無いので仕方がない。

 氷華に聞いておくべきだったと…蓮は溜息をつく。

 その時、鮫島がいる方向から大きな声が聞こえた。



「その声は奴隷か?!」



 教室が、静まり返る。どうやら鮫島は蓮が登校してきた事に気付いたらしい。

 鮫島は人混みをかき分けて、蓮の視界に収まる位置まで出てきた。

 その姿は、頭の上に王冠、青色の鮮やかなマントを身に(まと)い、上も下も王族が着ているような艶のある布で作られ、指や首には装飾品が付けられていた。



 まるで王様のような格好に、蓮は動じずに言葉を続ける。



「鮫島君…よく学校にこれたね。そんな変な格好して」

「はぁ!生意気だぞ!奴隷のくせによぉ。まぁ、あの後生きて帰ってきた事は褒めてやるよ」


「そっちこそ、よく帰ってこれたね」

「あぁ…化け物に遭遇しかけてな。何回も死ぬかと思ったよ……でもな!偶然、身を隠すために入った横穴を進むと()()があったんだよぉ」



 鮫島は顔を前に突き出して、自らの装備品に親指を突き立ててニヤついている。

 対する蓮は、自慢げな表情を見て顔を伏せた。恐れているのではない、怒っているのだ。

 唇を震わせながら再び前を向く。



 自慢のつもりか。

 俺だけじゃなくて火憐まで見捨てた男が、よくそんな表情ができるな……



 蓮は、怒りの瞳を鮫島にぶつけた。憎んでいるような、恨んでいるような…赤く燃えたぎる瞳で。

 しかし、鮫島の方も黙ってはいない。

 自らに向けられた殺意にも近い感触に、自らのステータスを見せる事で威圧し返す。




「どうだ奴隷!これが俺の手に入れた力だぁ」




 ――――――――――――――――――――――――――

 ○装備ステータス

 ●全装備…愚王(ぐおう)シリーズ

 ●装備可能な職業…『(キング)

 ●必要なレベル…100Lv.


 ●防具

 ・頭→暴君の王冠⚫︎全攻撃値×3

 ・胴→暴君のマント⚫︎全攻撃値×3

 ・腕→暴君の腕当て⚫︎全攻撃値×3

 ・腰→暴君の腰当て⚫︎全攻撃値×3

 ・足→暴君の脚当て⚫︎全攻撃値×3


 ●武具

 ・両腕→暴君の腕輪●装着時にLv100とする。 ――――――――――――――――――――――――――



 鮫島が自身の胸に手を置いて、空中に映し出した装備ステータス。

 クラス中の生徒は固唾を呑んで、王が王たる所以を思い知らされる。

(キング)』にしか装備が許されない…チート級の装備を……



 もちろん、驚いている中には火憐も存在する。彼女は蓮の『スキル』の事を知らない。

 なので、鮫島の装備ステータスを見て驚くのだ。

 一体どれほどの攻撃力を有しているのかと……




 しかし……蓮だけは、それを見て笑いながら鮫島に微笑みかけた。皮肉たっぷりな言葉で…



「そんなに強くなったなら、なんで助けに戻って来なかったのさ……怖くて逃げたの?…」

「はぁ?………」



 2人は(にら)み合った。

 蓮の挑発に鮫島が乗ってきたのだ。蓮の怒りと鮫島の自尊心(プライド)がぶつかり合う。

 そんな火花散らすような視線のぶつかり合いに終止符を打ったのは、鮫島の発言だった。



「奴隷…お前、生意気だな。俺と戦えよ……どれだけ強いか教えてやるよぉ」

「………望むところだ…」




 鮫島の発言にも驚かされるが、何よりも驚愕したのは蓮の返答である。奴隷が王に勝つ事などあり得ない。

 クラス中の生徒は、ステータスから蓮の表情へと視線を移す。

 この男は、頭がおかしくなったのか?…それとも、勢いで勝負を引き受けてしまったのか?…様々な推測をクラスメイトが頭の中で繰り広げる。



 しかし、そんな事は無意味だ。



 蓮の表情から、読み取れるはずは無いのだから……

 彼の表情は恐怖で怯えるでもなく、後悔に顔を歪めているでもなく、ただ微笑(ほほえ)んでいるだけなのだ。








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