ヘイジュン
場違いな砦、名を九遥関。空を飛ぶ要塞とのことだが、飛行機能があるようには思えない。
というか、砦サイズのさっかりとした石造りの質量が浮かぶためにどれほどの力が必要であろうか。
砦としての機能は健在のようで入り組み狭い通路、明らかに殺傷目的と思われる光線などを避けつつたどり着く。
云うなれば玉座の間、だろうか。
大仰な椅子の前に円盤の装置のようなもの。
そこに奴はいた。
「来たか。待ちわびたぞ」
「それはそれは、お待たせして申し訳ありません」
部門長が一歩進み出て対峙する。
「貴方のもつ能力を解明、及び貴方の生きた時代について多々聞きたいのですが、ご一緒に来ていただけませんか?」
「ふむ‥‥‥それだけならば否はないが、そうではなかろう?目的は他にもあると見た。何より我が役割にそんなものはない」
「どうしても?」
「成したければ我に力を示せ」
そう言って腰に佩いている双剣を抜く。
魔力温存のためか、それともあれも特殊な能力があるのか。
「さあ、一人ずつか?それともまとめてかかってくるか?」
「あれは『夫婦剣甲将・莫耶』でしょう。切れ味は勿論のこと一級。また共存の能力により決して紛失しないのだとか」
「剣ならば一対一が礼儀。私が行こう」
「ほう、我が剣に対する知識を持つものがいる。礼儀を重んじるものもいる。なかなかどうして、楽しませてくれる」
「生憎と剣ではなく槍。駆るは『獣爪閃』。赤宝の探求者、ヘイジュン。参る!」
槍を持つ白兵戦を得意とするヘイジュンが部門長から更に3歩相手に近付き、槍を構えた。