歩きだそう。
今回で狩人編完結です。
「『まぁ、あれだわ。その、すまんかった!』」
口寄せされて、所謂幽霊や魂と呼ばれる状態のヤマトがガバッと頭を下げた。
「あ、いや。俺こそ、もっと力があれば………お前を死なせずにすんだはずなのに…力が足らなくて、すまなかった」
「『な~に言ってんだ?お前は俺が倒せなかった奴を倒したじゃないか』」
「いや、あれは伊角さんと水鈴さんがほとんどやってくれたさし、俺はほとんど役には立ってない」
「『お前がいたから、大物の二人が動いてくれたんだろ?それなら結局は、お前が敵討ちしてくれたのと同じだろ』」
そう、なのだろうか?
俺は相棒の敵討ちをちゃんと出来た?
「『なぁ、お前さ。このまま狩人続けていくのか?』」
「あ?あぁ、そのつもりだ」
「『危険過ぎるだろ?大丈夫なのか?』」
それは、遠回しに俺が弱いから、狩人を辞めろと言っているのか。
「ふざけんな」
「『俺は、お前を守ったんだし、死んでは欲しくないんだが』」
「俺は!そんなに頼りないか!」
「『そりゃーそうだろ』」
「………!! 」
それはあまりにも自然と、肯定されて。
そんなにも、お前は俺が弱いと思っていたのか!!
「俺は…!」
「『危なっかしいんだよ、お前は』」
「俺が、お前を何回助けたと思ってんだ!」
「『あー、何回だろうな』」
「数えきれんわ!」
「『お前の方が冷静で、よく周りを見てたよなー』」
「お前はただ突っ込んで行って、こっちはどれだけヒヤヒヤしたか」
「『あはは、もうそれは時効だろ』」
「俺は忘れてないからな」
「『そうだな。忘れないでくれよ』」
「お前のことなんざ、忘れてなんか、やるもんかよ」
始めはケンカのようだったのが、段々と涙混じりの声に変わっていった。
これは、おそらく生涯で交わす最後の言葉。
「『お前は、忘れんなよ。冷静な所。でもいざとなれば体張って俺を守ってくれた。術だけじゃない。色々なことを、お前はできる』」
「今さら…気付いたのかよ」
「『ばーか、はじめから知ってたわ』」
「くそばか」
「『へいへい。そろそろ時間らしいから、いくわ』」
「天国 、で見てろ。名前を、あげて、やる、から」
「『楽しみにしてるわ』」
「じゃあな」
「『じゃあな』」
それはいつもの挨拶。
お互いに手を挙げてヒラヒラと振って、じゃあな、なんて言葉で一日を締めくくっていた。
光に包まれ、霞のように消えた。
あとに残るのは1人の少年と足下の水滴のあと。
「その『九字兼定』は預けておく。誇らしい人になりなさい」
「………はい!」
どこか厳しく、突き放すような言葉だが、友との誓いでもある。
泣き笑いの変な顔のまま、力強く応える。
そうして、若き少年術師は歩き出す。
いつかの未来で十連の指輪を着けた術師が英雄と呼ばれているかは、これからの少年の心次第。
長々とお付き合いいただきありがとうございました。未だにブックマークが残っていたり、少しずつPVが増えていることに、感謝の念しかございません。次は探索者編を予定しています。




