その14 マオと、フィーア。
ややあってから、解放してやった。
「も~~~! ピクシー虐待反対! ぷんぷんぷんぷんッ!」
頭から蒸気を出して真っ赤になった妖精さん。
「知るか! 余裕ないって言ってんだろうが!」
「だぁかぁらぁ! ボクの出番なのぉ!」
「はぁぁッ?」
「この先、冒険のヒントを勇者様に提供するのが、ボクらピクシーの役目なのぉ!」
妖精の言葉に少年は、ほんの少しだけ冷静さを取り戻した。
……ぼうけんのヒント、だと?
「ほぉほぉ、それじゃ道案内でもしてくれるって言うのか?」
その他、例えば敵の弱点属性とか、倒す順番とか、逐一、教えてくれるのだろうか?
「まぁ、そうねぇ。平たく言えば、そんな感じヨん♪」
ようせいさんの こうげき!
ようせいさんは みわくのウィンクを はつどう!
しかし、
「いらん」
しょうねんには きかなかった!
「いきなり出てきて、これ以上、話をややこしくするな!」
「えええええーッ?」
「お前の助けなんぞ、必要ないって言っているんだ」
少年は出口へと向う。
ちなみに未だ洞窟内部、ここは大広間の中なのだ。
「いやいやいやいや! 連れてきなさいよぉこのボクを~~~!」
きゅるりら~ん、と光の尾を引いて、妖精が少年の眼前に躍り出る。
少年は構わず通路を歩き出した。
「ちょっとちょっと~~~! ひとりでどこ行くんさね~~~ッ?」
……どこへ、だと? 決まっている……!
「あいつを探しにいくんだ!」
「あ・い・つ? んー、あいつって……、だ・あ・れ?」
しょうねんは ようせいさんを ぎゅーっとした!
「あだだだだだだだだ! でる! でちゃうからぁ! そんなとこ、押しちゃだめええええええ!」
ややあってから少年は、ようせいを、ぽいっ、と投げ捨てた。
いくらかおとなしくはなったが、それでも浮遊を止めず、へろへろと漂いながらも少年の顔面付近に、まとわりついて来る。ちっ、しぶといヤツだ。そんなにトドメがほしいのか?
「ちっ、しぶといヤツめ。そこまでトドメがほしいのか?」
「ひどいわっ、また声に出すなんて……!」
やたらと自己回復力の高いヤツだった。だから勝手に心を読むな!
「も~~~! も~~~! 妖精保護法で訴えてやる!」
「おうおう、勝手にしろ~い。ていうか、ついて来るな。まとわりつくな。羽音を立てるな」
いつしか少年は随分とたくましくなっていたようだ。
しかし、妖精さんは、きっぱりと、
「イヤよ!」
断固拒否っ!
「なん……だと……?」
「アンタが何者だろうと、ボクがサポートしたげるんだからネ♪」
「……ッ!?」
それは、少年の中を過る、言葉。
「――あなたが誰であろうと、私が守ります――」
「お前……、なんで……、そんな……?」
どうして、誰もがそこまで強いのだろう?
一体、何がそうさせるんだ?
ようせいさんは いった!
「え? だって、それがボクの使命なんだもん。何があっても、ボクを解放してくれた者に、全力でサポートする。って、ボクは、そういうふうに設定されてるから……って、ああああ! まぁた言っちゃったよおおおん!」
うわああんうおおおんっと身悶える妖精をよそに、少年はひとり呟いた。
「使命……、使命か……」
しょうねんは おもった!
……あいつ、最後まで、魔王だって認めてくれなかったよな。何者かは分からないけど、恐らく、別の魔王がいるんだ、自分のほかに。もしかして、あいつは、先に進んでしまったんじゃないのか? たったひとりで。ならば、余は……、いや……、
「おい、ようせい! いいか、よく聞けよ?」
「?」
妖精は、きょとんとした顔で少年の言葉を待った。
そして――、
「ぼくはマオ。勇者マオだ。ぼくの使命は、――魔王を倒すことだ!」
「あれあれ~? な~んだ、やっぱり勇者だったのね! おk! 任せて! ボクがきみを完全サポートするよ、勇者マオ!」
「ああ、よろしく、頼む」
たん、たーら、たんたんたー、たん、たーら、たんたんたー、
たらららら、たらららら、たーーーん、たーーーーーーん♪
ようせいさんが なかまにくわわった!
――いいじゃないか、この際、ぜんぶ認めてやるさ。
すべての出会いは、無駄じゃぁないんだろ? な?
だから、……待っていてくれ……!
第3章 完。
「ところでさぁ、お前、なんて呼べばいいの?」
「ん? ボク? ボクはようせいさんだヨ!」
「あ、いや、そうじゃなくて……、なんつーの、こう……」
「ああ、そゆことね! ボクの名前は――、フィーアだヨ♪」
「……ッ?」




