24話 謎の依頼
そこは燃え盛る世界。
煌煌と炎の幕が上がっている。
俺は地面一面を埋め尽くすヒトの屍体の上に立っていた。
ぐちゅ、ぶちょ、と肉が潰れる感触が気持ち悪い。
そして、己の体に違和感を感じる。
「手が…?」
手が小さい。足が小さい。体が小さい。
小さい体躯を再度認識する、間違いない。
「俺は…子供になっているのか」
今現在の状況に困惑しながらも歩む。
進まねば何も起こらない。ただ待つだけでは何も見つけられない。
だから俺は歩き続けた。
屍を踏みしめ、あてもなく進んだ。
程なくして、早速変化を発見した。
「十字架…?」
地面一面、急に盛り上がった屍の山が現れた。
積み上がった死体の上に十字架が立っている。
誰か一人、磔にされている。十字架の前に誰かまた一人、仰々しく両腕を広げていた。
下卑た笑い声を上げながら叫んでいる。見覚えのある顔だ。
「……!」
聖職者の服装に、狂気が凝縮されたような目。
間違いない、あいつはセトだ。
では、磔にされているのは…?
「ーー母さん!」
積み上がる死体の上で磔られている母の姿。
腹を裂かれ、内臓が飛び出ていた。
「ハハハハ!彼女は最後の贄!これで邪神は復活召される!この世界に破滅と再生をもたらしたまえ!」
「て…めぇ…!」
手を握りしめ、腹に力が入る。
今すぐあいつを殺してやりたい。
そう思った瞬間、俺の体から黒い魔力が溢れ出る。
「これはーー!」
俺の視界を黒に塗り替え、何も無い世界へと引き摺り込んだ。
ーーえ、ーかえ
黒の世界でどこからか声が聞こえる。
殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ喰え喰え喰え闘え闘え闘え闘え殺せ殺せ殺せ喰え喰え喰え殺せ殺せ殺せ殺せ喰う喰う闘え闘え闘え殺せ殺せ殺せ闘え闘え闘え喰え喰え闘え闘え闘え殺せ殺せ闘え闘え殺せ殺せ闘え喰う殺せ殺せ闘え喰う闘え闘え
己の中に潜む憎悪、闘争が俺を侵食する。
侵された手が、足が動かない。
「う、うわぁぁああぁあああ!?」
その闇は頭を除いて体全てが乗っ取られる。
頭だけの感覚があり、首より下の感触が全くない。
そして、侵食された手は俺の意思を背き、自分の首を絞めた。
「ぐっ…⁉︎ おぇ…!」
瞬間、二人の男が闇から現れた。
どちらも黒い靄がかかり、顔も体もはっきり見えない。
だが、なんとなく姿はわかる。
一人は筋骨隆々とした男だ。
もう片方は竜人…?竜のような翼に刺々しい体躯。
続いてまた二人、闇から何かが現れた。
姿がはっきりしている方とは違い、全く見えない。
何かがそこにいる、としか分からない。
「ぐ…ぬぅ…!」
巨躯の男は俺の前へ歩み、俺の頭に右手を差し伸べた。
殺される、抵抗しなければ!
