挿入話 とある武器店 3
砂鉄と鉄鉱石を型に入れて融かす。砂鉄と鉄鉱石が融けて結合したら叩いていく。
ひたすら叩く。叩く。叩く。
大雑把に剣の形にして、平べったくなった鉄を折りたたむ。
そして叩く。叩く。叩く。
またそれを折りたたむ。
その作業を何度も繰り返す。鉄の層が何層にも重なるように。それによって不純物を取り除きながら強靭にしていく。鉄も鋼も、純度が高めていくことで強度が増す。
折りたたむことで鉄の層が増えていく。2層4層8層16層32層64層。そして熱いうちに炎華を砕いて加える。
炎華は華の形をした赤い結晶じゃ。名前の通り火の魔力を内包しておる。
砕いた炎華に魔力を加え剣全体に魔力を伸ばしていく。火の魔力で包み込み、定着させる。
近くで小僧が見ているが、正直意識の中にはない。音、熱、色、手の感覚。全てが剣に集中している。
さて、問題なのはここからじゃ。
作るのはブロードソード。直剣じゃ。
剣は熱い状態から一気に水に浸すことで強度が増すんじゃが、代わりに僅かに反りが生まれる。直剣の用途としては斬ることもそうじゃが、突きも重要な攻撃。
そこに歪みがあれば使用者に危険が及ぶ。それだけは、製作者としてあってはならん。
錬鉄に3時間。成形に2時間。魔力の定着に2時間。合わせて7時間。夜通し鍛造をして、なんとか完成した。
「ふぃー」
「じーさん、出来たの?」
「なんじゃ、本当に起きて待っておったのか。ほれ、確かに造ったぞ」
「持っても?」
「素振りしてみろ」
「ん」
僅かに朱色を纏う両刃の直剣。ブロードソード。
右手で持ち、左から右へ。両手で持ち上から下へ。そして真っ直ぐに突き。振るうたびに火の粉が舞い、幻想的な様ですらあった。
「ワシは少し寝る。小僧、貴様も本格的に使うなら少し休んでから行けよ」