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ならずの転生英雄〜故郷を奪われた俺は復讐を果たすために、剣聖の弟子になりました〜  作者: 杉滝マサヨ
一章 星の邂逅 ※改稿中につき➤のついてる話と大きく展開差と設定違いがあります
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27話 図書館迷宮・前

総合100pt突破!超弩級超越圧倒的感謝!


 ーーーー遡ること五十分前。


「……なあ、ゼイン」


 魔術師のローブを羽織り、帽子をかぶっている男性がエンジェだ。

 今でこそ男になっているが、元々の幼げな顔立ちを残しつつ、クールな雰囲気へと変わっている。

 最初こそは生まれた息子を触れて絶叫したが。


「ん〜なぁに?」


 対し、貴公子のような服装だが、控えめな胸が少し膨らみ、元々短い金髪がボーイッシュな印象を受ける女性がゼインだ。


「あんた…本当の目的は何だ…?」


 エンジェは正直なところ、ゼインの意図が読めず、怪しんでいた。アベルの戦いが見たいなど口実だ。何かを隠している、と勘ぐっていた。これはただの勘でしかないから口出せないでいたが、今回の反転により性格も反転した。

 だからか、普段言えなかったことが言えるようになっていたのだ。


「ん〜…別に言っても良かったけどぉ、アベルは聞かないんだよねぇ」

「…」


 アベルは少し人好し過ぎるところがある。

 相手の事情を深く問わず、受け入れる。そんなところだ。アベルの良いところでもあり、悪いところでもある。それをエンジェは最近わかってきたのである。

 長年の旅でデルラの森で彷徨い、人の接し方に戸惑いでもあるのだろう。

 それにアベルは理由がない限り動かないと言われているが、そうでもない。あれはアベルの見た目も関係しているかもしれないが、もう一つある。

 金や知名度を利用しようとした薄汚れた人間の誘いを全て断っていたからだ。恨みか、妬みかわからないが、そういった人間によって作られた噂だ。


「んん、そうねぇ。あたくしは人を探しているの」


 そういった人間ではない限り、アベルは受け入れるのだろう。


あたくし相棒サイドキックであるアイザックが急にいなくなったのよぅ。ちょうど、翼竜迎撃の報酬を受け取った直後にねぇ」


 エンジェは、少しあさってに視線を向け「そういえば」と頷く。

 ゼインはアイザックとPTを組んでいる。そのゼインが活躍している噂はあったが、アイザックは翼竜迎撃作戦以降、姿を消した。ゼインと隣にアイザックがいない、という噂だ。もちろん噂の出所は小鴉丸だ。


「モメント町内でよく任務をやっている人にアイザックを探すようにお願いしているけどぉ、全く見つからないのよぉ。あたくしはデルラの樹海を毎日魔獣狩りに出かけているけどぉ、アイザックの姿も魔力もないのぉ」


 さめざめといった表情でゼインは地に伏した。

 わざとらしいが全く嘘はついていない。


「それで?なぜアベルのところに?」

「ん〜…リディックにも協力仰ごうと思ってねえ。支部長室に行ったんだけどぉ、忙しくて待機してたら迷宮の探索依頼状を見つけねぇ。モメントの町にいる限り図書館に迷宮がある、なんて全く聞いたこともないのよぉ。だから、もしかしたら?と思ってねえ」

「なるほど」


 思い当たる場所は全て探したが、見つからなかった。

 そこに全く聞いたことのない迷宮の探索依頼状が目に入り、アベルのところへ駆けたということだ。


「ごめんねえ。アベルに興味があったのは確かだけど、こっちにもこっちの事情があるのよぉ」

「…わかっている。私だって…」


 ふと、思い出す。

 ゼインは迷宮踏破者だとアベルから聞いた。


「そう言えば、ゼインってどこの迷宮をクリアしたの?」

「そぉねえ…あたくしとアイザック、リディックの三人でゾディアック迷宮を踏破して生還したのよぉ」

「ゾディアック⁉︎」


 ゾディアック迷宮は有名だ。凶悪な罠や魔物が多く存在し、迷宮主に竜が構えているという話だ。

 冒険者百人が総じて迷宮を達成するために赴いたが、全滅。かろうじて生還した者の話によると迷宮主は鉄の多頭竜だという。だが、その一言だけで絶命したため、それ以上の具体的な情報は得られなかったという。