「…がァ…あぁあ…」
締めがさらに強まる。俺は精一杯抵抗するが、体の自由が効かない。どうすれば--
手が俺の頭に触れかかった瞬間、
白い光が降りた。
四つの影は怯み、消えて行った。
そして、純白の光は闇を浄化し、拘束を解いた。
白い光景の中に鎧姿の女性が見えた。
「…お…まえは…誰…だ…?」
女性はこちらを振り向いた。
俺に手を差し伸べ、
「行こう。私がずっと一緒にいるから」
眩い輝きの奥に何人かの影が見えた。
光はさらに強まり、俺の視界は真っ白になった。
俺の存在ごと消し去るように……
--
「っ!」
いつも通り、ここで覚醒する。
「…またあの夢か」
俺はアベル・ヴァイオレット。
生前、黒神 瞬だったが、怠惰な暮らしの果てにつまらない死に方をした。
だから、この世界では後悔のないように生きようとした。
そう思った瞬間、全て奪われた。
「…グルル、ヴォルル?」
「ああ、すまん。大丈夫だ」
俺はエンジェの部屋の隅に座って寝ていたようだ。
久々に熟睡した。
熟睡するとこのような夢をいつも見る。
恐らくーー、俺の中に潜む欠片の具現だろう。
俺の中には邪神の権化が2つ、存在する。
一つは、【修羅】。
魔力のある限り無限に成長するスキルだ。
無尽蔵に魔力を喰らう為、あまり使わないが…
「アベル、起きた?」
ひょい、と俺の頭上から幼女の顔が覗き込まれる。
彼女はエンジェ・レウィシア。
まだレウィシア家であることを彼女の口からは聞いていないが、かなりの地位の家系の娘だ。
一応二十代らしい。信じられん。
「エンジェか」
話を戻して、もう一つの権化は【餓喰】。
実はまだ試していない。【修羅】でも苦労して自我を保ちつつ発動されられる様になったのだ。【修羅】も【餓喰】も邪神の権能。つまり、凶堕ちの力を扱っていることと同義だ。
凶堕ちは知性を呑み込み、本能の一つ、破壊衝動に走るのだ。
そうそう簡単には使えない。
「大丈夫?苦しそうだったけど…」
「ああ。大丈夫だ」
俺はよっこら、と立ち上がる。前世の癖だ。どうも直らない。
だが、前世の言語だから意味も通じないだろう。
故に気にしない。
「今日もあそこに寄ってからギルドに行くが、どうする?」
「図書館かぁ…」
俺はいつも通りモメント図書館に寄る。
なんでも世界で五指に入る最大級の図書館らしい。
「嫌ならついてくるな」
「いーや、ついていく!」
いつもどおり、突き放しては付いてくる。
俺の何を気に入ったのやら。
窮地を何度か救ったくらいだ。
……いや、間違いなくそれだろう。
「…無理はするなよ。ギルドで待っててもいいんだぞ」
「ううん、大丈夫。今日は私もちょっと調べたいことがあるから」
…え?
ちょっと待って、今の幻聴か?
エンジェが…調べごとだと。
「珍しいな。図書館に行く前に療院に行こうか」
「なんで!?」
と、俺たちは図書館に向かう。
事情が何であれ、深くは問わない。
エンジェの口から出てくるまで此方からは突っ込まない。
まあ、余程のことがなければ俺からは聞かない。
…とはいえ、何を調べるのだろうか。危険な魔術や、禁呪などを調べて何かを企んでるとか…。
気になるものは仕方ない。
…聞こう。
「なあ、何を調べる気だ?」
「えっとね。混血のこととか、巨人とか種族能力のことを調べたいんだ」
「種族能力に興味があるのか?」
種族能力に関してやけに詳しかった。
出生やレウィシア家に関係があるのだろうか。
「父さんが混血だったらしくて。母さんも人間だったけど妖精の血が微かに混ざっていたらしいんだ。それで、興味持ったんだ」
「…そうだったのか」
全て過去形。ということは…
「すまん。余計なこと聞いたか?」
「…あ、大丈夫だよ! おじやおばにもよくしてくれたから特に悲しかったりはしなかったから」
「そうか」
「…少し過保護すぎだけど」
ぼそりとエンジェはそう漏らした。
そっか、要するにエンジェは家出中だ。
何があったにせよ、親代わりとなった人たちが過保護で逆に束縛されたのだろう。
親というのも時には過保護に敏感になる。
しかし、そこには愛があるからこそだ。
「あまり心配はかけさせるなよ」
「うん…」
少し反省の色が見える。
何も考えずに家出をした挙句、何度か死にかけて思い出したのだろう。
愛に悪はない。愛と呪は時に似るとよく言うが、愛に悪はないのだ。
呪いであれ、狂気であれ、愛を持った人にとっては悪ではない。
エンジェも保護者も愛を持っている。
それだけで縁が切れることはないだろう。
…死んでもだ。
「グルル…」
「ん?あれが食べたいのか?」
ここでアートがねだってきた。
どうやらウードソルトが欲しいようだ。
「すまん、このウードソルトもらえるか?」
「! あ、ありがとうございます!アベルさん!」
とりあえずウードソルトを購入する。大体、1個で銅貨5枚程度だ。
大体50円。安価だ。
ありふれた食料なのかもしれない。
「少し甘じょっぱいな」
「グルゥ…ガブガッガッ」
至極うまそうに食べるアート。
「あ、アベルさん!おはようございます!」
「今夜飲みにいかないか?」
「パーティ組みませんか!魔術使えます!」
モメントに滞在してから1ヶ月過ぎようとしている。魔神戦時に時を止めた謎の女性?からの依頼や連絡も特になかった。
とりあえず、旅費のため、討伐任務を多く遂行した。新たなS級という噂が現実味が帯び、そのお陰か声を掛けられることも増えてきた。
そのせいか、大層な二つ名もついた。
「…”魔剣聖”か」
「かっこいい二つ名だよねぇ…いいな」
かっこいい…かっこいい…
かっこいいよな…二つな…
はっ!ダメだ!厨二は封印しただろう!
