しがらみ
どうしても書きたくなった。
もうすぐクリスマスだ。今頃、リア充の奴らは聖なる夜を待ちわびているのだろう。
「クリスマスプレゼントどうしよっかなー」「どこにデート行こうかなー」
こんなことばかり考えているに違いない。
あーあ、吐き気がする。
あの時に告白していれば、俺の頭の中はそんなようなことでいっぱいだっただろう。つくづく自分が嫌になる。
思ってみれば、俺は後悔ばかりだ。次々に新しい恋に芽生えては、その芽をすぐに摘み取られる。
俺は一体何がしたいんだろう。
十一月のあの日から約二週間がたった。もちろん諦めきれる訳がない。
ほぼ毎日back numberを聴きながら、パソコンで手当たりしだいに恋愛にまつわる記事を漁っていた。
再告白することはすぐに決めた。しつこいと思われるかもしれないのは承知の上だ。なんとしても、クリスマスまでには告白する計画を立てている。
だがなぜだろう。自分ではちゃんと好きだと思っているはずなのに、好きじゃないというか、もどかしい何とも表しにくいもやもやが心の中をうろついている。
自分でも意味がわからない。でもそんな気持ちなのだ。
これは神様でも難解なものだろうという自信がある。
毎日会うたびにドキドキするのは事実だ。実際に、めっちゃかわいいし。
なんだか複雑だ。
とりあえず、今日は寝ることにした。
次の日、学校からの帰り道のこと。唯一、あの日に告白することを伝えていた友達に再告白することを言った。
「そうだ。俺あいつにまた告白することにしたさ」
「ふーん。お前ほんとにあいつのこと好きなのか?」
「は?当たり前だろ」
「なんか俺には、お前はただの女好きにしか思えないな」
突然の友達のその言葉に、一瞬だけ怒りが脳内を走った。
「どういうことだよ。バカにしてんのか」
「いや。でも実際、お前は女子を軽くみてるんじゃないか」
「あー。まあ言われてみれば軽くっつーか、うちのクラスはけっこうかわいいやついるなー、とは思ってるけど」
「それだよ」
少しだけ語気が強くなったような気がした。
「お前は適当過ぎるんだよ。この前の告白、絶対成功するって思ってただろ。うぬぼれ過ぎだ。前の彼女が一発で成功したからって、次も上手くいくなんてことはないだろ。付き合うんなら、もっとしっかり相手のことを考えろよ。ただカップルになってイチャイチャできればいいやなんてのはもっての他だ。ちゃんと本当にあいつが好きなのか再確認しとけ」
早口でそう捲くし立てられ、思わず強めに言い返してしまった。
「うるせーな。お前は付き合ったことねーだろ」
友達は俺の目を見据えて言った。
「そうだ。だけど俺はお前のために言ってるんだ。どうせお前はヤフー知恵袋かなんかで助け求めてんだろ」
思いっきり図星だ。
「え。ま・・・、まぁ・・・」
「やっぱな。本当にあいつが好きなら、そんなんに頼らないで自分で進めよ」
いつもは皆からいじられているこいつの言葉が、なぜかすごく胸に響いた。
「おう・・・。なんかありがとな」
「ま、俺の友達が言ってたことなんだけどな!」
「はぁ!?お前、俺の感動返せよ!」
「ごめんごめん。でもほんとにそう思ってるからさ、がんばれよ。じゃ。」
そう言って俺の行く方向とは逆に歩いていった。
「おう」
友達に言われたことを反芻しながら俺も帰路についた。
その夜。おれはずっとそのことについて考えた。思えば、昨日俺が考えていたことは友達が言っていたことなのだろう。
本当にあいつが好きなのか、再告白すべきか。いろいろと頭の中で駆け巡った。でも結局どうすべきかはわからなかった。
あいつはもう俺に対して冷めているかもしれない。ただの普通の友達として受け入れているのではないか。
結局俺は臆病だ。何に対しても、まっすぐに突っ込むことができない。だから合唱コンで告白できなかったんだ。
自虐の言葉しか出てこなかった。俺は何がしたいんだろう。
さらに二週間たった今でもまだ答えは出ていない。今日こそ言おうと思っても言い出せないままだ。
心の中では、まだ中学生なんだから本気にならなくてもいい、という自分もいる。
恋に落ちたのは確かだ。だが、落ちた先でもっと深く潜り込もうとすることができない。好きなのに。本当に好きなのに。早くこのもやもやから抜け出したい。でも、失敗して口も聞けなくなるかもしれないという恐怖感もある。
まさに恋は呪いだ。どうしようもできない。
終業式まで学校に通うのはあと八日。これまでに決着をつけろというのか。神様も酷い人だな。