「…すげぇ」

「それほどでもないよぉ。でも、他に仲間が二人死んじゃってねえ…」


 普段飄々としたゼインの表情に影が落ちる。

 少し無神経だったのかもしれない、とエンジェは少し俯く。


「悪い…」

「気にしなくても良いよぉ。ん〜、とにかくゾディアックの件もあってねえ。少しでも力になればと思ったのよぉ」


 ゼインを疑った自分が恥ずかしい。

 仮にもアベルが信用する、と判断した。

 その判断に間違いはなかったのだ。


「ん!この魔力…」

「魔物か?」


 エンジェは杖を構える。


「いやぁ、多分これはぁ…」

「『破哮砲ハコウホウ』!」

「うお!」


 蔦の壁から衝撃が貫き通った。


「コハァアア」


 むき出しにされたギザギザの口から煙を糸引かせながら現れた、そいつは、エンジェたちを一瞥し笑った。


「やっぱりお前らか」


 女性で、狼の獣人だ。ふわりとした黒色の毛を体全体に包んでいるのが印象的である。

 蔦の壁を突き破る時点で只者じゃないということは察することができたが、それ以上に内包魔力が異常だ。

 エンジェとて、魔力はSに到達しているが、それに張るほどの量だ。「一体何者…?」と訝るが、アベルの身近な者で似た魔力質を感じていた。

 しかし、その者の外見が180度違っていた。ほぼ同質である魔力質であることを感じていたのにも関わらず、エンジェは呆然とした顔を固めたまま、こう呟いてしまった。


「誰?」


 女性の獣人は目を細める。


「誰とは随分と失礼じゃねーか」 

「ん〜…それは無理もないんじゃないかなぁ」

「む、それもそうか」


 女性の獣人はふむ、と頷く。


「ここに来てなぜかこうなったが、俺は正真正銘、アートだ」

「え、アートなのか?」

「ああ、そういうお前こそ喋りも見た目も変わっているが、エンジェだろ?」

「待って、あれ?アートって喋れたのか?」

「それに関しては俺にもわからない」

「…とにかく、アートで間違い無いんだな…?」

「ああ、俺だ」


 少し体毛で隠れるべき箇所はギリギリ隠れているが、アウトと言えば、アウトな格好をしている。

 狼だったのだから着るべき服がなかったから仕方ない。

 仕方ないのだが、元?女のエンジェから一言申したかった。


「と、とりあえず、ふ、服を…」

「ん?おぉ、服か。いらなくね?」

「いやいや…」


 エンジェはローブをアートに貸してやる。

 現在は男となっているため、少し…気まずいと感じてしまったからである。


「むう、いらなくても良いんだがなあ…」

「こっちの目のやりどころに困るんだ」

「そういうもんか」


 とりあえずローブを纏うが、あまり意味を成していない。

 隠すべき場所がチラチラと見えてしまい、むしろ魅惑的になってしまった。故に「失敗した…」とエンジェは俯く。


「ん〜とりあえず、あっちに行ってみよう」


 ゼインは周りを一周見回り、そう言った。


「根拠は?」

「無いねぇ〜」

「えぇ、大丈夫かよ」


 エンジェは呆れ気味にそう言い放つ。

 だが、意外なことにゼインはエンジェに視線を向け、諭された。


「人にもよるけどぉ、個人論では未知なる迷宮において大切なものがあるのよぉ。それが何かぁ分かるぅ?」

「そうだな…準備と観察眼…強さ…かな?」

「ん〜、それも最重要だねぇ。でもぉそれだけじゃあ足りないのよぉ。万端の準備でも、S級の強さでも、優れた観察眼でもそれだけでは迷宮はクリアできないわぁ。エンジェ、貴女の言う三つの要素も大切だけどぉ、いざという時の勘…もとい”判断力に寄る勘”も必要になってくるのよぉ」


