兄の思い弟の思い
サブタイトルの書き方がお気に入りしていた作者さんのとモロカブリしてました。これまでのタイトルも時間を見てなおしていきます
「一応聞く。やるか、やらないか」
『赤猿』のディルがディガーとエイジャスに問う。
「すぐに仕掛けないんですか!?」
「元々オレ等も休息をとるために来たんだ。消耗してるトコにあの数を相手にすンなら、こっちも手傷を負うだろ」
エイジャスの疑問に冷静に伝える。
「まぁあれらの確認が出来たし、大移動の理由でも分かれば良いしな。極論、あの狼どもを相手にしなきゃいけないってわけでもねぇ」
これはあくまで調査であり、討伐ではない。
「逆に言やよ。あいつら片付けてさっさとこの砂漠から出ンのもアリだ。他の怪物どもが大人しくしてるなんてありえねぇからな」
リスクをリターンを目的を、全て天秤に乗せ、どうすることが最善か。
『赤牛』の事故により、どちらかと言えばリスクを避けていた『赤猿』。
しかし、目の前にいる狼どもを仮に1人で戦っても問題なく殲滅できるという自信もある。
故に、問う。
普段なら一緒に調査に来ないであろう、自分とは真逆のタイプに思えるジョバンニ。
自分と同じ経験をつみ、更に発声に障害をきたすなんて大怪我をしても尚探求者を続ける強い弟。
意見を聞くに申し分ない。むしろ自分だけで全てを決めるわけにはいかない。
「「・・・・・・」」
すぐには答えは出ず、沈黙が降りる。
「・・・・・・」
ディガーが砂地に字を書く。
声を失ってからはディルが引っ張る形でやってきたコンビ。
そんな中でも研鑽を積み、決して堕落しないのが『赤牛』のディガーだ。
兄の言いなりではなく、全幅の信頼と、それに合わせるという意志。
半ば予想していた言葉を指先で書き上げた。
『休息を取って、やつらを追おう』
それは辛くも原因究明への最短ルートだ。