「…まあ、いいか」
とりあえず、今は図書館だ。
俺の固有能力…邪神の権能について調べたい。
ーー
モメント図書館は世界屈指の大図書館で禁書目録や魔導本が大量に保管されている。
そのため、結界が張られている。その結界の銘は『無尽牢獄』。大量の魔力を喰らい、維持する結界だ。図書館の場合、空中の魔素を使用して維持しているそうだ。魔結晶による結界装置で、もちろん製造、メンテナンスはリディックが担当している。その結界の強度は精霊でも破れないほどのものらしい。
「魔神…伝承には本当に天災そのものでしか表現されていないな」
容姿や性格、どう言う存在かなど、魔神にまつわる記載がほとんど無い。歴史でも類を見ない魔素災害の一つとして数えられている。精霊や凶堕ちの魔物も魔素災害だ。
魔神は数少ない伝承や見聞からヒトの形をしているということだけが判明しており、精霊の災害に分類されている。
「…妙だな」
エンジェや師匠、ユージンからは"凶神"の1人と言っていたが、図書館にある書物には魔神が凶堕ちだという記載はない。
「前、いい?」
「ああ」
前に女性が座った。魔女の姿をしている…エンジェか。
それよりも今は魔神だ。
と、俺は書物に視線を戻す。
「凶堕ちと勘違いするほどの禍々しい魔力だったのは確かだ。他に何か…ないか…」
S級冒険者の権限でそれなりの禁書に手を出すことも可能となっている。
世界を破滅させたり狂わせたりなど、本当に危険なものには流石に触れられないが、古い伝承や魔術に関する書物は読める。俺はこの1ヶ月間、本を大量に借りて読んだ。
古い伝承や最新の本まで。
「…おかしい」
それでも魔神が”凶堕ち”だという記載はなかった。
死神や邪神ははっきりと凶堕ち、”凶神”だと記載されているのにも関わらずだ。
「なあ…エン…」
俺はエンジェが座っている方向に顔を向けた。
すると、そこには眼鏡でボサボサの少女がいた。
そういえばここはS級冒険者しか入らないエリアだった。この少女もS級なのだろうか。いや、図書館において、権限を持つ者だろうか。どちらにせよ、只者じゃないのは確かだ…
少女はびくっと怯えた目でこちらを見ている。
「…すまん」
俺はエンジェを探すべく、席を立ち、本を片付ける。
図書館は静かにしなければならない。なので、自分の目でエンジェを探すしかない。
確か種族能力に興味があると言っていた。ならば、あそこか。
能力関連をまとめた棚へ向かう。
「いた」
ペラペラと立って本を読み漁るエンジェがいた。
全く本を読まないやつだと思っていたが、能力関連となると目つきが変わるようだ。
「何か収穫あったか?」
「あ、アベル。これを見てみて」
本を広げて俺に見せてきた。
「これは…?」
「【修羅】と【餓喰】についてだよ」
あ…そうだった。邪神の能力について調べようとしていたが、魔神の件で気になり脱線してしまった。
こんな簡単なエリアにあったのか。
「どれ…」
本を手に取り、読んでみる。
「……ふむ」
そこには四つの能力について記載されていた。
【修羅】…不明
【畜生】…不明
【餓食】…不明
【地獄】…不明
「…………」
ペラペラ、と他のページもめくってみる。
しかし、全く記載がなかった。
能力の存在はあれど、効果は特に書かれていなかった。
「…また」
妙なほどに情報が制限されている。