 ”判断力に寄る勘”。

 この一点に強い意志を感じたが、エンジェはどういうことなのか、はっきり分からなかった。なぜ、「勘」とだけ言わなかったのか疑問に思った。

 エンジェは頭を傾げる。判断力と勘は似て非なるものだ、何が違うのだろう…と頭を悩ます。

 悩むエンジェの肩をゼインはぽんぽんと叩いた。


「いずれ分かる日は来るよぉ。おじちゃん…いえ、おばちゃんの経験の一言…だと覚えてくれればいいよぉ」

「…おう」


 ゼインは微笑み、彼が先導で前に進む。


「ん〜…アート何か異変とか感じたぁ?」

「少し、魔素臭くなってきた」

「臭い?」

「ああ、俺は悪意とか敵意のある魔素は臭いと感じるんだ。普通なら一直線に臭いを感じるんだが…この辺りの空間自体がだんだんと臭くなってきてやがるんだ」

「ん〜…やっぱりぃ。空間自体が襲って来る可能性もあるわねぇ」

「引き返すか?」

「まずはアベルを探さないとねぇ。蔦の根元に辿り着いたらほぼ間違いなく迷宮主がいるでしょうねぇ。ゾディアックの竜もそうだったけど、S級冒険者が五人掛かりでようやく倒せたんだからねぇ。アベルという今メンバーの最大戦力が必須になるわぁ」

「その肝心のアベルとはどうやって?」


 エンジェのその問いに対し、「ん〜…」とゼインは唸る。そこにアートから声が掛かる。


「なあ、さっきまで荒れていた風あっただろ?」

「ん〜あったねえ」


 エンジェとゼインも最初こそは向かい風に向かって進んでいたが、急に風が止んだのだ。

 アベルと合流できやすい要素が風だったのだが、それがなくなり、ゼインの勘に従い前へ進んでいたのである。

 最初は勘だ、と言われても流したが、だんだんとそれが怪しくなり、「何を企んでいる?」とまで怪しみ始めたのである。 


「その風にアベルの匂いも混じっていた。残り香から、ある程度の場所なら辿れる」

「ん〜、じゃあ、案内頼めるぅ?」

「任せろ」


 と、今度はアートを先導に前へ進んだ。

 アートの言う魔素が臭いと言う空間から離れて行く。


「どう?」

「少しずつアベルの残り香が強まっている。十分もかからず合流できるだろう」

「近いのか。少し待て…」


 エンジェは目をつぶり、魔力感知に集中する。

 アベルほど広域な感知はできないものの、半径二十メートルの範囲ならば感知できる。


「…ひっかからないな。また少し距離があるかもな」

「もう少し先へ進むかーーー…エンジェ!」

「え? うわっ⁉︎」


 エンジェの足元の蔦が蠢き、転ぶ。

 そして、地面を形成する蔦が退き、大穴となる。


「んっ!」


 瞬間、ゼインはすでにエンジェの手を掴んでいた。

 ゼインは体を回転させ、エンジェを穴外へと投げる。


「ぜ、ゼイン!」

「くっ!」


 アートがゼインに手を差し伸べるが、届かない。

 闇に落ちゆくゼインはエンジェとアートに指を差し、


「ーーーアベルと合流しなさい!」


 その声を最後に閃光の冒険者は闇へ消えた。

 この後、アートの嗅覚を頼りにアベルと合流するべく前へ進んだのである。


………

……


 と、ここまでの出来事を軽くエンジェと俺たちは情報共有した。


「アート、お前もか」


 どうも俺と同じ考えだったようだ。

 壁の奥に仲間がいるとなれば壁をぶっ壊すわな、そりゃ。

 ちなみにアートは『破哮砲ハコウホウ』の連発を可能とした。黒兎竜の件で反省したアートは1ヶ月間で魔力の放出のコントロールをより洗練させ、『破哮砲ハコウホウ』による魔力放出の制御を完璧なものとしたのだ。


