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その7 勇者少女と少年魔王1

 ※ぜんかいまでのあらすじ。


 だとうまおうをめざす、ゆうしゃ(と、まわりによばれている)しょうじょが、もりでであった、きおくそうしつのしょうねんこそが、じつは! なんと! まおうだった!

 ――――のかッ?


 しょうねんは おもった!

 ――どうして、こうなった?

 魔王である自覚は、ある。はっきりと思い出した。だが、何故このような事態になっているかは、未だに解らない。思い出そうとすれば、鈍い痛みが頭に走る。

 自分は、魔王だ。余こそ、魔王なのだ。

 魔王――、魔物たちの長たる者、人間どもに支配されたこの地上世界を、我ら魔族のものにすべき生まれた存在……、

 いや、違う!

 余は、魔王だった。

 誰かと、何かを約束したことも、覚えている。それは大事な約束であったはずだ。

 そうだ、覚えている!

 約束は、最初から知っていたはずだ。その為に目覚めた。そんな気がしてならない。

 余は、魔王だったのだ。


 少年は再び勇者少女に告げた。

「……余は、魔王だ」

 過去形ではなかった。言い聞かすように、言葉に出したからだ。

 が、

「は? なんですって?」

 淡々と少女が返した。

「……だから、余が魔王なのだ」

「なにを、いっているのでしょう、このお子様は」

「お、おこッ? ……いや、だからぁ! 余は魔王なんだってば!」

「またまた、ご冗談を」

 あっはっは、と少女。

「ちょ、怖ぁッ! 無表情のまま声だけで笑うな!」

「あなたのような布切れ一枚の子供が、魔王なワケないでしょう」

「え? ぬの……? って、ちょ、まっ、待て待て待て待て!」 

「なんでしょうか?」

 しょうねんは おもった!

 ……そぉいえば、確かに、心なしか下半身がスースーするよぉな、いやでもそれは何度も泉に落とされて全身びしょ濡れのせいなのであって……、ああ、もう!

「あなたが子供でなければ、即・通・報! の、迷惑行為なのですよ?」

 ……ええええーッ!

「確認する! いま、確認するからぁッ!」

 しょうねんは ステータスを かくにんした!


――――――――――――――――――――

なまえ:しょうねん

しょくぎょう:まおう?

せいべつ:おとこ

レベル:1

HP:12

MP:5

――――――――――――――――――――

ちから:3

すばやさ:5

たいりょく:4

かしこさ:8

うんのよさ:-200

EX:0

――――――――――――――――――――

ぶきE:なし

からだE:ただのぬのきれ

たてE:なし

あたまE:なし

とくぎ:ツッコミ? おたけび笑

――――――――――――――――――――


「うおおおおおい! なんじゃこりゃああああッ!」

「あら、さっそくスキルを披露ですか?」

「違うよぉ! おい布! ぬのッ! ただの布切れってぇ! 服ですらないしーッ! あと、運の良さ、どゆことッ? マイナスって数値、ステータス上あり得ないだろぉッ!」

「おお、しかもツッコミと雄叫びの合体技とは! ただのお子様のくせにやりますね、あなた」

「どぉでもいいよ、ンなこたぁッ!」

 ……あと、【おたけび笑】って、どゆことーッ! どんなに叫んでも意味ないってことかッ?

 ほかにも つっこみどころは まんさいだ!

「わかりましたか? あなたのような脆弱な子供が、冗談でも魔王などを語るべきではないのです。さすがの私も笑えませんよ? しなないていどにきりきざんぢゃいますよ?」

「ええええー……」

 この勇者、なんか辛辣過ぎない?

 こころなしか

 ゆうしゃの ドSさが アップした!

 ちなみに、少年が身に着けていたもの、布切れ、とは言ったが、それは実際かなりの大きさで、子供一人の全身を覆うには十分のようだった。

 少年は、はっと気づいたように、強く全身の布を巻き付け直した。水分を含んでずっしりと重く、酷く冷たかったが。

「おや?」

 小首を傾げる少女。

 少年がその場に蹲ってしまったのだ。

「うぅぅ……、なんなんだよぉ、コレぇ……、もぉ……、恥ずぃしよぉ……」

 それは、もはや魔王などとは程遠い、その姿に正しく脆弱な子供そのものの悲痛な呻きだ。感情が瞳からぽろぽろと溢れ出す。

「もぉ……ワケがわかんないよぉ……、誰か……、だれか助けてよぉ……」

 それはまるで。

 夕暮れに空き地で、泣いている、遠い日の誰かの記憶、“ひとりにしないで”と、大声で大切な人を呼ぶような……、スローバラードに乗って、擦れた歌声が、響くようだった。

 不意にそっと、

「だいじょうぶです」

 小さな頭に手が乗せられた。

 くしゃくしゃっと、無造作に撫でまわされる。

「え……っ?」

 少年が顔を上げると、

「あなたが誰であろうと、私が守ります」

 眠たげな目がじっとこちらを見つめていた。


 つづく!

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