凶神について特に、だ。
「でも、これって負能だよね?」
「…ん?マイナスキルってなんだ?」
「デメリットでしかない能力はこの【】でカードに表示されていて、負能と呼ぶの」
マジか。
俺の中にある【修羅】や【餓食】はデメリットでしかないということなのか。
「でも、強力な恩恵をもたらす代わり、大きな代償を支払う必要がある能力もあるの。例えば…血を捧げることで消えぬ炎を出せる…とかね。どっちにしてもデメリットが大きいから簡単に扱えないものが多いかな」
「なら、俺の中にある能力はデメリットでしかないのか?」
「ううん、それはわからない。今まで調べてきた中で記載がなかった能力は初めて」
結局収穫はなしか。
だが、負能に属する能力だということはわかった。
【修羅】は莫大な魔力を食い続けるデメリットがある代わり、無限に成長できるというメリットがある。ということは、【餓食】にもデメリットとメリットがあるだろう。
しかし、どちらも凶堕ちの特性を持つ。簡単には試せない。
「………」
この四つ能力の詳細が無いのは分かったが、邪神の権能であるのは間違いない。
間違いないのだが、邪神の権能であるという記載もない。妙なほどに俺の知りたい情報が悉くない。
「どうしたの?…もしかして、マイナスキル二つ持っててショック受けている?」
「多少な」
まさか…な。
ーー
俺たちは任務を取りにモメントギルドへ向かう。
一昨日はランクBのマウンテンコングを三体狩った。三体のうち、一体はエンジェと小鴉丸がやった。
凄絶な威力を持つ爆裂魔術と天地駆ける剣技でゴーレムを翻弄し倒したのだ。
ランクBってことは冒険者等級はB以上はあると言っていいだろう。
ちなみに小鴉丸も冒険者登録していて、ランクはBだった。
エンジェよりも上だ。あ、でも最近等級はBとなった。
翼竜の群勢の件で、エマを救い出したことが一つの評価として認められたのと、1ヶ月間俺とともに任務をこなしていき、実力も認められ、B級となったのだ。
「さて…」
…あ。忘れてた。
魔神のことで聞きたいことあるんだった。
「なあ、エンジェ」
「ん、なに?」
「魔神のことなんだが、凶神という記載がなかった。魔神が凶堕ちだとどこで知った?」
「ええと…叔父から聞いた」
「どんな話だった?」
「出会ったら消される。理不尽な存在だと…」
まんまじゃねーか。理不尽なだけで凶堕ちではない可能性はあるか。
「真っ黒な魔力を纏う精霊に近い存在だとも聞いたかな」
…む、精霊、か。ますます気になる。
凶堕ちの魔力と闇の魔力は別物って話だしな。
かなり分かりづらいが、どちらも黒い性質を持つため、誤解されやすい。そういう記載もあったから間違いではないだろう。
なら、魔神が凶堕ちという間違った認識が拡がったのも頷ける。
「どうしたの?」
「いや、ちょっと魔神のことが気になってな。調べていた」
「そっか」
さて、本日の任務はどうしようか。
討伐系も飽きた。怠惰、というわけではないが、歯ごたえがない。
”気操流”を封じた状態で一匹に一薙で倒せてしまう。俺がもっと強くなるには俺と同等かそれ以上の存在が必要だ。魔神は圧等的すぎた。差がありすぎた。
…アドラヌスも手加減されていたとはいえ、俺にとっては良い鍛錬相手だった。
そんな相手が簡単に見つかるわけではない。
なら、今俺にできることはなんだろうか?