「お前が空から降ってくるとは思わなかった。俺よりも奇想天外の登場だな」

「うっせーよ。壁を突き破ったら崖だとは思わなかったんだよ」


 本当驚いた。『気圏』は魔力の位置こそは判別できるが、地形までは把握できない。

 同じ地平線上ではなかったのだ。師匠は地形まで把握できていた。どうやったら判別できるんだ…と今はそれどころじゃない。


「小鴉丸が拐われたと思ったら次はゼインか。はぁ…」


 カリカリと頭を搔く。


「アート、とにかく臭いの強い場所へ連れて行ってくれ」

「わかった」

「よし、行くか」

「あ、アベル、ちょっと待ってくれ」

「どうした?」

「ゼインはどうする気だ?」

「ああ…大丈夫だろ」


 ここでエンジェはイラっとしたのか、男の低い声で俺を責めた。


「なぜ、反応が淡白だ?ゼインはS級冒険者だが…そんな彼でも迷宮踏破は難しいと言った。彼が死ぬかもしれないんだぞ?それを分かってて前へ進む気なのか」

「…」

「くっ…見捨てる気か?」

「…落ち着け。何も俺は見捨てる、とは言ってねえ」

「え…」

「ほら、この蔦の壁はある一貫性がある」


 そう言われ、エンジェは蔦を見る。

 そして気づく。


「壁の蔦、方向が一貫しているような…?」

「ああ。一点から蔦が発生していて、広がって行っている可能性が高い。ここの蔦から推察するに右の方向に進んで行けば迷宮主へたどり着けるはずだ」

「しかし…ゼインは…?」

「元々落とし穴ではない場所が、蔦が動いたことによって作られた大穴に落ちたのだろう?」

「あ、ああ…」

「ならば、落とし穴ではなく、拐われた可能性が高い。拐われたとすると、蔦の行き先は迷宮主が存在する場所に限られる」

「…それで今から迷宮主に向かうと決めたわけか」

「ああ」


 と、エンジェは押し黙り頷く。


「とにかく急ぐぞ。迷宮主に遭遇していたとしたら不味いかもしれん」


 俺たち一行は先を急ぐ。

 アートが魔素が臭いという場所へと案内してもらう。

 その場所へは二十分もかからず辿り着いた。ぱっと見、変化は特段変わった点はない。

 ずっと蔦の壁が続いているだけだ。


「…少しだけ魔素が濃くなってきたな」


 ということは、迷宮主に該当するであろう存在に近づいている。

 アート曰く、先ほど来た時と比べて臭いの強さに変化は特にないらしく、侵入者を妨害するというレベルに止まっているのかもしれない。つまり、「殺す気は無い」。

 しかし、保証はできない。俺とて、万能ではない。一介の冒険者として注意せねばな。


「お前ら、用心しろ。いつ壁が襲いかかってくるのか分からない」

「そうだな。お前も気をつけろよ、お前は俺が倒すんだからな」

「むっ、アベルを倒すのは俺だ」

「いや、俺だ」

「いいや…」

「お前ら落ち着け」


 アートとカムイはあまり仲がよろしくない。

 どちらも俺を超えることを目標にしてるっぽいし…

 さっきからその点でよく衝突している。


「なぁ、アベル」

「どうした?」


 エンジェが俺に声を掛けられる。

 少し暗い感じになっている。ゼインのことで気を病んでいるんだろうか。


「よく考えたらだが、ゼインが迷宮主がいる場所に連れて行かれた可能性だって決して高くはないだろう?もしかすると、触手に絞め殺されている可能性も…」


 ふむ、確かにそうだ。


「なぜ、自信を持ってゼインはそこにいる、と言えたんだ?」

「…そうだな。こう言っちゃ悪いがーーー、勘だ」


 エンジェは俺を見て驚く。

 何があった。「勘」って言葉に異様に反応した。


「どうした?」

「…なんでもねえ」


 男になって生意気になったなあ。

 …まあ、ゼインの言う「勘」のことだろう。ゼインは簡略して”判断力に寄る勘”と言ったが、簡略しないで言うならはこうだ。

 「必要情報を取捨判断し、できた選択肢を勘で選ぶ」だ。多少の解釈は異なるかもしれないが、どれだけ強さがあろうと、観察眼が優れようと、選択肢が一つに絞られるわけでは無い。

