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36 NEW ERA【新時代】

 


 ()かされる朝。

 幼馴染が外で待っている、と母親に怒鳴られ起きる朝。俺は、そんな日常を再び開始しようとしていた。



 リビングのソファから飛び起きた蓮は、急いで二階に駆け上がり自らの部屋に入る。制服に着替えるためだ。


 昨日のダンジョンの件もあるし、高校はズル休みをしてもいいと思っていたのに……そんな表情をしながら素早く制服に着替える。

 しかし、口元の口角は少し上がっていた。



 幼馴染と再び会える事――いや、そもそもこの場に生きている事が嬉しいのだろう。

 ダンジョン内では何度も絶望を、命の危険すらも感じたし、自身のスキルに気づく事が出来た。

 そういえば、と彼は胸に手を当てて自身のステータスを確認する。



 俺は【ALL CHANGE(オール・チェンジ)】っていうスキルで最強になったんだよな……多分。

 いや、多分じゃないな。ダンジョンのボスも俺が倒したんだし、()()は夢じゃな…え?…




 蓮の目に映し出されたステータスは、最強とは程遠いものだった。




 ――――――――――――――――――――――――――

 ●基本ステータス

 ・名前…市谷蓮

 ・性別…男

 ・年齢…17歳


 ●能力ステータス

 ・Lv.1

 ・職業→『奴隷(スレイヴ)

 ・魔法攻撃→『0』

 ・物理攻撃→『0』

 ・魔法防御→『10』

 ・物理防御→『10』

 ・知力→『1』

  ↓↓↓↓↓

――――――――――――――――――――――――――




 なんだよ。もしかして、昨日のダンジョン探索って丸々夢だったのか。

 今日、火憐が学校に来てから一度確認してみよう。



 蓮が悲しそうに顔を下に向けた、その時であった。

 老人の声が、頭に響いたのは。



(少年よ。何をそんなに落ち込んでいるのじゃ)

(………ダンフォールさんの声?って事は、昨日のスキルも現実なのか)


(まだ、寝ぼけておるのか少年よ。昨日の出来事は全て現実じゃ)

(で、でも、さっきステータスを見たら元に戻っていたんですけど)


(あぁ、戦闘が終わったり、自分の集中力が切れれば元の数値に戻るからな)

(そうなんですか!じゃあ本当に俺は、強くなれるんですね)


(う〜ん。少年、というよりも儂が強いんじゃけどな)

(ま、まぁ良かったです)



 少年の顔は、笑顔に戻った。

 人間というものは一つだけでも自信を持てる物、それさえあれば明るくなるものだ。

 勉強でもいい、スポーツでも、絵だっていい、少年の場合は、()()がチートスキルだったという事になる。



 しかし、笑顔でいるのは良い事なのかもしれないが、少年は忘れていないだろうか。幼馴染を、外で待たせている事に。



「蓮っ!いつまで氷華ちゃんを待たせるつもりなの!」

「……………」



 近所にも響くかのような大きな怒鳴り声、蓮は母親の声に対して何も答える事が出来なかった。

 代わりに―――今度は大きな足音で、階段を駆け下りる音が家中に広がる。



「ごめん!もう準備できたから!」



 上手く制服の上着も着ていない、いわば着替えの途中のような格好で彼は降りてきた。

 なにせ時間がない。母親になんと言われようが、登校途中で整えるつもりなのだ。

 階段から降りると、玄関とドアを開けたまま待ってくれている母親と氷華のもとに向かう。




「蓮!あんたみっともない格好して」

「登校途中で着替えるから!じゃ!」



 外に出ると、少し離れた所で氷華が待っていた。腰に手をつけて前かがみになるようにして少し睨んでいる。

 家を出るのが、遅すぎたのだ。

 この時間帯だと確実に遅刻は免れない。彼女は口をつぐんで言葉を向ける。



「蓮、遅すぎ。今日は駆け足で登校するよ」

「分かったよ……」



 今から走るのか。キツイ……

 正直、足が筋肉痛で走りたくはない。というよりも全身が痛いんだ。

 多分だけど、ダンジョン内での戦闘が響いているのかな…



 了承はしたものの、蓮の表情は曇っていた。走りたくても走れないのだ。

 氷華がダンジョン内で、どのような敵と対峙してきたのかは分からないが、今日まで残るダメージは負っていないようである。



 彼女は、少し駆け足で先に走ってしまった。

 それを悲しそうに見つめる蓮。

 そんな少年の頭の中で、また声が語りかけてくる。

 緊迫したような声ではなく、まるで呆れているかのような気の抜けた声で。



(少年よ、スキルを使うのじゃ……異世界と構造が同じなら物理攻撃・防御値を上げれば筋力に反映されるはず)

(ありがとう……ダンフォールさん)



 蓮も気になっていた。戦闘時ではなく日常で、もしスキルを発動したらどうなるのかと。

 彼は一度、深呼吸をしてから心の中で、こう唱えた。

(…スキル…発動……)




 そして、彼の目の前に()()表示が再び現れたのだ。




【…ALL CHANGE(オール・チェンジ)…発動……します…】





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