38 大ホラ吹き
ダンジョンから脱出した翌日。
この日から、俺の人生は様変わりした。例えば登校の日、幼馴染の氷華の前で異常な脚力を披露したり……というかおんぶして、高校の始業時間までになんとか間に合わせた。
現在、蓮は氷華の高校の前で少し立ち話をしている。もちろん内容は、蓮の身体能力についてだ。
彼女は、信じられない…といった表情で蓮に詰め寄っている。
「ちょっと、蓮!どうしたのよ、その脚力」
「あはは。物理攻撃値と防御値を少しいじったんだ、というか氷華も装備してたら物理防御値100万超えてたし、身体能力向上してるんじゃないの?…」
「いじる……?向上はしてると思うけど、装備品が重すぎてこんなに早く動くことは出来ないの!」
「そんなに重いんだ」
「てか、蓮……あんたは学校の時間いいの?…」
「あ……やばい…」
そう言うと蓮は、その異常な脚力を活かして自身の高校に向かって走って行った。
誰もいない校門にたどり着くと、急いで階段を駆け上がり自分のクラスへと向かう。流石に間に合わなかったのだ。
他のクラスでは、もう授業が始まっているようでチョークを黒板に叩きつける音が聞こえる。
氷華を高校まで、送るんじゃなかったかな……いや、もともと遅刻の原因を作ったのは俺か……
彼は、深いため息をつくと自分のクラスの、扉をゆっくりと開けて入っていく。
すると、その教室内には先生はまだ居らず、なぜか教室の隅に人が集まっていた。
教室の扉付近で、蓮は状況を理解できずに固まっている。
「ん?……今日って、なんかあったっけ……」
「特に何もないわよ。今、教室内がこうなっているのは彼のせいよ。全く……」
「あっ…火憐」
机に頬杖をついて、ダルそうに発言をするのは火憐である。
「彼?……」
「クラスの人達に囲まれて、分からないかしら。鮫島よ。あなたが倒した化け物、鮫島が倒した事にされてるわよ」
「え……」
さらに、表情が固まる蓮。
蓮達を裏切った鮫島が、学校に来ること自体が驚愕の事実なのにまさかクラスのみんなに嘘をついてまわるなんて…という表情を見せる彼だったが、その後の鮫島の発言でさらに驚く。
「みんな!俺は、ダンジョン討伐隊に参加するぜ」
鮫島の放った発言は、クラス中を沸かせた。もちろん蓮と火憐を除いて。




