挿入話 とある武器店
とある鍛冶屋にて。
「こいつぁ、いい剣だ!俺様が持つに相応しいぜ!オヤジ、こいつをもらうぜ!」
「へい毎度あり。金貨で5枚になりやす」
「はっはー!そらよ!さっそく試し切りに行ってくるぜ!」
はぁ、つまらんのぅ。今の客が買っていったのはファルシオンという種類の曲刀で、風魔法の付与がしてある。
見た目も金銀をあしらい、いかにも早く切れそうな印象を与えている。
それだけの剣。
まぁ、もちろん金貨5枚相当の切れ味と丈夫さに風魔法付与はしてあるから、詐欺にはならんがのぅ。
見た目だけで武器を選ぶ者が最近は多いものじゃ。
ワシは遺跡街の一角で武器屋・鍛冶屋を営んでおる。
杖などは作れんが、剣や槍、斧などの武器。防具は一通り作れると自負しとるし、魔法の付与などもできる。
一部の者はきちんとした物を選んでいくのじゃが、まだ見た目重視の者が多いのは悲しいことじゃ。
無駄な装飾は引っかかりを生み、余計な重さを出す。それによって疲労も蓄積される。良いことなど一つもない。命をかける道具なのにのぅ。
「失礼する」
「む?おお、お前さんか」
やってきたのは狩人の『刀』という武装を持っている常連客だ。
「今回は持ち合わせがない故、金貨30枚までで頼む」
「30枚なら、そこの樽の中じゃ。いつものカタナか?」
「いや、今回は盾を持つ故片手で扱える物がいい」
「いつも両手剣なのに珍しいこともあるもんだ、付与はどうする?」
「風か雷がよいな。広範囲に攻撃出来るものがいい」
「特殊な任務か?それなら、これなどどうじゃ?」
「無駄な装飾はいらん。いくつか手に取らせてもらう」
こいつはワシのススメなど聞かずにガチャガチャと音をたてながら一本ずつ手にとって片手剣を選ぶ。
剣は握りの具合によっても相性があるからの。多少は調整出来るが、はじめから合っているに越したことはない。
「この剣・・・・魔剣の類か?」
「む?あぁ、そうじゃな。ワシは剣に成形しただけで自然魔力が結晶化したものじゃな」
「これを貰いたい」
「確かにお前さんの言う風属性じゃが、大丈夫か?魔力に振り回されんか?」
「念は使えるが術は使えん。いざというときに備えたい」
「まぁ、ワシはあるものを売るだけじゃ。文句は言わんが気をつけろよ」