アリアさん、反省する。
短い閑話のようなものです。
シルヴィアが皿を割った翌日、森の中のこの家に来客を示すベルが鳴った。
「珍しいです……誰でしょう?」
シルヴィアが扉の方を見つめていると、アリアが扉を開けて、一人の女性を迎え入れた。
真っ白いロングヘアーに、青色の目。
アリアより少し年下に見えるその女性はシルヴィアに気づくと近づいてきた。
「アリア、この子がシルヴィアか?」
「ええ、そうよ」
女性はシルヴィアの顔をまじまじと見つめる。
「……えっと?」
「ああ、ごめんね。あたしはリリー、アリアとは親友ってやつで……まあ馬鹿なことをしてないか見にきたんだ」
「えっと、シルヴィアです。よろしくお願いします?」
シルヴィアはぺこっと頭を下げる。
「うん、よろしく。元気そうでなにより、アリアが子育てと聞いた時はどうなるかと思ったけどね」
「ちょっとリリー!?」
「ああ、悪い悪い。じゃあ、ちょっと話でもしようか」
それだけ言うとリリーはアリアと共に別の部屋へと消えていく。
シルヴィアはその後ろ姿を死神の目で見つめる。
リリーの目と同じ深い青の魔力が静かに揺らめいて、綺麗に輝いていた。
「おー……綺麗です」
人によって全く違うものなのだと、シルヴィアは改めて思いながら魔導書を読みに戻った。
そうして、数時間経って話が終わったのかリリーが部屋から出てくる。
リリーはそのままシルヴィアに近づいてきて話しかけた。
「シルヴィア、シルヴィアが強くてよかったよ」
「……?」
「アリアにはきつーく言っておいたから……」
その一言でシルヴィアは何のことを言っているのかを察した。
「アリアにとっては確かに優しく怒っているつもりなんだ。アリアの職業はな……【拷問官】だ。分かるか」
「あ……そういう」
シルヴィアの反応を見てリリーは頷く。
「本当に、心が強くてよかったよ」
リリーは帰る直前にもう一度アリアと話をするとシルヴィアに手を振って帰っていった。
その日の夕食がいつもの数倍豪華だったのは、当然のことだったのかもしれなかった。