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その8 勇者少女と少年魔王2

「だから、だいじょうぶ」

 眠たげな目、読めない表情、淡々とした口調。

 でも、優しい声。

 そして、

「もう、なにも、こわくありませんよ」

 きゅっと、抱きしめられる。

「ね?」

 微かな胸の膨らみに、

「………………う」

「うん?」

「うわあああああああッ!」

 少年は少女を振り払った!

「ああっ! ちょっ、待っ、待ちなさい! どこへ行くと言うのですッ?」

 なんと!

 しょうねんは にげだした!

 突然のことで呆気にとられた少女は、一瞬ためらってしまった。

「その先はひとりでは危険ですよッ!」

 声を上げるが、少年の姿はすでに遠く、薄暗い森の奥に呑まれてしまった。



「ああああああああ……っ!」

 少年の感情が、奇声になって、垂れ流された。それでも、なりふり構わず森の中を駆け抜けていく。とにかく、あの場から離れたかった。

 しょうねんは おもった!

 ……な、な、ななな、なんということだ! 余は、余は、余は――、魔王なんだぞっ? それが! あんな! 人間の少女如きに!

「ぐぇぇッ!」

 ……誰を? 守る? 誰が? 守られる? 誰に? いや、あり得ん! 余は魔王で! あいつは勇者で! ……いや、本人は、頑なに認めていないようだったが、あいつは勇者だ! きっとそうだ! 間違いない! ったく、なんで素直に認めないのだ、あいつは! でなければ、あんな台詞、真顔で簡単に吐いたりしないだろ!

「ぎゃぁあッ!」

 ……ったく、なんで素直に認めないのだ、あいつは!(※二回目) てゆーか、何なの、あいつ、怖ぁッ! つーか、人をいきなり泉に突き落として悦に浸ったりしたかと思えば、急に優しさ全開で迫って来るし! なんなの! なんなの、もう! わからない! わからないよぉッ!

「ひでぶぅッ!」

 ……なにこれ? ナニコレ? どゆこと? どーゆーことッ? うううぅぅぅ……ッ! もぉヤだ恥ずかしい! めっちゃ、恥ずぃッ! 余は魔王のはずなのに、あいつは勇者っぽいけど、今の余の身体は人間子供で、あいつ……、あいつは少女なのに、余は、……余は布切れ一枚だけだしッ! 布! ぬのって、おぃぃぃぃ……ッ! 

「うああああああんッ!」

 少年は、森の中を……、泣きながら一気に駆け抜けました。

 布切れ一枚装備でw


※それでは、ここで、彼のステータスをもう一度、確認してみましょう!


――――――――――――――――――――

なまえ:しょうねん

しょくぎょう:まおう?

せいべつ:おとこ

レベル:3

HP:17

MP:25

――――――――――――――――――――

ちから:4

すばやさ:7

たいりょく:6

かしこさ:15

うんのよさ:-196

EX:56

――――――――――――――――――――

ぶきE:なし

からだE:ただのぬのきれ

たてE:なし

あたまE:なし

とくぎ:ツッコミ? おたけび笑

――――――――――――――――――――


「…………ほぇ?」


 たたたらん・たったったーん♪

 しょうねんは レベルが あがっていた!


「え? え? どゆことッ? ……え、上がって、るの、コレ? ……うそぉんッ?」

「――どうやら、走りながら知らぬ間にモンスターを薙ぎ倒していたのでしょう」

「ああ~、どおりで~」

 ……それで思考中に変な声が混ざっていたのか。あれ、全部モンスターの悲鳴だったのね。

 というか、それよりも、

「あ! き、貴様……ぁ!」

 少年魔王が振り返ると、その向こうには、勇者少女の姿。

 やはりすぐに追い駆けて来ていたようだった。

 そして少女は怒声を上げた。

「ですが! なぜ! ひとりで行ってしまったのですかッ? もしものことがあったら、どうするというのですかッ!」

「う……、いや、そ、それは、そのぉ、えっと、つまり……」

 気まずさは拭えないままだ。こんな自分を心配してくれているという事実もある。何はともあれ、だ。素直になれないのは、少年もまた、同じであった。

「だって……、余は魔王で……、なのに布切れ一枚で……、貴様は少女で……、でも勇者っぽいし……」

 少年が言い難そうに、ごにょごにょしていたが、遮るように少女が告げる。

「それに、そこはすでに結界の中。一体どぉやって侵入したと言うのですか?」

「…………はあっ?」

 そこでやっと気付いた。

 少年魔王と勇者少女の間には、大人の背丈ほどもある黒い火柱が何本も連なり柵となって広がっていたのだ。


 つづく!

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