その13 「ああ、しまった! 虫取り網も、空きビンも、無い!」 「ちょ~~~い! 何に使う気ぃッ? てか、無くていいわよぉ!」
しょうねんは ようせいさんを てにいれた!
「よし、売りとばそう!」
「ええええー!」
「高値で売れそうだ♪」
「せいせいせいせーいッ!」
ぶんぶんぶん、ようせいがとぶ~♪
「ちょろ~んっとお待ちなさいなぁ! 何言ってんのよぉ、あんたぁッ?」
再び驚愕した小物体・自称ようせいさんだった。
対して少年は不敵の笑みを浮かべた。
「うん悪いなほら見ての通りお金が無いんだよ全然この先やっぱり装備とかね色々さ揃えなきゃなんないし何せこちとら布切れ一枚で今やっと剣一本だけ入手って最早こんな状況そんな現状」
「なに言ってるの? つか、ワンブレスで何言ってンの、あんたっ?」
妖精なるモノにジト目を返される。
米粒大の二つの半眼が少年を射抜いた。
「ちょ、……あんたねぇ、勇者でしょ?」
「え? 違うよ」
「正義の味方がそんなことしちゃダメでしょー?」
「だから、違うってば」
……どこかで見たやり取りであった。
「うっそだ~! じゃぁ、なんでボクが出て来られたのさ~?」
「いや、知らんがな」
「あっれれ~? だって、ここのボス倒したんでしょ~? それって勇者にしか出来ないことよね?」
……確かに、モンスターを倒したのは、勇者だ。
だけど、もう、ここにはいない。
「そしたら、設定では、ボクの封印が解けて、仲間に加わって、今後はボクが勇者のサポート役になる、っていう、そういうシナリオのはずでしょー?」
少年は、聴き慣れない単語に、恐ろしいまでの違和感を覚えた。
「……おい、ちょっと待て。なんだ……その、せってい、とか、シナリオ、っていうのは?」
すると妖精は、その愛らしい顔を台無しにして泣き叫び出した。
「ああああああ! これ、言っちゃダメなんだったー! ボクとしたことが! うわああああん!」
多分、やっちまった感で、地面を転げたいお年頃だとは思うが、なにぶん空中浮遊の妖精さんなので、超高速で右往左往し飛び回る。
ていうか、ぶんぶんぶんぶん、ええい、もう!
目障りだ、鬱陶しいったらありゃしない!
……もしもここに隣家の成金おばさんが居たとしたら、コイツぁ出て来て早々、叩き落とされてしまうだろうね、まだ序盤なのに。……伝わるだろうか? この感じ。
少年は頭痛に顔をしかめた。
「つぅか、話が見えん。よくわからん。この際だから、きちんと説明しろや」
「え、ヤダなに、このお子様? ちょー態度デカいし、何をそんなにイライラしてるの?」
ようせいさんは じゃっかん ひいている!
「うっさい、余裕ないんだよ、こっちは、色々あって!」
……そうだよ。ホントはこんなヤツを相手にしている場合じゃないのに。
だが、この妖精は再びのドヤ顔だ。
「ふぅん。ま、いいわ! ボクが説明、し・た・げ・る・ネ!」
と、目の前で、くるりんっと一回転した妖精は人差し指を立てる。……これがまたウザかった。ビンどこだ? ビン! 空きビン持ってこいや。
「いいこと? この先の冒険は、今までの比にならないほど、困難を極めるような難易度になってるの。ボクが思うに、多分それは、もうノーヒント、いきなり平原スタート、村人いっさい無しのフィールドに、ひとりぼっちで放り出されてしまうようなものじゃないかしら? しかも、一度でも負けると、一定のアイテムは問答無用で没シュートされてしまうわ。せっかく貯めた経験値も、若干下がってしまうのよ! ボクから言える攻略のアドバイスは……、そう、血液型ね。能力値それぞれ成長の度合いが全く違うから、選ぶときは要注意よ!」
「おい、ボクっ娘ようせいさんよ、な~ぁに言ってんだ~ぁお前さんは~ぁ?」
少年はそいつの羽根をつかんで拡げ、左右に思いっきり引っ張った。
「ちょ、痛いイタイ! とれちゃうっ、とれちゃうから~ぁ!」
……しかもその例え話、多分それ途中で変更きかない初期選択時の話だろ。
つづく!