 故に、最終的には勘に頼るしかない。

 俺とて勘に自信があるわけでは無いが。


「エンジェも良い勘をしていると思うんだがな」


 俺はぼそり、と呟く。

 ”原初の炎(アドラヌス)”の件だ。あの時、エンジェが咄嗟にエマを救いに行った判断と勘は冴えている、とも言える。俺と言う存在も考慮に入れ、救出を間に合わせたのだ。

 無意識的にかもしれないが、自信を持っても良いと思うんだがなぁ。


「アート、少しエンジェに気を配ってくれ」

「分かった」


………

……


 しばらく進んで俺は異変に気付いた。


「アート、止まれ」

「…どうした?」

「魔素が…強くなっている」


 前へ前へ進むごとに魔素が濃くなっているのだ。

 迷宮主のドリー?がこちらの存在に気づいたか。


「臭いは強くないが…濃くなっているのか?」

「ああ」


 特に前方に燻る魔素が異常に濃い。

 それも、こちらに向かってきている。


「来るぞ!」


 奥から蔦が蠢き始める。

 次第に蔦は触手としてうねり、襲いかかって来る。


「エンジェ、カムイ!魔術だ!」

「っ、爆ぜよ『爆炎』!」

「『颶嵐裂シナツヒコ』!」


 凄絶な刃の嵐に爆炎を乗せる。蔦の触手は刃に裂かれ、炎に焼かれる。

 俺と小鴉丸、カムイは持ち前の刃物で触手を切り裂く。

 アートは爪で裂いている。獣人に変わって戦い方も変わったはずだが、違和感なく反撃ができている。

 あの体術は師匠、ユージンから学んだことをベースにやっているのだろう。いわゆる天才だ。

 俺だってあそこまでの体術に達するまで一週間ほどかかったと言うのに。


「触手が再生する!」


 斬り裂いた断面から触手が生え、俺たちを襲ってくる。

 前方の焼いた触手が麻痺している。活路は前だ!


「前へ!」


 俺たちの足元が蠢く。前方の裂かれ焼かれた触手が麻痺している内に前へ踏み出す。


「走れ!」


 アートとカムイはもちろんのこと、小烏丸もエンジェも問題なくついてこれている。

 前方の蔦が再生し、再び襲いかかって来る。


「チッ!『気剣』・双」


 両手に剣を生成し、前方への活路を斬り開く。

 そして、バックステップ。


「エンジェ!焼け!」

「爆ぜよ、『爆炎』!」


 切った触手を焼き、再生を遅らせる。

 俺は再び前へ踏み出す。


「エンジェは全体サポート!カムイは小鴉丸と背中合わせ!アートは俺と…」


 と、俺の周囲の壁の魔素が異常に濃くなった。


「アベル!」


 俺の周囲の蔦が一気に増殖する。

 触手が俺を捉えるべく集中的に襲いかかって来る。


「フッ!」


 全ての触手を切り裂く。

 しかし、触手は一瞬で切られた断面から生やす。


「くッ!」


 俺は剣を振るうが、数が多すぎる。


「『颶嵐裂シナツヒコ』!」


 カムイの魔術で俺の周りの触手を切り落とすが、それでもなお再生し、集中的に俺を狙う。

 俺は蔦に足を取られ、転ぶ。剣で触手を斬り払うが、次の触手が襲って来る。

 手と足を縛られ、蔦に埋まる。


「アベル!」

「ーーークソッ!」


 俺は、蔦に飲み込まれた。

読んでくださりありがとうございます!

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