「うーん…新たな武術とか魔術とか学ぶべきなんだろうか」
「え⁉︎ さらに強くなる気⁉︎」
「ああ」
ええ〜…、と信じられない目で見られた。
確かに並みの冒険者から見るととんでも無く強いのかもしれない。
しかし、上には上がいるのだ。
俺の願望を叶えるにはさらに上を目指す必要がある。それが魔神戦でわかったのだ。
他の凶神の実力の程度は分からないが、世界や国を相手にする強さを誇っているのは確かだ。
邪神だって大陸を支配したという。
俺にそんな力はない。
「魔術、だな」
と俺は呟く。
そう魔術。今の俺に足りないのは魔術だ。
初級魔術は一通り習得しているが、魔物相手には通用しない。故に戦闘時には使用していない。
ここだ。
ここが今の俺の伸び代だ。
「エンジェ、魔術について教えてくれないか?」
「え⁉︎ 私⁉︎」
「お前、一応魔術師だろう? 魔物に通用するような魔術を学びたい。頼めるか?」
「いいよ! 任せて!」
本日は任務を諦め、魔術を教えてもらった。
結果、全然駄目だった。
エンジェは感覚派で理論的に説明できていない。
腹にこう…ぐーってやって、はっ!ってする感じかな。
だ。意味がわからない。
実際に腹に力を入れてみても、筋肉が引き締まるだけだ。
どうしようか…
あ、小鴉丸だ。あいつの方が詳しそうだった。
エンジェの設置した転移魔術陣を再起動させる際、いろいろ解説してくれた。
そうだ、あいつに聞こう。
「そういえば、最近小鴉丸見ないが、どうしたんだ?」
「えぇっと…」
そうなのだ。
昨日から見かけていない。一昨日までエンジェにべったりだった。
「何か言ったんじゃないだろうな」
「い、言ってないよ!」
言動が少しおかしい。
何かあったな。
「嘘はいけません。正直申すのだ」
「…うっ」
急に敬語使ったからか、エンジェもやや引きつっている。
今の俺のこの容姿だと高圧的な喋りの方が似合っているのかもしれない。
「…あのね、今日変な手紙が届いたの」
「ん?」
ごそごそと腰のカバンから手紙を取り出し、見せてもらった。
なんだなんだ?
〜迷宮
小鴉丸を借りる。
返して欲しくば、図書館に来るが良い。
S級許可域に入って後ろに回れ。そして、なんでも良いから攻撃魔法で壁を破壊するが良い。
そこには暗闇空間だが、入れ。
ここからが大切だぞ!
入って、右に150歩、右に256歩、左に62歩。
そこで再び攻撃魔法を虚空へ打ち出すが良い。
来なかったら永遠に返さぬぞ。
返さないぞ!
ー魔神の知り合いより
なんとも子供が書いたような手紙だ。
脅しにもなってねえ。何かポ○○ンの裏技を思い出すのだが…
呆気にとられた俺はこう漏らす。
「……なんだこりゃ」
と、手紙の裏を見てみる。
〜〜
=モメントギルド公認=
〜〜
…む、まさかこれ……
依頼なのか?
いや、そんなまさか…
でもよく見たらタイトルに迷宮って書いてるしな。
「これ、依頼なのか?」
「あ…本当だ」
裏はよく見てなかったようだ。
でもまあ確かにこの内容だと信じられないわな。
「一応、任務として受理されてるようだな」
大方適当にリディックがハンコを押したんだろう。
リディックは支部長で任務の管理も請け負っている。
見た目によらず、忙しい日々を送っている。
「…怪しい」
「ね…」
怪しすぎる。
任務を受けるとは言ったが、怪しい。
図書館の中にある迷宮を探索…モメント図書館には何度か寄ったが、迷宮という地形はしていなかった。魔力反応も図書館を守る結界以外無かった。
…いや、結界があるってことは何かを守るものがあるってことだ。それは必ずしも禁書や魔導本を指すわけでない。
迷宮を指すのかも不明。
あの魔神の時に時を止めた謎の女性?の依頼の可能性が高い。
受けると言った以上、仕方ない。
「とりあえず、この任務は受ける。エンジェ、お前も来るか?」
「うん!」
手紙を手にモメント図書館へ向かう。
ーー
読んでくださりありがとうございます。
土日の時間が減ってきてるので、執筆速度が遅くなるかもしれません…
最低でも、1ヶ月に1話の更新を目標に頑張ります。
次話も楽しみにしていただけると幸いです!




